とっても短いお話
mha hqは専らTwitt

▽2021/12/30(22:40)

レームの続き
「――なにか、言いたいことでも?」

シンドバッドの執務室にやってきたジャーファルの顔は無表情を貫いている。瞬きでさえまるで機械のように規則的に閉じられているかのように思わせた。
書き連ねた書簡の中身を確認しながら、彼はこちらを一切見ずしてそう言い放った。
シンドバッドは思わず笑いそうになって、辛うじて口角を引き止める。

「悪かったとは思ってるよ」
「――どの顔が言ってますか」

矢張り眉の一つも動かさずにそう言ったジャーファルは、ただ少しだけ瞳の縁を揺らがせた。

「まさか彼女を指名されるとは俺も思っていなかった」
「……何も、言っていませんけど」
「そうだな」

彼女から何某を言われてもいないのだろうとは、流石に言わなかった。
この二人は秘密ごとを抱えることに慣れている。それが例え自覚的であろうと、詳らかに相手に伝えようとする思考回路がそもそも存在していないのではと思う。言わないという選択肢を選ぶことに疑問を抱かない。それではすれ違うばかりだろうに。こうなった原因にシンドバッドは無関係ではないが、初日にあった船の護衛の詳細はドラコーンたちに任せているのだ。ただ、その夜に起きた出来事の一端を知っていれば、彼女にこんな役割を回しはしなかっただろう。――おそらく。可能な限り手は尽くしたかもしれない。或いはより確信的に手を加えたかもしれない。どちらにせよ、二人にとってはいい機会だ。

「なに、リカルド殿も国を背負って此処にいるのだから、早々身軽なことはしないだろうさ」
「……」

ジャーファルの胡乱な面差しの最大の原因であることに関してだけは、一切の否定はしない。




リカルドの隣に並びながら王宮の案内が終わる頃に、彼が市街地をみたいと瞳を輝かせながらに言った。かのシンドリアの噂は予々、と身振り手振りを交えながらに話をする様に、昔のアリババを思い起こさせた。
王宮の門を抜けて白い壁の連なる大通りを突き進む。アリババの顔が容易に想像がついてしまって、少しだけ頬が緩んだ。

「――なにか楽しいことでも思い出したのかな?」
「あ、いえ……失礼いたしました。私はシンドリアから出たことがないのですが、レームはどのような景色がみられるのです?」
「ほう、今時珍しい。レームに来たことがない剣士は初めて見たな」
「そう、ですか」
「ああ、いや。――そうだな、レームは剣闘士の国。無論我が国も剣に覚えのある者は多い。レームに倣い闘技場が中心部にあって、その周辺には店が多く並んでいるな。夜になっても灯りは消えず、一日中、賑やかな国だ」

リカルドはまるで無邪気な子どものように笑った。

「いつかナマエ殿が我が国に来た時、私に案内をさせてくれ」

通りに人が溢れている。背中を押されて前のめりになった身体を、大仰にリカルドがその胸に受け止めた。そこまでバランスを崩したわけではなかったのだが、腰に添えられた手に導かれるようだった。

「ナマエ殿は剣士である未来を望んでいるか?」

magi



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