愛でるは枯れずの花


 


「おーはーなーみー!!」
「機体の点検があるんで離して下さい、ラクス様」

通路で顔を合わせた途端、腕を掴まれ早10分。
人があまり通らない場所だからいいものの誰かに見られたらまずい気がする。

「わざわざ待ってたのにー!」
「部屋に来ればいいだろ」

俺は諦め、身体の力を緩めるとミーアと向き合った。
あからさまな不機嫌顔を向けてきている。

「無理」
「やろうともしないで一言で片付けないで」

きっぱり言うもミーアは負けじと食いついてくる。

「部屋に来たら考えてもいいよ」
「む、無理」
「じゃあ俺も無理」

ミーアは後退りながらも俺を睨みつけまだ諦めていない様子。

「変な事しない?」
「する」

間髪入れずに言い放った言葉に顔を赤らめ反応される。
いつも多少身体に触って怒られる。軽いノリでセクハラみたいな触り。いつだかにオヤジみたいとまで言われた。
だから狙ってた。ミーアだから触るんだ、ってわかってもらうために。つい押し倒しちゃってこの有様。

「そもそもラクス様が勝手に外出しちゃまずいだろ」
「それは……でも見たいし。フードかぶったりすれば平気よっ!」

何としても見たいらしい。見せてあげたいのは山々だけど外出した事がバレた時が大変だ。

「シンはあたしと一緒に見たくない?」

わかってやってるんじゃないかと聞きたくなる仕草。そう聞かれたら見たくないなんて言うはずがないとわかってるに違いない。
それなら……

「俺はすぐ側に花があるからいいよ」
「部屋に花とかあるの?きゃっ!?」

隙をついてミーアの腰に手を回し引き寄せる。

「ミーア」
「なっ……えっ?」

我ながらくさいと思う。でも彼女に勝る物はないと思ってるのも事実。

「や……何言って」

顔を赤くさせて俯き加減に呟く。すると急に顔をあげ抱きついてきた。

「大好きっ!!」
「えっ……」

予想外な反応に俺も困惑。二人して顔が赤いに違いない。
そのまま固まっていると静かだった通路が騒がしくなってくる。

「シン、こんな所で何やってんだ?ってラクス様じゃん!?」
「ほんとだ〜!」

ヨウランとヴィーノが俺の後ろにいるミーアに気がつき、更に騒がしくなる。

「ハロちゃんの様子がおかしくなってしまったのでシン、さんに聞いていたんです」
「それなら俺達に言って下さいよ〜」
「たまたま俺がいたから頼まれただけ」
「俺もたまたま頼まれたかった〜」
「そのハロちゃんはどこにいるの?」

ミーアの起点のきかせはよかったもののヴィーノがさりげなく気がついてしまった。

「俺の部屋にあるんだ。今調子はどうかって聞かれてさ」
「ふーん」

ヨウランの視線が痛いのはきっと気のせいだ。

「まあいいや、先行ってるから早く来いよ。じゃあラクス様、また」
「また〜」
「はい」

二人が通路先のエレベーターに乗った事を確認するまで見続け、一息吐くと自然とお互い笑っていた。

「だから部屋に来ればいいのに」
「シンが狼じゃないって保証ができたら行く」
「それこそ無理……いてて」

頬を抓られ痛がっても頬から手を離してくれない。

「ばか」

頬から手を離され頬をさする。俺を見るミーアの表情が少し恥ずかしそうで思いついた言葉を口にする。

「仕方ないだろー、咲かせるのも散らせるのも俺がやりたいんだから」
「ばかっ!」

一瞬ぽかんとした表情を見せ、すぐに意味がわかったのか顔のひいた赤さをまた赤くさせ抱きついてきた。


─触れては咲かせ
抱いては散らせ
愛でるは枯れずの花
散っては触れて
咲いては抱いて
枯れずの花は愛を唄う
それは永遠にも似た
一瞬の時間─



H18.4.22




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