猫耳と狼


 


朝起きたら通常なら付いていないものが頭に付いていた。


「カガリ、そんな難しい顔してても仕方ないよ」

ソファに座り、隣に座るカガリの顔を覗きこむ。
ジッとテーブルを凝視しながら何やら難しい顔をしている。

「……危機感がなさすぎる」
「今のところ困ってないしね」
「困るだろう!耳が四つあるんだぞ!?」

テーブルからこちらに顔を向けたカガリは今にも掴みかかってきそうな勢いだった。
そっち?と聞きたかったけど聞いたら怒るのが容易にわかる。
僕の頭には猫の耳がついていた。

「意外と寝たら直るかもしれないし、大丈夫だよ」
「そんな根拠もない事言うな……」

勢いがなくなり、肩を落とす。
本当に心配してくれてるのがわかり僕はカガリの頭を撫でた。
するとすぐにその手を振り払われる。

「撫でるのは私だ」

聞き返す前にカガリの手が僕の頭についている耳から下へと撫でた。
数回それを繰り返す。
ぎこちない表情にぎこちない動き。
それが可愛かった。

「撫でたかったんだ?」
「ち、ちがうっ!キラが撫でてほしそうだったんだ」

あくまでも認めないカガリ。全部顔や行動に出てしまっているのに。
カガリの瞳は頭についている目に釘づけだった。

「っ…な、何をするんだっ」
「キス?」
「聞くな!」

隙をついて唇を寄せると気付かれて、もう片方の手に顔を押し止められてしまった。
赤面しながらも片手は耳から離れない。両手が僕に触れているのが何だか嬉しかった。

「猫耳がついてるからかな?何だか……」
「何だか?まさか体調が悪くなってきたのか!?」

カガリの顔から赤みが引いて、僕の顔をよく見るためか両手で顔を掴まれた。

「じゃれつきたいな」
「え?わっ……キラ!」

ぼそっと呟くとカガリを押し倒した。
大きめのソファと言えども身動きを取ろうとすれば床に落ちてしまう。
カガリなら落ちてでも逃げようとするかもしれないけど。

「キラ!」
「何?」

そう言いながらも聞く気はなく、カガリの口を塞いだ。
軽く触れるだけのキスだったのに唇を離した後のカガリの瞳は潤んでいて、顔の赤みも戻っていた。

「私は、心配してるんだぞ」
「知ってるよ。だから嬉しくてこうしちゃうんだ」

そう言って頬に口づける。
また怒らるかなと思ったけどカガリは何も言わずに視線を少しずらしていた。

「……キラに猫耳は似合わない」

似合ってるとも思ってなかったけどカガリがそう言うのは意外に感じた。
僕に組み敷かれて身動きがとれないカガリは少しだけ身体を横に傾けて呟いた。

「お前は狼だ」

一瞬何を言われたかわからずにいたけどすぐに笑ってしまった。
カガリはそんな僕を少しむくれたように見つめる。

「カガリにそう思ってもらえるなら光栄かな」
「褒めてないっ」

けなしてもないよねと聞くとカガリは返答に困り、再び視線をはずした。
そんなカガリに僕はまたキスをした。今度は先程よりも長く、甘いキスを。


僕にとっては褒め言葉だよ。
君の狼になれるなんて。



H22.2.22



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