慟哭に笑え

冬だろうと何だろうと薄手の衣に身を包み、元気という言葉を体現したかのような三馬鹿の内の一人、原田左之助が巡察から大怪我をして帰ってきたと聞いたのは、彼が三日間の眠りから目を覚ました二日後の事だった。彼女は監察方の任に就いているため周りよりも不規則且つ長期任務であることが多く、今回もたまたま早く帰ってこれたことが幸いとして彼に会うことができたのだ。死に目に会えなく涙を呑むことなど、もう何度体験したことか。


「まだ死ぬつもりはねえよ」
「強運だね、腹を刺されたっていうのにまだ生きてるとは」
「俺が死んだらお前寂しがるだろ」


自意識過剰にも程がある。はあと一つ溜め息を吐いて彼女は横になる原田の前髪を梳いた。


「名前」


彼は少し眉をひそめて名前の腕を引き、自身に覆い被せるように寄せた。鼻の先同士がちょんとくっつき、そこで漸く笑った。


「…別に髪梳くくらいいいじゃん、腹立たしいほどさらさらしてるんだから」
「女に言われたって嬉しくともなんともねえよ。逆だろ普通」
「怪我人は大人しくしてないとまた傷が開きますよー」


彼の顔の傍に手を突いて起き上がろうとするけれど、後頭部に回された手に邪魔をされる。大怪我だなんだと言わせておいても、この男はやはりいつでも馬鹿みたいに元気なのだ。


「…心配して損した」
「心配してもらえるなら有り難ぇな」
「皮肉っぽい、沖田のが移った?」
「名前に会いたかったってことだよ」


原田は啄むような口付けを一つして、息を吐きながら枕に頭を乗せた。体現したような男でも、腹に穴が開けば少しは静かになるようだ。名前はようやっと体を起こし、溜め息を吐いて彼の頬をつねった。


「約束して」


原田は目を瞬(しばたた)かせながら、


「死ぬなら私の前で、死んで。折角帰ってきたのに物言えない状態になってたら刻むから」


――本当は怖かったのだなんて、言えるはずがない。名前も原田も、その腰に携えたものの意味するものを知っているのだ。暫くして彼は笑ってつねる手を解いて握り、ゆっくりと起き上がる。少しだけ上体を反らせたまま、彼女の頭を抱き締めた。


「お前こそ、知らねえ場所で死ぬんじゃねえよ」
「……山崎が優秀だからきっと捜してくれる」
「俺が探しに行ってやるよ」
「絶対見つかんないね、私隠れるの得意だし」


可愛げねえこと言ってんな、と唇を鼻面から頬、唇に滑らせて軽く触れる。


「どこにいたって見つけてやる」


馬鹿じゃないのと呟こうとして止めた。口を開けば、情けなく嗚咽がこぼれそうになるから。代わりに下唇を噛んで黙りを決め込み、彼の胸に頭を押しつけた。消毒のにおいと血のにおいがぐちゃぐちゃに混ざって鼻が詰まった。


「……死なないで、左之助」


ああ、と短い返事と、温かい腕が背中に回る。とくんと聞こえた心音が、愛おしくて少しだけ泣いた。


に笑え