これはあなたが笑う現在


 


「ラクスは赤い糸って信じてんの?」

ラクスの部屋で気紛れで本を漁ってたら目についた言葉。
運命なんだってさ。
見えないのに何を信じろと言うのだろう。
そんなのない物に縋ってるだけで馬鹿みたいじゃん。
って前なら言ったかもね。

「アウルは信じますか?」
「……ラクスとなら信じるかな」

ラクスが信じれば信じるし、ラクスと繋がっているなら信じれる。
ふわっと柔らかい風と共に頭を撫でてくれる。
優しいのに拒絶されてるような、そんな気分。
開かない口が作った笑みが全てを遮っているよう。

「アウルっ!?」
「つっ……ちょっと深かった」

自分の左手の小指を口許に持っていき歯を立てて囓りついた。
さすがに痛い。
すぐに口を離したのに口の中がまずい気がする。

「ラクス、手」

右手を差し出しラクスの手を求める。
でもラクスは僕の左手を凝視し、両手を胸にあてて震えていた。
強いと守ってくれると感じた女性はこんなにも脆い

“赤い、ですね”
“これでずっと……”
“赤い……糸に、縋らなくても……いいんですよ”
“ラクスを守れたならそれで……ただ”
“笑っていて”

弱いと守らなくてはと感じた女性はこんなにも堅い
一瞬意識が飛んだような感覚がした。一面が赤。
その感覚が消えるとラクスは微笑んでいた。さっきまでのラクスはどこにもいないかのよう。

「ラクス?」

どこからか小さめのナイフを取り出し左手の小指を切る。
一瞬表情が歪むがすぐに和らぎ左手が僕の左手に触れる。

「赤い、ですわね」
「うん」

繋がれた左手。
赤い血が滲む小指同士が擦れてどちらの血が、どちらの指を赤くしているかもわからない。
糸とかで繋がってるようには決して見えなく、何かを願うように合わされた手からは二人の血が床に落ちた。
その光景を笑んで見つめるラクス。
それがたまらなく悲しくてラクスの唇に唇を重ねた。

「アウル、泣かないで下さい」
「泣いてない……」

そう言いながらも泣いているのが自分でもわかる。
悲しい。
悲しくてどうすればいいのかわからない。
そんな僕を宥めるように安心させるように、ラクスの方から僕に口づけられた。



これは決して運命じゃないと
それは決して必然じゃないと
ただの偶然だと
そんな事わからないのに
これがあなたの先ならば
僕の先はあなたと繋がってるんだろうか
わからないのに
わかってしまうから
涙が流れる
きっと飛んで行ってしまうのだろう
きっと潜って行ってしまうのだろう
さようならのその時まで
これはあなたが笑う現在



※関連話アスラクSS【それは君が笑う未来】・アスラクSS【あれは君が笑う過去】

H18.2.18




book / home