とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2021/03/21(18:32)

倖せに味はある?
ネタ帳(本編と違いますが最初はこの予定でした)
火曜日 倒壊
1週間たった火曜日 誘われる 残り3週
土曜日 水族館
三日たって火曜 2週間たった デクと会う 残り2週
水木で迎えに行くように。
その週の金曜 デク大怪我
土日 看病 月曜半休
3週間たった火曜 包帯取れない 残り1週間ない
水曜 そういえば今日包帯取れる日か。わたしいつまであの家に居座る気だ…。大家から電話。来週の日曜から入居できるようになりました。土曜は内覧と荷運びできます。合鍵持ってて、帰ったら包帯は取れてるけど生々しい傷跡。帰るって言い出せない空気。あきの分のご飯作っててくれてる。結局今日も泊まった。
木曜 事務所二階に帰る あ、デクの家に忘れてきた 取りに行く、「おかえり」って笑われて思わず「ただいま」取りに帰っただけなのに、
送ります。大丈夫。送りますって。そんなこの距離でなにも起きません。僕が嫌なので送ります。…なんだこの終わりが見えない。じゃあデクさん病み上がりなんですから大人しくしててください。じゃあ泊まってってください。いやそれはだめでしょうに。いやでもヒーロー相手に間違いとかないか…。忘れてったのお泊まりセットだし…。腕掴んで離してくれないし。これは、不可抗力というやつだ。
…晩御飯、なに食べますか。
金曜 最後の花金ですね。美味しいものでも作りましょう
土曜 事務所の二階を片付け 家を見に行くっていったらついてきた。家具とか買わないと。僕も行っていい? 一緒にお買い物。
近くのロッカーに預けていた荷物を取り出す。預け先は書き慣れた住所
明日(日曜)の昼、出ていきますね

土曜 昼
一回寝てくるといったデク。ソファに埋もれると睡眠不足のせいか睡魔。横たわって目を瞑る。家とは違う音、匂い。――あ、なんとなく、ここなら大丈夫だっていう感覚がした。
2時間くらい寝てちょっと元気になったデクがリビングに行くとソファに寝落ちてる#名前#。
だらりと垂れた腕。よく見ると、薄い筋が一本。
そろりと筋を撫でると、目が覚める。

「#名前#さん、まだ眠い?」
「ん…すみません、寝ちゃって…」
「大丈夫。ねえ#名前#さん、」

傷をなぞっているのに気づく。
ああ、と落とした目は諦念に近い。

「ねえ#名前#さん、お腹空かない? 生きてるからお腹が減るんだよ」

いただきます、おいしいね。
あ、ご飯があったかくて、煮物は醤油とみりんの味がして、卵焼きは甘くて、お味噌汁はじんわりと腹の奥に落ちていく。
あ、おいしい。
ごはんを食べながら泣いた。
***or
食器を洗う。デクさんが手伝うって言って聞かないので、乾いた皿を棚に戻していく。最後の一枚。デクさんが皿をつかもうとして、止まった。

「あきさん、その手首」
「たった一回ですよ。躊躇い傷」
「…よかった、あきさんが、痛い思いをたくさんしないですんで」
「デクさんは、痛そうですね、いっぱい」
「うん、痛い。僕も、怪我をしたら、けっこー痛い」
「#名前#さんと一緒だね」

お皿の上に、ぱたぱたこぼれていく。
食べられない涙が、積もっていく。

「痛いなら、そんなふうに怪我をするくらい、無茶をしないで」
「…うん。ありがとう、あきさんに言われたら、かなわない」

夜になって熱が振り返す。
つらそうな顔を見て、何にもできなくて。

「傷、変わってあげれる個性だったらな…」
「…ありがと、#名字#さん。痛いけど、でも、いてくれるから、安心する」
「#名字#さん、ひとつ、お願いがあって。親御さんのこと、諦めないで欲しいんだ。今更もうって#名前#さんは言ってたけど、言いたいことも言えないで、このまま疎遠になってしまうのは、もしかしたら後悔になってしまうかもしれない、そうならないかもしれない。ただ、あんな言い方をするくらいだから、きっと、思うところが、あるんじゃないのかな…」
「いって…」

めずらしく少し口が悪いところが新鮮。
大丈夫、そういって笑う。

「辛い時は笑わなくていいっていったの、貴方じゃないですか」
「まだ、ここに、いてほしいなあ」

眠った後、ちょこっとコンビニに。
戻ってきたら、ベッドから起き上がってリビングの壁に寄りかかってた。

「何してるんですか!?」
「#名前#さん、は、気づいたらいなくなっちゃいそうで、もう、あの時みたいに戻ってこないかもって思って…」
「そんなわけないじゃないですか…いまは、ちゃんとここに、」
「今だけじゃなくて、ちゃんと、いて、ほしい」

それは、どういう意味ですか。
ずるりと身体が落ちる。ベッドに運んで、薬を渡して飲んでもらう。
うめきながら眠って行った。布団から出た指が、頼りなさそうに私の服を掴んでいた。


日の夜もこんな調子で、悩んだ挙句、月午後休で帰ってくることに。合鍵借りる。
結局、彼の包帯が取れるまで、寝床はリビングのソファになった。
やっぱりごはんに味がする。デクが笑うとつられて笑う。言葉が返ってくる。あ、あったかい。このひとは、あたたかいひとだ。
水曜になって、包帯がとれて、だというのに、事務所戻りますよって合鍵を返却しようといったらえって顔。なんでですか。

「え、あ、いや、…ご、ごはんが! #名前#さん料理が上手だったから、残念だなって、」
「…デクさんだって、料理できる人じゃないですか」
「僕のは必要最低限というか、そうじゃなくて、」

まごついた結果、合鍵を返そうとした手を突き返された。

「もっててください」
「? そんな、」
「ここも#名前#さんが帰ってきてもいいとこです」

一週間たった。
もう、ここを出ていくんです。
最後に、わがままを、いっても?

「デクさん、海に、いきませんか?」

海月って、なんで海の月ってかくか知ってますか?
くらげを上から見ると、海に浮かんだ月と同じように見えるそうですよ。
季節はすっかり、秋も終わる足音。

「きれい、でしたね」

今までお世話になりました。浜辺で合鍵を返す。
1週間味のないご飯を食べた。あのときはたいそうおいしかったのに何が違うのだろう。
わかった、倖せは、綺麗でもなく優しいでもなく、温かくて美味しいものなのだ。
金曜、なんだかひどく疲れてまちがえて通勤快速に。
押し出されたホームは、見慣れた看板。
今週はなんだかひどく眠いなあ。ホームでうつらうつらとしていると、誰かに手を掴まれた。

「線路、落ちちゃいますよ」

デクさん。そう言ってしまいそうになってやめる。

照れた笑い。

「ああ、僕、緑谷出久っていいます」
「もし良かったら、少し、話でもしませんか」
「――緑谷さん」
「出久でいいよ。だって、同い年なんでしょ?」
「――出久、くん?」
「ふはっうん、それがいい」

帽子の唾を持ち上げて、彼は楽しそうに笑った。

僕は名前さんじゃないから、名前さんは僕じゃないから、名前さんが思ってることを僕が考えているわけではないから、名前さんが思ってることが聞きたい、なりたいこと、したいことが聞きたい。

貴女がいなくなったら、僕は笑えない。

mha



←prev | top | next→