運命を司る
「何だか不服そうだね」
「別にそんな事はありません」
キラさんは薄く笑みを浮かべながら歩む歩を緩めずに通路を歩いていく。
俺は少し後ろについて歩をあわせる。
白い隊服を着用したキラさんはあたかもはじめからここにいたような雰囲気を持っていた。
「アスランとは話した?」
「先日待ち時間に迷われていた時に会いました」
一瞬会話が途切れたがキラさんは吹き出して笑いを堪えた。
「器用にこなせるのに、うまくいかないのがアスランらしいよね。その不器用さが少しうらやましい」
「それは褒めてるんですか?」
「もちろん。だから信用できるんだよ」
この前同じように歩いていたアスランさんがかぶる。
だけど通路の先を見つめる瞳だけはかぶらない。
「僕みたいなのが一番信用してはいけないんだ」
「信用というのはよくわからないですけど、話していけば信用できる相手かどうかはわかるものでしょう」
つい口に出ていて気付いた時には言い終わっていた。
先程の途切れ方とは違う。沈黙が重く感じてしまう。
「なら、君は信用できると思ったら無条件で信用してしまうの?」
「そういう事じゃ……」
こうして会話を交わすようになって日は短い。その短さで笑みを浮かべている事が多い人だなという印象があった。
柔らかい雰囲気に安心して、ついこうして会話をしてしまう。
でも初対面での朧げな記憶では無表情な儚い人だと思った。
今の彼がそうだった。
「……俺は、守りたい場所が欲しくて壊されないように一人でも戦おうとしていました。でもその結果が今です」
「後悔しているの?」
「後悔はしています。全てではありませんが。残ったものは少ないけど、気付かされたものは大きいものでしたから」
だから俺はまだこの赤い服を着て、この場所にいる。
望む先が同じならば、信頼できるのではないかとかつて憎んだ相手と共にいる。
「僕達は決して同じ考えにならないだろう。でもそれでも同じ場にいるのは……」
「キラさん?」
「いや、何でもないよ」
少し俯きながら笑みを浮かべる横顔は悲しそうではなかった。
「何だか君はまさに運命だね」
「何ですか、いきなり」
機体の名称を言われて訝しげに見る。
「知らぬうちに手繰りよせてるのかもしれないね」
「だから何がですか?」
「さあ?」
からかうようにごまかされてしまう。
目的地にもう着いてしまいそうで追求できそうにもない。
でも何だか悪い気はしなかった。
異なる道を歩いていた三人が、互いが見える位置を歩きだした。
偶然ではない、必然の運命。
H21.12.8
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