惹かれた君に、掴んでくれた君に
「寒い〜」
買い物の帰り道、隣を歩く彼女がそんな事を言い出した。
次の季節は夏と言ってもまだ肌寒い日はある。最近暑い日が多かったせいかミーアはノースリーブ、ミニスカートという夏ならば丁度良さそうな格好をしていた。
「じ〜」
「なに?」
わざわざ口にしながら凝視してくるミーア。
「何で上着羽織ってないの?」
「そんな不満気に言われても……」
いつもならここで腕にでもしがみついてきそうなのに、今日はしてこない。
それはおろか二人の間には僅かに隙間がある。
「っ……」
試しに肩を触れさせると気付かないように身体を離された。確かに反応はしたのに。
「ちょっと、シン!?」
いつもならしないであろう俺の行動にミーアは驚いていた。我ながらこれぐらいで恥ずかしいと思うなんて……。
ただミーアの肩を抱いただけなのに。
触れた肩は冷めていて、身体に触れた体温も冷えていた。
「駄目……!」
無理やり身体から離れた反動でミーアは地面に尻餅をついてしまった。スカートの裾の隙間から下着が見えているにも関わらず、それを呆然と見ていた。
そんな俺に気がつきミーアは慌てて立ち上がった。
「違うの!嫌とかじゃ」
「ごめん……」
「違うの、シン!」
俯きかけた時、ミーアの手が俺の手を引いてそれを阻んだ。
「シンもそんなに厚着じゃないし、あたしが触ったら寒くなっちゃうと思って……だから」
触れている手が段々と汗ばんで熱くなってきていた。
必死に訴える彼女が可愛くて安心する。
「いつも俺が恥ずかしいって嫌がるからそれで嫌われたかと思った……」
俺の言葉にミーアは否定するように左右に顔を振る。
「ただの照れ隠しだって知ってるもの」
「……ミーアはわかってたのに、俺はわからなかった」
段々とまたいつの間にか俯きかけてしまいミーアに再び強く手を引かれて阻まれる。
「いいの!これからわかっていくし、あたしの方が一枚上手みたいで楽しいから」
「なんだよ、それ」
本当に楽しそうに言うもんだから悔しさよりもこっちもその楽しさが移ってしまったように笑っていた。
そして我にかえり気がついた。町中の道でこんな事をやっていれば目立つのも当然だ。茶化すような声も聞こえてくる。
「行こう、ミーア」
「うん!」
ミーアが掴んでいた手を一度解いて、掴み直した。
いつの間にか繋がっていた手に
何度も強く引かれて顔を上げる
惹かれた君にせめてもの温もりを
掴んでくれた君にせめてもの愛情を
未熟なものに
冷たい水を
熟れたものをいつしか共に飲み込めば
温もりも愛情も永遠に
H19.6.2
book /
home