とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2020/05/16(23:17)

TOV ユーリ
「ユーリ」


今日の最高気温は三十二度。湿度もなくカラッと晴れていた。
夏休みの直前、あの時私は不登校を続けていた。
今もね、学校に行くことが怖いけど、君と出会えて気付いたことがあるんだよ。

――蝉が鳴き始めたあの頃。
不思議な格好をしていた君は、目が覚めたら知らない国、ここにきたと言った。
それから君は私と一緒に、夏を過ごした。
私は学校に行ってなかったから、朝も昼もずっと一緒だったんだ。
だからかな、君に酷く惹かれたのは。


「ユー、リ」


人と接することが怖くて、何も出来なかった私の背を。
いつもいつも。頑張れって。
振り返ればいつも、笑って応援してくれた君がいた。
初めて学校に行けって言われて、喧嘩して家を飛び出してきたとき。
二人して雨に打たれてびしょびしょになって。
――ねえ。


「……ユーリぃ」


私、もっと頑張るから。
ほら、だって昨日はね。
頑張って学校の制服を着てみたんだよ。
玄関まで行って怖くなっちゃったけど。
だって昨日まで君はいてくれたから、もしかしなくても私は君に甘えていたんだね。
じゃあ明日は学校まで行ってみようって。
俺も一緒に行ってやるからって。
言ってくれたのにね。


「……っ」


目が覚めたら、君はいなかった。
振り返っても、頑張れって笑う君は、もういない。
でも、ね。
寝る前に、最後に押してくれた背中が。
今も私を前に、前に、前に。


「っ頑張って、やるんだから…!」


ユーリ。
今ね、私学校に向かって歩いてます。
あの夏の日々を、忘れたりしないよ。
君が私にくれた贈り物全部、背負って。
頑張って、いっぱい生きるから。
でもね。

最後は消えてしまうと言うのなら。

私のこの想いを全部、持って行ってくれたらよかったのに。


「ユーリ、夏が終わっちゃうよ」


私の声が、七日目の蝉の声にかき消された。


なつのわすれもの
(蝉が鳴くたび、君を思い出す)

TOV



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