とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2020/05/16(23:34)

magi モルジアナとモブ主
幸せというものの色を探していた。そんなものに色などないのだと笑ったあの人は、腐り落ちてしまった両目をずっと探しているのだろう。暗い暗い檻の中で、見えない朝日を見上げては、差し出されるご飯を詰め込んだ。噛めば確かに、甘い味がした。それはもう最初のころの話だ。
領主様のためにぶどう酒を運ぶ。重たい重たい鎖は人の目を引く。擦り切れた皮膚が痛んだ。足の指先はもう何も感じない。ぶどう酒の入った瓶を割らないようにと抱えていれば、誰かが勢いよくぶつかってきた。怒られるのは嫌だと、反射的に背中から倒れる。瓶の中身が揺れる音がした。割れる音は聞こえない。ほっと息を吐けば、ぶつかってきたその人が詰ってくるのを無言で堪える。叩かれようが蹴られようが、領主様のそれに比べれば痛くはない。やや暫くして解放されれば、蹴られた足に青い痣が浮かぶ。瓶が割れていないならそれでいい。早く帰ってしまおう。落とさないように抱えた瓶は冷たい。こんなもののために、私の足枷は外せない。機嫌がよければご飯が貰える。檻に帰って妹たちと分け合おう。そうしなければ生きられないのだから。モルジアナのように赤い髪であれば、もう少し違ったかもしれない。薬を貰えたかもしれない。きっと、それが最期の優しさになるかもしれない。どうせなら柔らかく温かな布団で眠らせてあげるのが良かったのだろうけれど、そんな願いなど犬の餌にさせるよりずっといい。
領主様、領主様。ああよかった、今日は機嫌がいいみたい。少しのご飯を手に檻に帰る。妹たちの姿はなく、項垂れる血の繋がらない兄がいた。ああだからきっと機嫌がよかったのねと、そこで初めて痣が痛みを訴えた。

magi



←prev | top | next→