とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2021/08/24(12:19)

magi 君青
前の続き(レームの属国から騎士団長がやってきた)
「先だってはすまなかった、ナマエ殿」

レームの属国である小国からやってきた騎士団長――リカルドは、船上の軽薄さとは打って変わって短い金の髪をかきあげてきっちりと正装を着こなしていた。向こうの鎧はシンドリアでは見るからに暑そうだが、微塵も感じさせない涼やかな顔で微笑んでいる。この雰囲気と顔立ちであれば、近くに女性を侍らせるつもりがなくとも寄ってきそうだなと思う。

「いえ。僭越ながら私が、リカルド騎士団長が滞在する間の護衛を務めさせていただきます」

先日、シンドバッドから拝命した護衛の任務のため紫獅塔にある彼の客間を訪れていた。豪奢な椅子に腰掛ける様はシンドリア王国軍とは異なっていて、レームという国を垣間見たような気がした。

「堅苦しいのはやめてくれ。レームでは女剣士は少ないのでな、君に興味が湧いたのだ」

リカルドはがたりと立ち上がると、大きな歩幅でナマエまでの距離を詰めてくる。
立ちはだかる大きな壁に、少しだけ背筋が粟立つ。この感覚は一生だって付き纏ってくるのだろう。
胸の前で重ねていた拳を、彼は何事もないかのような滑らかさで取った。思わず一歩引き下がってその手を払うように避けてしまえば、リカルドは驚いたように瞬きを繰り返していた。

「…失礼いたしました。時間も勿体無いですから、王宮をご案内いたしましょう。シンドリアは豊かな国です。きっとリカルド騎士団長にもお気に召していただけるかと思います」

ふんわりと微笑む。こういうときは弱々しい顔を浮かべるなどもってのほかで、あっさりと笑ってしまう方がいい。
手前開きのドアを開けて、わずかに頭を垂らす。
――少しでも気を許せば取って食われそうだ。
ジャーファルが始終無言だった理由が、今になって漸く身に染みた。

magi



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