いつか届ける雲に空を
君が攻める空で
僕は受け止める雲で
ありたい
「花買ってきたー、って寝てるし」
名前もよくわからない花を適当に束にしてもらって買ってきた。
この人がテーブルにある花瓶を見て花が枯れそうだと、言ってた。
近寄っても起きる気配はない。
「ん……」
長い髪を掬うと先だけ指で弄っていた。
「いたっ」
「あ、ごめん」
気がつかないうちに力が入り髪を引っ張ってしまった。
机に伏せていた体を起こして目を擦っている。
「どうか、しましたか?」
そう笑む顔が痛くて思わず後て手に花を隠した。
「……なんでもない」
きっとあなたが目を閉じてしまえば、僕はどこにもいないんだ
あなたの瞼に隠れてしまう僕は残影にすらなれない
「アウル、どうかしましたか?」
頭を撫でながらもう一度聞いてくれる。
言いにくい事は二度聞いてくれると言いやすくなる。
大きな瞳が僕を捕らえる。瞬きをすればいなくなって、開くと再びあらわれる。
「っ!アウル?」
思いきり突き飛ばし机に押し倒した。
初めてじゃない。でも久しぶりではあった。
だってあなたは瞳を閉じて、そこにいる人を想うだろ?
僕はここからいなくなってしまう。
あなたの中にいるのにどこにもいないんだ。
「ラクス……」
なかなか名前は呼ばない。何で呼ばないかなんてわからない。
こうして呼ぶとラクスは瞳を閉じる。
「抱かせて」
嫌がる素振りさえない。それが至極当たり前のように受け入れてくれる。
あなたは海のようで。
あなたの中も海のようで。
暖かく熱かった。
いつも海に映る空を見る。飛べない自分が嫌なのかもしれない。
そんな事を思った。
推測でしかないけどあなたに空は似合わないなんて思ったから考えてしまったのかもしれない。
でも本当は行きたいんだ。
空にある何かを知りたくて。
「海は好き?」
「嫌いではありませんわ……」
怖くても行かねばならない時がある。攻める瞳が語るよう。
それは壊すため?それとも……。
世界は空と海と陸でできている。そのうちの一つになれば、そのうちの一つは遠いものとなる。
彼女が一番遠いものは空なんだろう。
僕が一番遠いものも空なんだろう。
でも諦められないのは人の業だから。ここで人でよかったと思う。
一番近いあなたはきっといつまで経っても届かないんだろう。
「ずっとこうしてて……いい?」
「はい」
せめてあなたの中にいたいから。
何もない空に
何もないのは寂しい
雲一つぐらい
あればいいのに
でも雲は空がないと
存在できなくて
じゃあ雲はどこにいればいい?
どこにいてもいい?
邪魔なら邪魔と
言えばいい
漂いあてもなく
海を旅する雲は
空に焦がれて
いつも海の中の空を
見てるんだ
いつか届ける雲に空を
まだ何もない真上に
まずは雲を
そして空が
そして
一緒にこの景色を
見渡そう
H17.10.11
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