笑顔の方法〜アナタとアタシ〜
「シンは歌うたわないの?」
「うたわないって事はないけどミーアほどはうたわない」
突然のミーアの問い掛けに答えると、きらきら目を輝かし俺の両手を取った。
「うたっ」
「やだ」
言い終わらないうちに遮ると案の定ミーアは不満そうな顔をする。
「ちょっとだけ……じゃ嫌だから、あたしのためにうたって?」
「わがまま」
「いいの、わがままでも!」
何がいいんだがよくわからないけど素直に俺がうたうはずもない。
うたってうたってと握っている手を強く握りしめせがんでくる。
「俺は歌手でもなんでもないんだからうたわない」
「歌手じゃなくても歌はうたうでしょ?だから、ねっ?」
首を少し傾げて上目遣いという男心を知っているかのようなねだり方。
でも実際は無意識にやってるのだろう。だからたちが悪い。
「じゃあ俺が今ここでミーアを抱かせてって言ったら抱かせてくれるの?」
「こ、ここでっ!?」
俺の発言に驚くミーア。少し顔が赤い気もする。
それもそのはず。ここは町中。買い物の途中。
そこでいきなり歌をうたえというのもどうかと思う。だからこう言えばそれ以上は言わなくなるだろうと思った。
「うたってくれるなら……」
「えっ!?」
両手は相変わらず俺の両手を握ったまま、ミーアは俯くと呟いた。
予想外の返答に大袈裟に驚いてしまう。
「何でそんなに驚くのよ。言い出したのはシンなのに」
「それはそうだけど……マジで?いてて」
恥ずかしそうに上目遣い。確かに言い出したのは俺でも冗談。でもミーアは本気みたいだ。
聞き返すと何度も聞くなと言うように握られた手を更に強く握られた。
「ミーアが先」
「あたしが先に言ったんだからシンが先」
そろそろ冗談だという事に気がついてほしいけど、気付く様子はなし。
耳まで真っ赤にして可愛らしい。
「な、何?」
可愛らしくて思わず笑いそうになってしまう。
堪え切れずに口許がゆるんでしまったらしくミーアが警戒したようだった。
俺がこの笑みを浮かべるとろくな目にあわないらしい。俺ではなくミーアが。
「やったもんがち」
「え?ちょっと、シ……んっ」
握られていた手を引き寄せ離し、逃げられないように頭を押さえる。
始めは抵抗していても舌を絡ませるとくぐもった声で抵抗の意思を見せるも、すぐにそれはなくなる。
唇や舌も熱いけど、ミーアの顔が熱いせいか俺の顔も赤くなっていってる気がした。
「はぁ……何考えてるのよ」
「したいからした」
唇を離すとミーアの片手をとり歩き出した。
視線が痛かったからだ。どのぐらいあそこでああしてたかもわからない。恥ずかしくもそれが気持ちよかった。
「シン、笑ってる?」
「え?」
手をひきながら歩き、振り返るとミーアが勢いよく抱き付いてきた。
「何なんだか全然わからないんだけど」
「わからなくていいの!」
てっきり怒っているのかと思ったらそうではなさそうで、それどころかミーアは嬉しそうだ。
「帰ったらもっとしてね」
体を少し離したかと思うと唇に暖かい感触が触れた。
─いつでも笑っていてほしいアナタ
でもアタシはアナタが笑う方法がわからないの
だからアタシの笑顔の方法を試してみるの
何もかも熱くするアナタが
アタシの全て
だからアナタでアタシを満たして
笑って……
笑って?
この熱も何もかもアナタに移るぐらい
アタシはアナタの近くにいるから
アナタはアタシの中に
アタシはアナタの中に
生まれたものはきっとアタシたちだけのもの─
H17.11.19
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