とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2020/12/13(22:35)
MHA 緑谷「名前さん」
彼は、時々こうして名前だけを連ねて何も話さなくなる。
かさついた唇を言葉を吐かない代わりに重ね合わせたところで、彼のその胸臆からもやが消えることなどあるわけもないのに。何度も何度も触れ合わせて飲み込んでいく。
まるで心臓の裏側の隙間に、世界の秘密を溜め込んでいるようだと思った。
彼がデクとして駆けつけていくたびに、平和の象徴として別の何かに挿げ替えられるたびに、その隙間にはおそらく、ヒーローにしか抱えることのできない秘密が注がれていく。
「…出久」
首筋に置かれた額が熱い。彼の皮膚の下にも、私と同じ血が流れている。
私と少しも変わらない肉体で、私と変わらない神経回路で痛みを誤魔化している。
「…大丈夫」
肩口で吐かれた弱音が、月のない夜に沈む。
その虚に溜まった靄を誰も見つけてはくれないね。誰も名前をつけてはくれないね。
彼の浅くなっていく呼吸に合わせて、時間が止まって仕舞えば息を吸う必要もなくなるのかもしれないね。
そんなふうに笑うには、今日の空は昏いばかりだ。
MHA