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目の前には五振の刀が並べられている。そのどれもが美しく、そして今か今かと手を差し伸べられるその時を待っていた。政府の使いである式神、こんのすけは審神者の様子をじっと見ながらどの刀を選ぶのかと審神者の決断を急かすことなくただ待っていた。

刀たちは審神者が手に取った時に伝わってきた微力な霊力を感じた。一振り一振り丁寧に感触を確かめては元の場所へ戻すという作業の中、伝わってきた霊力の心地よさに思わず自分を選んでほしいと思うものもいた。決して多いとは言えないが少なくはなくしかも上質で、ああきっとこの主なら自分たちを最大限に活かせるだろう。


(ああでも扱いにくい俺じゃ選んでくれないかな)


赤色の目立つ美しい刀ー加州清光がぼんやりとそう思ったその時だった。


「こんのすけ、決めました」
「どの刀にいたしますか」


(どの刀を選ぶんだろう。面倒見の良さそうなやつかな。それとも明るくて主を楽しませるやつかな)


目覚めかけた意識をまた微睡みの中へと押し込もうとしたその時、溢れんばかりの力強さに思わず叩き起こされるような衝動をその身に感じた。


…嘘だろ?


そう思わずにはいられなかったが、それと同時に生まれたばかりの心臓が鼓動を強く鳴らすのを感じた。初めての感覚に慣れないところだが、できないわけではない。人の身体を得てまずは口角を上げながら言葉を発する。


「あー。川の下の子です。加州清光。扱いづらいけど、性能はいい感じってね。」






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