海の底で夜を見た

 ストンと着地というよりも瞬間移動的な着地だった。目の前にはセピア色した明かりがあやしく灯る宿屋であった。どこか見定めるかのような下品な目つきのおっさんとやり取りするキャプテン。そりゃそうだ、私なんて抱えられたままであるのに、いたってキャプテンは何事もないかのようであるからだろう。そりゃ困惑しますよと言いたいけれど言えない理由がある。

「…うぇ…吐きそう」
「吐くな。…絶対にだ」
「あいあい…ぎゃぷでん…ん…」
「言えてねェだろうが」

 顔が見れなくても最大限に怒っていそうな気がしてしまう。通路を歩きながら目の前では手が優雅に動く。能力無駄使いさせるなと呆れつつ言われながらも包み込まれるルーム内。あ、なんだかんだでめっちゃ優しいじゃないですか、なんて事を朧げに思いつつ身を任せる。ふわりとした意識の中に何かが渦巻く感覚、なんらかの薬、おそらく睡眠薬系等かと思われるものが取り除かれていっているようであった。そうして身体に残るのはほろ酔い状態とキャプテンの能力でどこか全身が細胞が活性化されたような状態だ。
 通路を歩いているだけでも時折アンアン聞こえる夜更けすぎ。いやぁ…めっちゃまでお盛んじゃん、なんて事を思いつつ借りた部屋に辿り着けば、空いていた部屋は実に簡素な部屋であった。入った瞬間に目に入った変なオブジェが衝撃的で笑ったりしてからベットに腰掛けた。

「んー…ろーきゃぷー、さっきのちゅしましょ…」
「吐いてねェだろうな?」
「大丈夫です、呑んだもんは胃の中にあるままです」
「ならいい」
「ん、だって、知らないかと思いますけどキャプの治療受けると身体活性化…っていうんですか?するんで…、もう…熱が渦巻くっていうか…」
「それは知らねェな」
「ペンギンとかー、ン…っ、他のクルーはそのまま騒いでますから知らないでしょうけど」
「おまえも騒いでんじゃねェか」
「ぁ…バレちゃいました?いやでも…ん…、あぁでもしないと熱発散して……っん、紛らわせられないんですってぇ…」

 会話の途中からしばらくして自然と雪崩れ込んだのは部屋の真ん中にあったベットだった。大きく身体を揺らしたけれど変な薬は多分抜かれたせいで先ほどよりは気持ち悪さは少なかった。酒場と同じ酒混じりの唇の交わしをしながら頭に浮かんだままに微妙な文句を伝えた。

「ン…、折角捕まえた男も逃げちゃうし…」
「しっかり捕らえておかねェからだ」
「えー…、捕まる暇なかったぁ…、だってキャプ、ってば、好みでない女追い払うのに私使うんですもんー…」
「悪かったよ、だからこうしてんだろ」
「はーー…キャプテン最高、そういうところ好きでぅ…」

 背中の留め具に手をかける指先を受け入れて下げられていく、そうしてゆるゆると腰に落ちるドレスも単なる布切れになっていく。女としてのある意味の戦闘服、その殻で守りつつ攻めていた筈が、いとも簡単に崩れ落ちていく。

「あの男にこうして脱がしてもらうつもりだったか?」
「ぁ…、ん…他に脱がしようなくないです?ん…あぁ…でも着衣プレイもあったかぁ…」

 身体に熱が混じるのは、薬のせいかはたまたそれを取り除いてもらった副作用か。ぁ、でも酔いもあるなぁなんて朧げな目線を向ければ、先程と同じように意外と柔らかな唇で塞がれてしまった。痺れそうな舌先、絡み合う舌先に口内を蹂躙されて唇の端から混ざり合った唾液が溢れて始めてしまう。酒場でローキャプテンに枝垂れかかっていた厚化粧のクソ女にここまで見せられないの残念でしかない。

「ん…、やっぱ柔らかで気持ちいいです…」
「良い反応するじゃねェか」
「実はあの女ももっと見たがってたかも」
「もっと見せりぁ良かったか?」
「ぁ…っ、あれ以上は、ぁ、私の顔やばくなっちゃうんで、ナイス判断です…っん…」

 露わになる二つの膨らみの上に手を置き、強くない程度に揉み込まれ、指先でこよりを作るかのように擦り合わせに身を反らした。さすがの判断はやっぱキャプですよね〜と褒め称えながらその手に全てを任せる。何しろペンギンやシャチも頑張れよと見送ってくれた訳だし、希望に応えて私がクソ女の代わりにイイ事をしなければだ。応える?いやもうそんなんじゃない。明日はペンギンには、キャプの手マジでヤバいから、めっちゃ良かったから、といういうマウントを取る事になるんだろうなと思いつつ女性特有の膨らみを楽しむキャプテンに腕を回した。

「余裕か?」
「ん…キャプ相手に…っ、余裕なんてないですよ」
「ぐずぐずだな」
「ぁ…♡そこは…ぁ、酒場でいる時からです…っ、だって皆いる前で…ん♡…あんなんされたらもうだめに…決まってます…」

 邪魔だとばかりに下げられた面積の少ないショーツとの間に繋がった透明な体液を手で遊ぶかのようなその指先が、隠せなくなった突起をなぞりあげる。

「面倒になったらまた呼ぶからな」
「ン…キャプ意地悪…っ、ぁ♡せめて、男落とそうとしてる時以外でぇ…」
「それは聞けねェな」
「ぁ♡…そこやぁ…♡」

 無理じゃん、折角落とそうとしててもまたキャプに呼ばれたらさぁ、ちゅうして元戻ったらその男は芋カス男に見えちゃいそう。長い指も物騒な刺青も全部魅力に思うのに、そうでない男なんてカスのカスしか見てなくて酔えなくなってしまう。
 お腹側の私の弱いところを指の腹で押さえつつ、胸の先端を弾くような悪戯心にキャンキャンと犬の鳴き声に近い声を出してしまう。絶対あの男ならそんな事できないじゃん?絶対お綺麗に抱こうとして空回りのような気持ち良さしか与えてくれない、うわ、めっちゃ予想ついちゃった。そんなくだらない妄想ではなく、今は理屈じゃなくてただの本能に焼かれるように熱が上がっていくのがわかってしまう。

「…やっぱキャプの手気持ちいい…」
「誰と比べてやがる」
「あぁ…っ♡は、ぇー…ぁ、今夜の男予定ぁ…だったやつとですねぇ…♡」

 全ての感覚が研ぎ澄まされていく、指の腹から与えられるもの全てにビクビクと反応を繰り返す。掘り起こされるような快楽に腰をつい引いてしまう。おかげで引っ掛けたままのショーツが時折伸ばす足首から落ちそうになっていた。そんなこともお構いなしにどこか楽しげな表情を浮かべる顔をうっとりと眺めていればそれだけでも身体に熱が入る。

「なら、その男代わりだ」
「ぇ…」

 思わず二度見するかのような目を向けた。女の体液で濡れた指先でクイっと能力を使ったかと思えばその手にはある物体があった。
 長い指を有するその手には、この部屋に入った時に目に飛び込んできたものがあった。何しろ私は部屋に飾られていたオブジェを見つけて笑いのスイッチは入ってしまった。

「まって、キャプ…キャプテン、これめっちゃ面白くないです!?なんでこの形!?リアルめっちゃリアルじゃないですかーー」
「何見つけてんだ」
「あはは、見つけちゃいました、ここの宿センスわるぅ」

 そう笑ったのは少し前のこと。そうして今、キャプテンのその手で握りしめるのは笑った男性器を模したモノだった。酔ったテンションで手で上下で扱くような手遊びをしてから戻した筈が、手の動き一つでそれは手元に…、いやめっちゃ能力の無駄使いじゃないですかーなんて事を言える暇はなかった。

「ぁ、ぁぁ…っだめぇ…っ!キャプだめ…」

 開かされた足の間に挿入されたものに身を固くする。冷たく少し硬いそのオブジェ、ただ濡れきっている場所はすんなりと受け入れてしまった。そしてそれをキャプテンの手で動かされてしまえば声は耐えられるわけがなかった。

「あ、あ…っ♡」
「あの男にもその反応するつもりだったか?妬けるな」
「ン…♡ごめんなさぃ…っ♡ん…」

 熱のない物体なのにしっかりと足りない部分を補ってしまって、疼き溢れていた欲を掻き出すかのように出たり入ったりを繰り返せば私だけがおかしくなってしまいそうに目の前の身体に縋り付こうとした。そしてキスを強請るのに今度はしてくれなくて、ただ無機質なモノで女の部分を嬲られているだらしないだろうこちらの表情を眺めてくるだけだった。折角出した舌先もしまえずに、はぁはぁと息を吐けば犬が喜んでいるようにしかならない。

「座れ」
「ん、ハイ」

 これでも私キャプのこと好きなんだけど、ただただキャプテンの旅に重荷にならないようにしてるだけ。きっと分かってくれないんだろうと思いつつも差し込まれた無機物をキャプのものとして腰を落とせば気持ち良くなってしまうのは多少の裏切りだ。
 あぁ、ダメだ。結局はキャプに来いと言われたら参上つかまつるし、座れと言われたら反射的に身体が動いてしまうように身に付いてしまっている。

「あのナンパ男のしょうもねェもん咥えるよりマシだろ」
「ん、ぁ…♡ひどぉ…っ♡」
「歯たてるなよ」
「ん…ぐ…」

 背中を丸めつつ圧迫感に耐えながら座った私の目の前に出されたのは、割れた筋のついたお腹にビッタリついた雄で、それをまるで下の口に挿入でもするかのように手を添えて口の中に押し込まれる。先走りの液体を舌先で捉えて、苦しさある中で必死に扱く。じゅぽじゅぽと音を立てて攻め立てるそのブツ、そしてお腹におさまってしまっているオブジェは動く事はないけれど、ただ圧迫感を与えてくる。下ら感じる物足りなさはあるけれど、口の中では先走りの体液を甘く感じてしまう。
 新しい欲を芽吹くその息遣い、そしてどこか満足気な雰囲気が伝わってくるだけでお腹の中が疼く。這わせる舌先に対して褒めるかのように乱れた髪に手櫛が入る、そのまま耳を撫で、耳に穴に少し指が入り込み咽せそうになってしまった。

「っん…♡ぁ…っはぁ…」
「止めるな」
「ぁ…♡だってぇ…んぐ…っ!」

 私がそこを弱いのは知ってますよね?なんて頭の中で騒ぐだけになるのは喉までぐっと欲の満たされた男のモノを押し込まれたからだ。けれど当然歯をたてるわけもない、ただ溢れそうな圧迫感には目の端から自然と涙が溢れる。身体中の穴が塞がれていきそうなその状況の中で必死に手で触れられる場所を撫でた。

「…んぐ、あ…あ、こんなんじゃ…ぁ♡」
「どうしたイけねェのか」
「ん、だってぇ…♡ぁ、…っ♡」
「てめェはいつもそうして強請ってのか?」
「ん♡違うぅ…っぁ♡キャプ、てんだから、ぁ…っ」
「悪くねェ返答だ」

 一瞬口から抜かれた雄、透明な糸をそのままにだらしない顔をしながら、ぺろぺろと必死に良くなってもらいたい一心で舐め尽くしていく。血管が浮き上がるようなその硬さ、これあとでいただけるのかと思うと余計に熱が入ってしまう。そもそも私相手で硬くなってるんだと思うだけで充分過ぎるのにだ。想像だけでもご褒美半端ないわけで、こんなオモチャなんて一瞬の喜びでしかなかった。
 早く早くと急いでしまうのが伝わっていくようでそのまま押し倒されてしまい、目の前で足を左右に開かされてしまった。

「あ…っ♡」
「こっちは随分と悦んでるようだが」
「ん、ぁ…っ♡ゃぁ…っ」
「おれのはいらなそうだな」
「…っん!やだぁ…ぁ♡きゃぷてんのが欲しいぃ…っ♡ん♡ちゃんといっぱい、ぁ…、お仕事したからぁ…♡」
「あぁ悪かったよ」

 開かされた脚、蜜壺に入り込んだ無機物に手を伸ばしたキャプテンが、そのまま何度も抜き差ししてくる為に息が絶え絶えになっていく。じゅぷじゅぷと蜜を掻き出されて、思わず閉じようとしてしまった脚は手で制された。そして過ぎ去っていった時間、折角の二人だという空間を奪っていった男性器のオモチャが身体の中からズルリと抜かれた。
 いつもいつも嫉妬という音が鳴り止まない、けれど今は揺るぎないその視線が私だけに注がれるだけで今はもう世界一の幸せ者だろう。

「ん…♡はい…ください…♡」
「ちゃんと出来るな」
「ン…ッ♡あ、あ…っ!やぁ…っ!」
「腰ひくな」
「はぃ…っ♡」

 抜かれたら抜かれたで物足りなさしかなかった。見るに見かねたのだろう、こちらのおねだりに応えるように手で添えたモノが割れ目にあてがわれた。瞬間上体をのけ反らせてしまった私の腰を捉える長い指を有する手のひらがあった。そして細めた目からは熱さ混じりの視線が刺さってくる。総身が震えていきそうに、そして足先にまで力が入り始めてしまった。

「ぁ…!…ん♡…っ♡」

 顎を宙に突き上げ、のけ反らせてたままに小さい痙攣が始まってしまって思わずそれを隠すように必死に押し込めようとした。身をこわばらさせつつ手を彷徨わせる。それなのに胸の先を弾かれつつの指先がまるで指摘をするかのようであった。

「…なってねェな」
「んぁ…♡は。ぁ…ぁ、ぇ…」
「イくときは言うもんだ。なんだ他の野郎は教えてくれなかったか?」
「あぁ…っ♡…ん、はぁ…ぁ、他のやろ、でなんて…ん♡イかない、ですもん…っ」

 目に入る彫られた入れ墨に手を伸ばせばその手は手首毎捕まってしまった。ぎゅっと掴まれたまま腰を振られてしまえば一瞬だ。目の前に広がるいつの間にか見に纏うものなんてないキャプテンの姿があって、その身体全身で私に欲をぶつけてきている。それだけでもういとも簡単に欲という欲が女の場所から溢れ出していくのが分かる。

「…ッ、面倒な男に引っかかるような時は助けてやるよ」
「ん♡ぁ…♡さいこ…ッうなんですけど…っん♡」

 根本まで呑み込んで打ち付け合う身体の音が連続的に部屋にこだまする。目に涙を溜めつつもヒクヒクとお腹の中が疼きを止められる事はない。揺れに身体を任せてしまうと声なんて止まることなんてなかった。快美な官能の渦にのみこまれて、もう戻れなくなるような海の底まで一直線だ。着飾っていたようなものも剥がれ落ちて、男の精を促すように腰を揺らした。
 普段あれだけ動いても汗の一つもかかない男、それなのに目の前にある快楽に少し歪み汗を滲ませるその表情を眺められるとかこれ以上に興奮を煽られる事はない。

「きゃぷ…、気持ちいいですか?」
「…じゃなきゃしてねェだろうが」

 思わずその表情に手を伸ばせば、目を細めたまま手にすり寄るようなその甘え。心臓が足りない、今夜一番に激しい心臓になり変わっていく。待ってください、それもう一度頼めますかなんて言ってしまいそうになるのをぐっと堪えた事を誰か褒めてと叫びたくなってしまった。こちらが異様に悶々とし始めたのが伝わってしまったのか、あっという間ににどこか不満気に眉を寄せた表情に変わってしまった。随分と余裕そうだなという台詞が最後で、あとはもう果てるまで散々可愛がられてしまう。全身を朱に染めて、身体中に汗を滲ませつつの身体に注ぎ込まれる溜まりに溜まっていた欲が一気に放たれるまではまだ先だった。