とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2020/07/26(12:52)
MHA 心操「心操くん」
柔らかな声が弾ける。真綿のような優しさで、じわじわと俺の首を締めていく声。
机を挟んで目の前に座る彼女はなにも気にせずノートを開いて長ったらしい解を書き込んでいく。六月の蒸した風が、第二ボタンを開けてゆるく下げられたネクタイの隙間にある襟をさらっていく。
暑いね。
見上げるような視線の先にある首筋の続きから目を逸らせば、どうしたのと笑う。
ここが教室でなかったら、今すぐにでもその気づかないふりをして愉しげに笑う唇を噛み込むのに。
噛み込んでその隙間すら暴いて笑う余裕すら奪ってやるのに。
「腹立つ」
「わあ突然暴力的」
細いネクタイを持って首元を締め上げれば、何がそんなにおかしいのかコロコロと笑い声をあげた。
「いいから早く課題終わらせてくんない」
「ねえちょっと、見てよこの解答。模範解答が別紙に移るところで印刷間違えてるの。しかもさあ関数の問題してるのに突然階数の証明問題になってるんだよ、笑うでしょ」
正解わかんなくて詰んだ。
そう言ってペンケースに消しゴムやらシャーペンやらを片しながら立ち上がった彼女は、ふいに俺の髪を撫でた。撫でるというよりは、寝癖でどうしても逆立つ髪を撫で下ろす行為に近い。
「かえろ、人使くん」
――愉しげに笑っている。こちらの反応の一つ一つを確かめるような声。初めて名前で呼ばれたその声に呆れるほど素直に反応してしまったのがなんだかひどく悔しくて、ちらと廊下を見やった。誰もいないし気配もない。
カバンを肩にかけて背中を向けた彼女の腕を掴んで振り向かせて、唇をさらう。
ようやく目をぱちくりとさせた彼女にしてやったりと笑えば、耳まで色づかせて大股で歩き始めた。
「人使くん」
教室のドアで振り返る。カバンすら持っていない俺を急かす。
じわじわと、締め上げられる。息もできないほど、名前も呼べないほど。真綿でも人を殺せるんだなと、初めて知った。
MHA