とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2021/02/05(21:55)

magi 君青
ジャーファルと夢主が匂う話
「…そんなに人のことをジロジロ見て、何かあったんですか? マスルール」

朝議を終えて書簡を整理していると、隣に座っていたマスルールと目があった。朝議の間中彼はずっとこちらを伺っていたのだ。巻物を小脇に抱えて横目見ると、マスルールはすん、と鼻を鳴らした。

「…最近、ジャーファルさんからも匂いがするなと、思ったんで」

誰のとは、彼は言わなかったが分かっているのだろう。

「…私からもってことは、朝に会ったんですか」
「赤蟹塔の前で」

ジャーファルさんの匂いは分かんないスけど、なんかいつもと違いました。
なんともないような顔をして彼は言っているのだから、恐らくは彼女の前でもこの話題を出したのだろう。――残念なことにそういうことをしたわけではないのだけれど、最近褥を共にすることが増えた。最初こそロゼとシンドバッドのお節介だったが、ここしばらくはそういうわけではなく、自然と私室に彼女がいる。ジャーファルが手を引くこともあれば、彼女から訪ねてくることもあった。ナマエの部屋にはロゼとジュリィがいるのでそちらに行くことはないけれど。
人肌のするシーツに埋もれながらしていることは他愛もない会話を続けることで、ナマエはいつも、ただジャーファルと話がしたいだけなのだという。こちらとしてはそれはもう耐えるべきものを耐えて応えているのだ、そろそろもういいのではないかとも思う。互いに二十五も過ぎたいい大人が、こんなにも子供じみた夜をそう何度も過ごせると思うだろうか。いや、彼女は疑わずに頷いてしまいそうだ。彼女の中でのジャーファルという人物像がどうにも綺麗すぎるきらいがある。いっそ手酷くしてみてもと一瞬過った思考もナマエの前に立つと片隅にさえいなくなるのは、彼女の中にある綺麗な理想像を壊す勇気が出ないからなのかもしれない。

magi



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