とっても短いお話
mha hqは専らTwitt
▽2022/01/05(19:59)
magi 君青レームの続き
「……私はそんなにも非力に見えますか」
ぐいと強く胸を押し返した。今までのどんな時よりも強い力だったかと思う。
彼の目や触れる手の全てが、剣すら視界に入り得ないただの女という認識でしか映されていない。
「ナマエ殿、」
「申し訳ございません。一つ、不手際があったことを思い出しました。我らが国軍の紹介を致しておりませんでしたね」
仮令ジャーファルに言われようとも、それだけは気高く抱き続けていいものだと知っている。――いや、彼であればそもそも、腰に携えた剣を否定しないだろう。
「市街地はまた明日、今度は朝市をご案内いたしましょう。丁度我が三隊も帰港予定時刻です。三隊……いえ、是非、私と手合わせをお願いできますでしょうか」
リカルドは目を見張ると、二、三の瞬きの後にフッと小さく笑った。
「ドラコーン将軍ならいざ知らず、隊長ですらない貴女と?」
「リカルド騎士団長はお強い。私は強いお人にこそ立ち向かう術を知りたいのです」
「そうか。では、賭けをしよう」
「賭け……ですか」
「レームは賭け事が好きでね。そうだな……私が膝をついたら、君の勝ちとしよう。望むものをひとつ、叶えよう。君が負けた時は私の望みを一つ、叶えてくれるかな?」
そうしましょう。
彼の望むものが何とは知れないが、いい機会であることに違いはない。この感覚はきっとシャルルカンやマスルールとであれば共有できるだろう。ヤムライハには肩でも揺すられそうではあるが、騎士団長と相対することもできればこの雪辱を晴らすこともできるかも知れない。そうなれば、背筋は自然と伸びて返事をした声音は張りがあった。
では明日の昼に、と約束を取り付けて、王宮に戻り赤蟹塔の中を見て回った後、私室の前まで共だった。
「やはりシンドリアは面白い。有り難う、ナマエ殿」
「いえ。お食事は後ほどお運びいたします。それまで少しお休みください――」
拳を手のひらで包み、頭を下げる。もう一度面を上げた時、リカルドは笑っていた。
「ナマエ殿、私は船で貴女を見かけた時からずっと興味があったのだ。私は貴女を連れて国に帰りたいと思っているよ」
「……え、? あ、いえ、それは――」
「ナマエ殿、貴女はシンドリアから出たことがないというが、私にはナマエ殿はここではない別の場所の方が似合うように思う。それが我が国かは分からないが、シンドリアを出ることも一つだろう。まあ、無理であれば一晩でも良いが、いずれにせよ、明日を楽しみにしていよう」
それじゃあと気軽に上げられた手の先で彼は身を翻し、そして扉は閉められた。
magi