思いきり雨に浸ってもいい
「まだ雨上がんないの〜?」
「まだですわ」
テーブルに頬杖をつきながら、窓の外を眺めていた。
外は相変わらず雨。
たまにあがるけどすっきりは晴れない。ラクスに聞いたらそういう時期らしい。
「つまんねー」
蒸し暑いしじめじめする。あげくにこの天気。軽く2、3回テーブルを蹴っ飛ばしたい。
「なに?」
ラクスがくすくす笑いながら向かいに座った。
ラクスにあたるつもりはないけど不機嫌な態度になってしまった。
「アウルは雨は嫌いですか?」
「んー……」
言われて再び外を眺める。降り方は弱くなってはいてもやはり降っている。
「普段は何とも思わないけど今は嫌いかな」
「では良い点を探してみましょう」
「は?」
まるで名案といいたげな言い方。
嫌いと言った以上そこでこの話題は終わるもんじゃない?
まあ……ラクスだから、か。
「ラクスは雨嫌いじゃないの?」
「散歩に行けないのは残念ですわね」
「答えになってないじゃん」
ラクスは困ったように頬に手をあてて外を見た。
つられて見ると変わらない。変わらなさすぎる。
「でも流してくれますわ」
ラクスは微笑んだ。
でも僕を見ているラクスはどこか違う場所を見ているようで、ふと寂しくなった。
そのラクスの表情に寂しさが含まれていたからかもしれない。
きっとつられたんだ。
そう思う事にする。
「よし!」
「アウル?どこへ行かれるのですか?」
「外!」
思いきり立ち上がって、思いきり扉を開けて、思いきり翔けた。
思いきり雨を浴びた。
「きっもちいい〜」
思わず両手なんて広げてみる。
シャツやズボンに雨が染み込んで重くなってくるけど、肌にあたる雨は気持ちいい。
「アウル!」
「傘さしてくればよかったじゃん」
ラクスは傘をささずに追い掛けてきてくれた。
長い髪が水を含んで風が吹いても靡かなくなる。
しばらく雨に打たれてみた。何となく。意味はない。
「いいとこかはわかんないけどさ」
「はい」
「ラクスとこうしてられるならいいかな」
僕には流すものはないから。
流さないように留まらせたいから。
「私もアウルとあたる雨が好きですわ」
「うん」
このままだと風邪をひきそうだなと思いながら、それもいいかな、なんて。
ラクスが雨を見て思い出してくれるなら。
思いきり雨に浸ったっていいんだ。
H20.7.10
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