とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2020/05/16(23:39)
MHA 爆豪勝己「勝己くん!」
柔らかい声だと思った。
それは高校に入学して少し経ち、A組の人とも和気藹々と話が弾むようになった頃のことだった。
爆豪勝己とは所謂幼馴染というところの付き合いではあったが、世間一般的なそれとは全く程遠く、彼、緑谷出久はその関係に怯えるような、そんなところであった。けれども学校も同じく順繰りにここまで付き合ってくれば交友関係など容易く把握できる。勿論本人の意図とは別物であるが。そうなのにも拘らず、この声だった。
飯田と話していた視線を思わずそちらに向けるほどには驚愕し、そしてそれはクラスの殆どがそうであった。いきなりに全ての視線を集めてしまった彼女は耐えきれずに赤面し、そうしてブスブスと今にも爆ぜてしまいそうな爆豪に首根っこをまるで猫のように掴まれると教室の向こうへ連れていかれてしまった。
ほぼ全員のこの時の表情など、考えるまでもなかった。
「びび、びっくりしたあ! すっごい勢いで見られたんだけど私なんかしーー」
「したわクソが!! あれ程こっちに来んじゃねェって言っただろーが!! お前の頭は何にも詰まってねえのかああ!?」
「いやだって、お弁当...」
「何のためのケータイだよ!!」
ボンとついに我慢できずに爆ぜた両手を見やりながら、彼女は不似合いなほど朗らかに笑った。
「お母さんが勝己くんにもって言うんだもん」
同じ髪色が風になびく。陽光を浴びて光の粒をこぼしていきながら身を翻すと、どことなく母に似た目が彼を見据えた。
「今日、夜にお母さんがお邪魔するねって、光己さんにも一応伝えておいて」
ーー腹が立つ。何にかはもうわかっているが気付いたところでどうしようもないことなど、それこそもう分かっている。降り積もった雪とは遠い薄汚れた塵だ。それが何度も何度も、拭っても積もるのだ。汚い、ものだ。
「お前も来んのかよ」
「うん、光己さんのご飯おいしい」
その汚れを、彼女は少しも知らずに。ただ、笑うのだ。
彼女の持っていた弁当を奪いとり、騒がしいであろう教室へと踵を返す。
「勝己くん!」
柔らかい声が、名前を呼ぶ。
「帰ったら勉強教えてね!」
そうして、刺刺しい言葉を投げつけた。
MHA