イジメとケジメと初め
揺るがない信念をもって、そのためならば何を恐れることもないその姿に一つの感情を持つ事は当然に近いのではと思う。口数は多い方ではない男だけれど、状況を静かに見守り冷静さを持ち合わせる男だと思っている。致命的な方向音痴はまぁ愛嬌というならばと目を瞑ろうとしても少し無理さはある。一瞬の油断で消える男はやはり留守番がベスト、ひたすらストイックに鍛錬している。そう、今日もだった。
船内にほぼ一人になる時ってまずない事だ。ルフィやウソップは散策、フランキーは船の関係、チョッパーとロビンさんは本屋、ナミは航海の情報収集兼ショッピング、サンジくんは食材関係と各々の理由で寄港地では特に初日に船を離れる。よく残るブルックもルフィさん付き合いますよと今日は出て行ってしまった。今日は私も含めてゾロと舟番であった。遠目からでも賑わいがありそうな街だから今日の様子聞いてからでも行ってみようかなんて予定をたてていた。
おそらく鍛錬に明け暮れてるだろうゾロ、必然的に部屋にいても問題はなかった。ナミもロビンさんも居ない部屋の中、ゴロンと大きなクッションに横になってまどろみを享受する。何となくだった、一人という久しぶりの状況にとある衝動に駆られてしまった。だから少しだけとばかりに服の下に手を伸ばしてしまったのが最後だった。
目を閉じて自身の手や触れる場所に意識をさいた。女にだって多少の欲はある、綺麗な話でもないからいう事でもないけれどだ。恋愛をするつもりもないけれど、ただ持ち合わせている一つの欲は人間としてのものでもあると言い訳が成り立つ。少しだけそれを満たそうとしていた。下半身からお気に入りのショーツを脱いで、片手は胸に、そして利き手は脚の間へ持っていくのも早かった。これはちょっとした作業だ、触れる場所は撫でていたら少し主張し始めた場所で、どこか慣れたように指先を動かしていた。ただそれだけでも自身の身体の事は分かっていて快楽が呼べる、なんと素晴らしい事、島の男など要らないとばかりに思うくらいには浮かされていた。
「ん…、ぁ…」
ただ、そりゃ私だって触れてほしい相手くらいは居る。でも別に叶う事はないと思うとある意味割り切れる。何しろその男はひたすらストイックだから、女やらに興味はない。ただその姿に魅力を感じるから何も望めない、ただ今は頭の中への出演くらいはしてもらえないかと打診すれば、了承が得られていた。
「…っぞろぉ…ッあ…」
「入るぞ、聞きてェこ…」
名前を読んだら本人が登場した。鍛錬後なのか少し汗が浮かんでいる姿、そしてその少し見開いた目と視線があってがしまった。ドアのところで立ちすくんだと思うのはおそらく一瞬だ。
言葉と同時にドアを開けてはダメだってあれほど言ったような気がしてるのは私の気のせいか。いや、あった、以前シャワー室にいるという私を呼びにきたのがゾロで同じような事はあった。あの時はちょうど髪を乾かしていたくらいの何の問題もなかったけれど、ちょっとレディが着替えているかもしれないでしょう、と一言笑いつつ文句を言った筈だった。そしてその記憶は走馬灯になるのだろうか。そう、死ぬ前に流れる記憶の一つだろう。
「なんでもねぇ」
「ま、まって!」
灰になるほど燃え尽きてサラサラと消え去りたい一心だけれど、咄嗟に引き留めていた。ただ今をスルーされてしまえばもう次に顔を合わす事は不可能だろうという瞬間的な自己分析だった。
「何も見てねェ」
「見た!見たでしょ!」
「見てねェ」
「うそ!」
必死に騒ぎ腕に縋り付きそうな私にあーぁ、うるせぇうるせぇとばかりに耳を押さえるめんどくさそうなゾロを引き留めた。そして見下ろされる視線にたじろいだ、思わずその白いような視線に手が止まる。
「何がどうしろってんだ」
「…って…」
「あ?」
「て、手伝ってって言ってるの…っ」
「なんでおれが」
「いや無理…、ここで穏やかににこやかに何も見てませんよ〜的なスルーされる方が無理!むしろ共犯になってくれた方がマシ!」
「何の理論だ」
「あの…本当…、その…そりゃ、ゾロにとっては巻き込まれだけど…」
あぁあいつ一人でやってたな、ははっ的な流れよりはもう開き直りのルートを選択する。いやゾロが言わないだろう事、そもそもそんな事思わないかもしれない。けれどTシャツに脱ぎかけのショーツというアンバランスさの格好のままポツンと残されるより段違いにマシだと思った。
「はぁ…どうしろって?」
「…ってくれるの…?」
「おめぇがそう言ったんだろうが」
「そ、そりゃそうだけど……。…ぇ、っと…その、なら」
呆れたゾロをあぐらのように座らせて、その脚の間のスペースは私が収まるのには充分すぎた。当然に顔なんて見られるわけがなくて、だから背中を預けるだけ、そもそも何が悲しくて自慰を手伝わせようとしてなるのかと言う話だ。でも知っているゾロの理性は強固だ、普通ならば手を出してしまいそうな美女ですら見向きもしない。なんとも鋼の精神過ぎる。私だったら手を出してしまいそうだと思うのにだ。だから私がここでナニをどうしようともどこ吹く風というのが予想ついてしまう。
「…あの…その、じゃ、触って欲しい…デス」
「どこをだ」
「…じゃ、胸」
色気もへったくれもない指示、今から多少の濡れ場感を出そうと言うのにあまりにも実務的だった。通りがかりのちょっとした事故、ハプニング遭遇、アンラッキースケベ…くらいであろうゾロの立場を思うと申し訳なくなってしまう。けれど、そんな事ならば過ちで一夜とはいかない一瞬の思い出作りで終わらせたい。いやもう何だかそれすら切ない、え、この男はそもそも私の事を女と理解してる?とそこから始まりそうであった。
渋々とばかりにTシャツの裾から入り込んだ手が腹部に触る、潰れたマメも強固な皮膚となって分厚そうな手を有している。その手は私のものとはあまりにも違う。どれだけ自身で触ろうとも、ゾロに触れられているという一点でどうしようもない疼く感覚と切なさに包まれる。望んでいた、いやでもこれは望んではいなかったと言い訳じみた事を交互に思いつつ、Tシャツの上から下着のホックを外せば押さえ込んでいた胸元にどこか浮遊感が生まれた。
「…ッ、」
「これで良いのか?」
「ん……っ」
「脈はえェぞ」
「ぁ、当たり前でしょ…」
背後から回された腕、そして服の裾から入り込んだ手が無造作に胸の脂肪を掴む。既に出っ張った部分は丁度掌の真ん中で押し潰された。胸なんて、そういう時じゃない時に触られたら、イラっとするくらいの場所なのにたった少しの気持ちのスイッチだけでこんなにも変わってしまう。指摘の通りにバクバクと早鐘になるのだって全部何もかもがゾロのせいだというのに気付いてない苦しさ。ゾロと呟いたアレまで知られているのかを聞けるわけもなかった。
先程までは手慣れたように撫で回していた癖に今はしおらしく股の間に手を伸ばす。途中だったということもありそこは乾きはなかった。ゾロの硬い掌から与えられる胸への刺激、触ってという私欲にまみれた指示通りに触られる程度なのにどうしようもなく腰が揺れそうになってしまう。
「っ…ぁ」
薄い布の上からでもぷっくりと膨らんだ小さな突起、図々しくも直接触れたくなって一度慌てて履いたショーツをズラせば分かるほどに主張をしていた。指先で密やかに溢れさせていた体液をすくい、撫でつけて刺激を与えれば、先程の続きとばかりの欲が溢れ出す。こんなみすぼらしい姿の背中を預ける男が何を思っているかはわからないけれど、もう手は止まらなかった。
「ん…!…ぁ、ゾロぉ…」
「これくれェは平気か?」
「…っん、きもち…いい…、ありがと…」
手伝っての一言をなんだかんだでその通りにしてくれるゾロ。そうか文字通りに手伝っているのだろうと思いながらも与えられる刺激にビクビクと背中を逸らしてしまう。いつの間にか両方の胸が不揃いに形を変えて、指先で先端を摘み上げられて思わず声を上げてしまった。本当たまにしかしないこの行為、したとしても物理的に両胸と下の方を同時に刺激など出来もしない。でも今日は違う、知らない意思が混じる指先が女の欲を炙り出してくる。そりゃ私が頼んでいるからとはいえ、単なる快感としては充分過ぎたのだ。
「ン……っ、」
「また邪魔そうなもんだなこれ」
「ひど…、…っ、ん…でも、まぁ…その通りだよ…ね」
「これで良かれっつうなら良いんじゃねぇか?」
「ん、ぁ…ん、ぞろの…手すき…っ」
思わず呟いてしまった一言もそうかの素っ気ない返事だ。ゾロが本気を出したら手の中で破裂するだろ肉体というわけだけれど、付き合わされてくれるその手はあまりに優しかった。でもどこか物珍しそうな手つきにしか思えないけどもだ。ただ私からしたらゾロに触られてるというだけで全てだった。心の奥に秘めてる本能に従うだけになりつつある、好きの一言も喉まで出かかっては止めていた。
いつもはその無骨さある手で皆を守り、先を切り開くような力を持ち合わせる彼の手。なのにこんな事を…と考え始めると情けなくて恥ずかしくて目の奥までが濡れそうになってしまう。瞬間考え出した結論が間違っていたとしても今は良いと思えてしまった。痛みなどない、ただただ私にとっては甘く感じてしまうその手つきを享受しながら、それと合わせるように指先で股の間の小さな蕾を小刻みに撫で回す。ジンジンするような刺激が増幅されるように身体中を蝕んでいく。自身の指先で与えている癖なのに腰が揺れてしまった。こんな痴態をと後悔している癖なのに止まらず背中を預けつつ身体を震わせた。口を出来る限り結ぶんでいたら、無意識のうちに口の中を少し噛み、歯軋りのような音を立ててしまったらしい。
「…っ、」
「はぁ、声出せ。船の周りに人はいねェよ」
「ぁ…」
「…出せねェなら、噛んどけ」
「んぐ…」
スッと服の下から抜かれた手、そして背後から人差し指の関節が押し込まれた。ゾロがそういうのならそうなのだろうという安心感。そして口の中に突っ込まれた太い指関節、そんなの噛める訳がない、だって使う指なのに…と思うと、もうそれ以上歯を立てられなくなってしまった。そうとなるとただその骨ばった部分をれろれろと自然と舌先で撫でているだけになってしまう。口に押し込まれた指関節がどこか塩気さを感じてしまうのは鍛錬してきたからなのだろうかとか、汗を拭ったからなのだろうかと予想がついてしまう。なのにひょんな事からこんな私の一人情事に付き合わされるとか可哀想にも程がある。
「ん…ぁぐ…、ん、ん、…ぞ、ろお」
「なんだ?」
「っ、ぁ。だ、め…っ」
指先が止まらない、どこか息苦しい事も、与えられる体への刺激も、こんな痴態を見られているという全てから。こんなふうに逞しい胸板に寄りかかることなんてまずない、身を預け好きなように出来たらどれだけ幸せか。どこか汗臭さもあるのにも関わらず不快感はなかった、むしろそれすらが興奮剤になるかのように指先が動く。今世界一情けない姿だけれど世界で一番幸せだと思って勘違いしたい。あまりこういうことは慣れていはいない、けれど自分の身体の事は少し分かる。恥ずかしい、こんな風に指を動かしている時点でもう消え去りたいのにと思うのに止まらなかった。
「ん…ッ、…っ、ぞろ…、っ、ごめ…」
「謝るな、しつけェ」
「でも、…ッ、」
「他にどうすりゃいい、あいつら帰ってきても良いのか?」
必然的に耳元に聞こえるその声、多少の満足さはあるけれど正直まだ足りなくて、その急かしてくるような言葉にゆっくりと口を開いた。
「ゾロ…、その…指貸して…、き、きもちわるいかもしれないけど…ッ」
「悪かねェよ、ほら」
腹部と胸を這わせていた右手が目の前に広げられた。改めて見ればやはり大きくて節々がしっかりとする指を兼ね備えた逞しい指、そして分厚い手の丘とマメの出来ては潰れてを繰り返したような手だった。それに対して欲をぶつけて良いものがと悩むのに、今の身体の状況はどうしようもなく求めていた。ちっぽけなプライドの薄皮を一枚一枚剥がされて、これでも女なんですけどという恥も全部曝け出すようでもあった。
「…っ、ゆび、入れて、ここ…」
「あー、濡れてんな」
「ッ…しょうがないの…っん!」
「こうか?」
「っ、…そ、お…っ、あ、あぁ、…」
背後から回された腕、そしてその腕、手を導くように自身のショーツの中へとご案内。硬い手に手を添えての密やかな共同作業、気持ちよくなれる割れ目を指先で教える。へぇ、くらいのようなものなのか、そもそもこの行為すら本気で分かってないんじゃないかと思う朴念仁は、先程まで自身で触っていた突起を意図せず擦る。何気なしのその刺激にすら声をあげたのにもゾロはおそらく気付いてはいないのかもしれない。
ぬるっと入り込む中指はまた感じたことのない感覚。そしてゾロの左手は背後から胸へと戻りまさぐり始める。もはや私の両手はゾロの太ももを撫でたり、腕を触ったりと忙しない。けれど彷徨うかのように触れる場所はどこもかしこも男の身体で、そして密かに想いを抱いていたような相手でもある。そう思うともう後悔よりも先に湧き上がる熱の方がきてしまう。中なんて探るような手つきなのに無性に駆り立てられてしまう。こんな形で…、と思うのにもう止まらなくなってしまっていた。何度も抜き差しをされたらと思うと息が弾み始めてしまうし、それどころかそれ以上の存在の雄めいた部分で貫かれたりしたらと思うと何も考えられなくなりそうであった。
「ん、あ…っ」
「逃げるな」
「ッ、あぁ…、っそういう…つもり、じゃ」
あぐらをかいた脚の間に収まる私の身体。一応は指示通りに片胸を触られつつ、もう片方は蜜壺の中に太い指は埋まっている。ゆっくり動かしてというはしたないお願いを通りに柔らかな場所を探るように動き出して、両手で口元を押さえていた。
「っ……、ぁ」
「おい、…増やすぞ」
「ぇ…っ…ぁ…っ」
ずるっと一度引き抜かれる中指、そして薬指まで再度ズブズブと埋まっていく。自身の指とゾロの指、どう考えても長さも太さも違う。節々までお腹の中で感じ取りそうなくらいにその場所に神経を尖らせてしまう。そして必然的に指の根本は先程まで指先で嬲っていた場所が自然の当たってしまった。
「ッ、ぞろぉ…っ、あ…、だ、め…っ」
「なんでそうなる、こうしろっていったじゃねェか」
「…ぅ、むりぃ…ゾロにされてる…と思うと、ぁ…」
「てめェは」
「ぁ、あ…っ」
太い逞しいゾロの指を二本下の方で味わうとか、下手な男のブツよりも太くなっている可能性すらある。あぁ、昔居たなぁ…、口だけは上手なのにあちらの方は同情してしまった男、と微かに頭に過った。おずおずと私が伝えたマッサージみたいにしてなんていう指示通りの指先、希望に応えてくれてるのは分かる。だからもうその指だけでの質量とほぐしていくようなその指に合わせて身を悶えて良い場所へともっていこうするだけ。後先考え知らずの行為、巻き込まれたゾロが何を今考えているかは分からずもう背後から与えられる手や指に身を任せるだけになっている。ゾロと体重を預けきっていて、ゾロが背後にいなければくたりと床の上を這いずりまわっていそうだと思った。そして薄ぼんやりと自慰というよりも単なる前戯に成り果てていた事に気付いた。
「っ、い…っあ、…」
「…いてェか?」
「ちが…ぅ…っ、そのままぁ…ぁ、」
指を止めそうになったゾロに懇願してしまうし、あれだけ手で声を我慢したくせに半泣きになりつつ腰を必死に擦り付けた。指か腰が動く度にぬぷぬぷと湿り気しかしない音が船に響くのが申し訳ないけれど、一つの高みへと到達しないと満足しない身体でごめんなさいと謝罪ばかりだった。そして隠せなくなった欲情を曝け出して言葉にならないような締め殺しそうな鳴き声をあげた。
「おい」
「……っ、ん…、ぅ…ごめん、なさい。指汚くしちゃった…」
「何も汚くねェだろ」
「ぞろも…そういう事言えるんだ…」
二本の指が引き抜かれる瞬間まで名残惜しそうな声を出してしまう自分自身に自嘲してしまった。抜かれてもなお残っているゾロの指の感覚、抜かれた僅かな空洞さが寂しく思えてしまう。乱れた服、特に下半身なんてもう情事後甚だしい。まだ感覚が残るお腹の中に、辛うじて足首に丸まるショーツは愛液で湿っている。あ、ゾロの服まで濡らしちゃっていたらどうしようという不安感に襲われつつ、まだグッタリと身を任せて息を整える事しか出来なかった。浅くなっていた呼吸も正常なリズムへと落ち着こうと少し深呼吸をした。
あぁ、やってしまった。いや、うん…私だけだけれどと思っていれば身体の火照りが少しずつ鎮火していく。何とも好き勝手な身体だと思うけれどある意味な生理現象だ。ごめん、ゾロ忘れてと笑ってで済ませて良いじゃないかとはいかないけれど、同じ後悔ならシて後悔かなというどこか楽観的な考えに行き着く事に至ったのは海賊だからかどうか。
浮いたブラジャー、歪んでないかなと思いつつとめようと身を動かした時であった。冷静になってきた頭、そしてふと気付く自身の腰から尻に当たる硬い場所。人体って硬い部分ありましたっけ?と頭の中に疑問が浮かび始める。
「…ゾロ、勃ってる?」
「そりゃな」
「え、ゾロって勃つんだ…」
「てめェはどういう認識してんだ」
「絶対勃たない男…?」
「…人の身体使って善がってる好む女いりゃ正常な反応だろうが」
「ぇ…」
「クソコックの料理が美味いと喜んで、でも最後はやっぱコレだと酒抱えて呑む癖におれより弱っちぃ奴が善がってりゃ勃つ」
「ぅ…、ぇ、…」
「今夜見張りだから三杯で我慢しとくとほざいて、いやこれ度数高いと泥酔してやっぱ変わってくれという奴が善がってりゃ勃つな」
「い、や、…」
ゾロの顎が背後から肩に乗せられる。それだけでビクッと反射的に身体が反応してしまった。それに対して喉を鳴らすような低い笑いが聞こえてもう冷めていった筈の熱が全身に溢れそうになってしまう。いや、絶対勘違い、というかお世辞、私が気まずくならないようにというゾロの配慮だと思う頭にしかならなかった。
「耳赤けェな」
「ふぁ…!ぁ…ちょ…」
はむ、と唇で耳朶を挟まれて間抜けな声を上げてしまった。するとどこか悪戯っ子のような笑いが聞こえてきて、思わずその顔見たいとばかりに振り向けば、くしゃりと目を細めて笑った後の表情が残っていた。そしてその目と目があった。揺れる度に光るピアスも鋭い眼光も全部捉えたかったという私の願望が目の前にあった。あぁ無理だ、勘違いさせないでほしいとグッと口を真一文字に結ぶ。
「入れる」
「へ…、」
「ヤる」
「ま、…まって…ぁ…、」
性急に直そうとしていた胸元に両手が回される。先程の私の指示とは違って、意識的に快感を与えるかのように動き出す指先がこよりを作るかのように先端を柔らかく擦り合わされてしまう。まってゾロまだ頭の整理が出来ていないんですけど、と思うのに関わらずに熱を孕んだ息を吐いてしまった。内在する意識を煽られるように顔は火を噴きそうな程に熱くなる。少し背中を仰け反れば揶揄うかのように指先で撫でられてしまった。
「………。帰ってくるな」
「うそ」
「うそじゃねェ、走ってやがる。…面倒ごと持ち込んだか」
「あ」
渋々胸から離れる手。呆れるくらいに乱れ切っていた部屋の中、一瞬で高まりそうな熱があった体を整えて、アレコレ拭いて処理をしたら多分時間的猶予が少ない事は確かだ。場合によっては戦闘準備だろうか。
「明日は島に行く」
「え、」
「絶対だ」
ごちそうさん、と耳元で言い放ったゾロが私の身体を支えつつ立ち上がるので必然的に私もその場に立たされた。そして緑色の髪をかきながら部屋を後にするゾロの広い背中を眺めていたけれど振り向いてはくれなかった。ポツンと残された私、床には湿り気ある場所があった。
こ、これは、とりあえず聞かれたら水こぼした事にしなければいけないだろうし、えっと…下着は変えて…、あ、でもTシャツは変えられないか…だとか忙しない頭の中。ふと壁にかかっていた鏡を見ればものの見事に何かがあった後ような顔の火照りと崩れ具合と乱れきった髪の姿の自分が居た。再度一連の出来事が頭の中を駆け抜けていった。明日…、え、明日って言った?え、どういう事なのだろうかと答えを見つけようとしても一つしか出てこない。
「ぇぇ…、もう…っど、どうしよう」
完璧に処理落ちした頭、完全燃焼を果たしたつもりだった。それなのに期待が拭えない、先に見える一本道を踏み出す勇気はまだない。ただ佇んで両手で顔を覆い隠したまま猶予の少ない数分、ずっとその意味を考えたかった。