とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2020/12/16(21:26)
MHA 爆豪成仏できない幽霊と爆豪の話
(Twiにて続き更新中)
『あの〜…』
自分一人しか住んでいない部屋に、女が一人、立っていた。
『…あれ、もしかして、爆豪?』
そいつは高校の頃、同じヒーローを目指していた。三年間とりわけよく話すでもなくお互いの存在を認識していた程度のそいつが、目の前にいる。
まるで安っぽいホラー映画にでも出てくるような夜に浮く白のワンピースを身に纏った彼女の右目は硬く閉ざされていて、左目の薄青い眼球が懐かしそうに弧を描く。
『うわあ久しぶり! すごい、成長してるね!!』
言葉が出ないのは、この状況があんまりに非現実的だったからなのか、それともその女が――六年は経つというのに、あの頃から全く変わっていないことに、驚いていたからなのか。
『…いいなあ、大きくなってて』
硬く閉ざされたままの左目。
緩く微笑んだ頬に、涙が落ちる。
『ねえ爆豪。わたしちょっと未練があって、成仏できなくて。旧友のよしみで救けてよ』
薄くぼやけた両足は、ただ虚空に浮かんでいた。
「…お前、いつ死んでたんだ」
『いやあ、それが全然。覚えてない』
「ヒーローやってたんか」
『それもねえ、覚えてないんだよねえ』
「…未練も覚えてねえなんて言ったら殺すぞ」
『うわあ大正解! もう死んでるけど!!』
けらけらと笑う女を初めて見た気がした。耳郎たちと話す彼女は手で口を隠して忍んで笑うような奴だったと思う。こんなふうにあっけらかんとしていただろうか。
『ほんと。なんも覚えてないんだけどなんか一個だけ言わなきゃいけないことがあって、思い出せなかったんだけど、とりあえず爆豪のその頭につられて来ちゃった』
だからよろしく。
そういったそいつと、思い出せない未練を探す日々が始まった。
MHA