とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2020/06/04(10:55)
薬屋 深山木秋八年が経ってしまった。四つの季節を三十二回と一回繰り返し眺めては過ぎ去り、そうして置いていかれた。今までを振り返れば八年という歳月などたったの一日と変わらないほどに短いものであったはずなのに、どうしてかこの時ばかりかは恨めしいほどに酷く長かった。
彼女は焼け焦げたそれを見上げる。温かく愛おしい居場所だったそれは黒く煤けた柱だけを残して、暫らく見ないうちに随分と開放的になってしまった。辺りにたちこめる不燃物の燃えた臭いさえも愛おしいほどに、心臓の奥の方が張り裂けそうなほど鋭い痛みを訴える。声にならない音が、唇の僅かな隙間を擦り抜けた。
――誰の名を呼べばいいのだろう。なんと叫べば、あの日々は帰ってくるのだろうか。
鼻の奥がつんとして、わざとらしくくしゃみを一つする。下手なくしゃみの所為で余計に視界が揺らいで、くらりと目眩がするような青い空を見上げた。
「夏が終わっちゃうよ、秋」
蝉の声が遠い。生温い風が頬を撫で、乾ききらない目蓋に触れる
薬屋