全てが僕を止めてくれたから
たとえばその胸を止める布で
この首を絞めて
たとえばその髪を飾る花の花びらを飲み
この喉を塞き止めて
たとえば……
たとえばその優しいてのひらで
僕の視界を遮って
すべてがどこまでも
たとえば、貴女
どこまでもすべてが
たとえば、僕
そうなればいいのに
あなたがいない世界でなんて
目が覚ませない
「アウル?」
目を覚ますと寒さで固まったのか身体がうまく動かない。
「おはよ」
そんなたった一言なのに言い終わらない内にふわりと彼女は俺を包んだ。
「朝ではありませんわ」
「うん、でも今起きたから」
開いた扉から月明りが差して、冷たい風が入り込む。
家と外を繋ぐ扉の前で幼い子供のように待っていた。
そう、待つ理由がわからない。ただそのぬくもりが欲しいだけ。
子供のように……子供のように。理由なんてわからなくていい。
「遅くなってごめんなさい」
「全然遅くないよ。待ってないし」
笑って答えようとしても顔の表情がどんなのかもわからない。そういえば抱き締めたいのに腕もあがらない。
「アウル……ごめんなさい」
「謝らないでよ」
謝られたらラクスが悪い事したみたいじゃんか。
「アウ、ル」
体が離されるとぽたぽたと彼女の頬から流れた涙が僕の頬を伝った。
あったかい。
あったかいはずなのに冷たい。何で……何で?
どうしても動かない体。それはあなたがいないから。
僕は目を覚まさない。
「スキ……って言ったら泣きやんでくれる?」
多分これは本当。
ああ、そっか。そばにいたいなら言葉にしなきゃ。
でも自分でも知らなくて。
知らない、わからない、消えた、消えていく。
“いいよ、行きなよ”
これが本当。
目を覚まさない。
あなたの全てが僕を止めてくれたから。
もしかしたらと童話の眠り人のように
僕はその人を待ち続ける
扉は閉じたままで
H18.4.30
book /
home