レゾンデートルの鍵
ソファに座って手帳を膝に置いてページをめくる。
数冊ある手帳。それを一年に一回読み直す事にしている。
あたしの記録。夢に近づいてラクス様に成り代わって楽しい日々が綴られ、それは長くは続かなかった。
もしかしたら手帳は増えずにどこがで終わっていたかもしれない。でも今も綴るページは増えている。
「何それ」
「何でもない」
目の前に座ってたシンが見ていたテレビからあたしに視線を向ける。
あたしが笑ってごまかすように答えると興味なさげに装いながら視線をテレビに向けつつ、ちらりとこちらを見る。
「気になるの?」
「別に」
あたしを気にしてくれる人。あたしを愛してくれた人。
意地悪するように言う。無愛想な顔が可愛い。気になるけど気になると言い出せない。変なところで意地っ張り。
彼の事もたくさんこの手帳に綴られていた。
「日記」
「日記?」
「一年に一度読み返すの」
ふーんと言いながらシンは少し首を傾げる。
「何で?それなら普通自分の誕生日とかだろ」
今日はシンの誕生日だった。あたしの家に招いていつものように過ごす。いつもと違うのは誕生日ケーキとプレゼントを渡した事。
あたしの誕生日は約二ヶ月前。だから余計自分の誕生日に読み返せばいいんじゃないかと思うんだと思う。
「シンの誕生日がいいの」
パタンと手帳を閉じて数冊重ねてある手帳に乗せた。
立ち上がってシンの横に座る。座りやすいように自然に横にずれてくれる。
「鍵を開けれたのはシンのおかげだから。だからあたしはシンの誕生日にもう一度見つめ直したい」
うまくは伝えられないけどシンは何も言わずに聞いてくれて、あたしはシンの手を握った。
依存してるわけじゃない。
でも自分を見失ったあたしのそばにいてくれた。あたしを見てくれた。
だからあたしは自分の箱を見つけて鍵を開けられたの。
シンを横目で見上げると照れてるのかどう言ったらいいのかわからずにやっぱり無愛想な表情で正面を見ていた。
くすりと笑うと不服そうに何を笑ってるのかと言ってくる。
積み重ねた手帳は楽しい事ばかりではないけど全てがあたし。
苦しい事も今では微笑んでページをめくれるのは彼がいるから。
大好きな彼の誕生日を祝う。それはあたしの記念日。
あたしの箱にときめきを詰めてくれた彼の生まれた日。
H22.9.12
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