とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2020/05/16(23:34)

夏目 夏目
おかえりなさい、と笑う塔子さんに安堵の溜息を吐く。今日は遅かったなと心配する滋さんの言葉はかたく、すみませんと少し声が震えた。着替えてきますと急いで階段を駆け上がれば息が詰まった。

「おい夏目」

ニャンコ先生がぶにとした体を座布団に預け、仕方なかったのだと、だから顔を上げろといった。
暗い部屋は冷たい。月明かりが足元を朧に照らす。俺は壁に背を預けずるずるとしゃがみ込んだ。

「...ニャンコ先生」

彼女は、笑っていた。仕方ないのだと、泣いていた。

「......そういう妖もいる。こればかりはお前でもどうにもならんのだ」
「でも、」
「諦めろ、夏目。人間の命が短いように、あれも決まっている」
「...でも」

仕方がないのだと、笑うことは君がいない明日を認めることだろう。君がいた昨日をセピア色につつむことになるのだろう。俺は、君といた今日のまま、動けない。押し花のように留めてしまえれば、

「...苦しいんだ、先生」

この悲しみが押し寄せる前に。

「......俺は、」

先生はもう慣れたとすました顔をしていたけれど、きっとその伏せた瞳は揺らいでたのだと、俺は寄せる声に目を閉じた。

夏目



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