だから拗ねてない。


 


「シン、飴嘗めたくない?」
「別に」

隣に座るミーアに視線を向ける事なく、膝に置いている雑誌のページをめくった。

「そんな事言って本当は欲しくてたまらないんでしょ?」
「だからいらないって」

いやにしつこくてこのまま無視したらあとが大変そうなので視線を合わせた。
案の定ミーアは頬を僅かに膨らませていた。右手を軽くあげたのでそれを見ると、小さな袋だった。

「欲しい?」
「欲しい、です」

怒ってますアピールのあとにそんな笑顔をされたらそう答えるしかなかった。

「はい」
「……こんぺいとう?」

受け取った袋をあけると中にはいろとりどりの小さな星が入っていた。
飴というからもっと一粒が大きいものを想像していた。
とりあえず袋の口を口元に持っていき、適当に流しこむ。

「あー!?」

ミーアのそんな大きな声に驚いて口の中のものを零してしまいそうになる。
何とか袋からも口からも零さずに耐えられた。

「普通一粒ずつ食べない?」

渡されたものをどう食べようが勝手だろうと思ってしまう。
不満そうな顔で見られても食べてしまったものは仕方ない。口を開けないため首を横に振った。

「シンが勝手にするならこっちも勝手にする」

完全に怒ったかと思ったのもつかの間、ミーアの両腕が首に巻き付いていた。

「っ……!?」

こんぺいとうとは違う感触が舌に触る。唇はよく知るミーアの唇が重なっていた。
まだ尖った部分のあるこんぺいとうと、ミーアの柔らかい感触が同時に口の中にある。感触の差はあるけどどちらも甘く感じた。

「あたしが食べさせてあげようと思ったのに」
「じゃ、じゃあ……袋渡すなよ」
「あ、そっか」

唇を離したミーアは平然とそう言った。
こっちは突然の事で息が苦しく、顔が熱い。

「でもあたしも一緒に食べれてお得な感じしない?」
「俺がミーアに食べられた気がする」

唇を軽く嘗めるミーアを直視できずに視線をそらしながら呟いた。

「美味しかった」
「こんぺいとうはな」
「シンが」
「はあ!?」

驚いてミーアを見るとミーアはいたずらが成功した子供のような笑顔を浮かべていた。
そうしてやっとミーアのやりたかった事がわかったのだった。
まだ口の中にあるこんぺいとうは甘さを残す。
尖った部分をとっていった彼女はもっと甘いのだと感じた。

「俺がそんな事言ったら怒るのに」
「セクハラになるでしょ」
「本人が嫌じゃなければセクハラにならないってどっかで見たけど」

ミーアは俺の予想とは違い、俺をじっと見ると抱き着いてきた。
てっきり怒るかと思ったのに。

「拗ねるシンも可愛い」
「拗ねてない!」

本当は拗ねてるのかもしれない。ミーアに主導権を握られているようで。
でも主導権とか関係ないのはわかってるから。
だから拗ねてない。



H20.4.12




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