迷いもなく、中指、起立

 閉められた扉、どこか年季が入りかけのその扉は重厚感があるように低く響いた。数分前までは、ほらあっちみて景色最高だと口を回していた筈なのにだ。海岸線に並ぶ家々はあえてそうしていないのにも関わらず、島外の人間へ喜びを与えるかのように華やかで観光の名所になっていた。澄み切った青い空が映えるようなその色彩の街並みに感動を得た筈。見てみてゾロ〜とはしゃいだくせに、この部屋に近づくに連れてどこか口が重くなり始めていた。

「ね…」

 ゾロが先頭で部屋に着いたとか感動もんじゃない?一本通路だったけどもとか間を繋ぐような台詞くらいあるのにも何も出てこなかった。ゾロが昨日ヤるって言った、入れるって言った、内容が何であれ言った事は覆さないような男だって知っている。現に昨夜、月夜を肴にして寝酒を頂いていたら明日が辛くなっても知らねェぞという妖しい忠告を受けたくらいであった。私にしてみれば、その時の一瞬の気の迷いであったり、私への気遣いくらいとして受け流そうと頭の一部ではそう思っていた。けれど今日も今日とてゾロは致す気満々だという事が先程分かってしまった。
 そこそこ賑やかなその島の土地を踏みしめた。共に散歩と降り立ったゾロと並び歩きつつ、昨日先遣隊のような面々から聞いた情報を話題に話をして、どこかのらりくらりと誤魔化すかのように喋っていた。そんな私の小さな気持ち…、いや膨大すぎる想いを抱えているけれど今更どうこうしたい気持ちではなかった。そりゃ、逞ましく勇ましいゾロさんを一人で慰めつつの時に脳内に出演させていたけれどだ。こちらにも今更という羞恥というものがあって、どこか期待しつつも狼狽えたくなる気持ちだって持ち合わせている。
 ただ、逃げは終わったか?と見透かされるように言われてしまえば、私のここまでの会話があまりにも上っ面しか捉えてない会話になってしまった。そんなゾロに一瞬にして塗り替えられてしまったその空気、もう流れるようにこの部屋に辿り着いたのだ。
 いきなり息も絶え絶えになってしまったのは、ゾロがキスを知っていた事。私が多少の拗れを持ち合わせているせいで、ゾロがキスを知っている事自体に何かショックを覚えてしまった。そりゃ思い返せば、訪れた島々ではガルチューなる挨拶をするような島だってあって、そのように一つの挨拶くらいにしているような土地だってあった。あぁ、これは挨拶かと理解しようとしたけれど、やはりこの場面でゾロがキスをしてくるという時点で胸が締め付けられてしまったのだ。

「口ん中切った」
「でしょうね…」

 何しろ強引だったから、と言うと何か負けたような気がしてしまった。親指で雑に拭う口の端、部屋に入った瞬間から半分以上力任せで扉に押し付けられて、歯が少しぶつかり合って、そして合わさる唇からはじんわりと鉄の味。柔らかい部分だと思いつつも味覚が拾ってくる情報は甘さのカケラもない。ゾロはよく分かってはないんだと思うけれど、欲って怖いと思うのは本能まかせだろうが、自然と固くした舌先が触れ合うという事だった。噛み付くようなその口付け、ゾロにとっては傷の舐め合いでもしろっていう事に入るのだろうか、それにしたら度がすぎる。
 緊張感は私の心臓の位置を変えてくれたのかと思うほどに耳元でバクバクと脈をたてる。そんなけたたましい耳元には、ゾロの指が無遠慮に触れてきて次第に熱を帯び始める。これ絶対無意識、じゃないと許さないと思う私の心つゆ知らず、その大きな手は収まり所が良かったのか耳から後頭部にかけて分厚い手を添えたまま動かなくなってしまった。けれど耳にかかった親指は何度も耳を摩り、キスをしながらのその刺激は甘ったるさとして認識可能だった。あぁもうゾロのくせにと、舌先で口内を探る質量ある舌先を押し出した。

「…ここ弱ェのか」
「っ、他人に触れられるとこじゃない、し」
「へぇ」

 解放と同時に口を抑える。何しろ離された唇が過度の刺激に反応したかのように痺れている気がしてしまった。へぇ、と言う返事は何故かいつもの気のない返事のようには聞こえはしなかった。揺れる事のない体躯、その目付きには獰猛さがあってその目をさせているというのが紛れもなく私自身だという事を認識をしてしまったのだ。さっきも息が止まると言えば、鍛え方が足りねェと情緒のへったくれもない言葉を吐いたのにも関わらず、もう一度二度と触れ合ってしまえば、別の細胞に生まれ変わる勢いになっていく。身体の中から新たな火種を生み出すような知らない感覚はただただ身を固くしてしまう。耳に触れる指に目を細め、首をすくめてしまえば、ゾロは口角を上げていた。

「ぞ、ろ…?」
「悪くねェ」
「なにが…」

 私の質問は答えてはくれない。何しろ私の両耳を指先で触りながらのキスに入り込んでしまったからだった。耳朶を親指で押さえてみたり、折りたたんでみたり興味深げな気ままな愛撫、ゾロそれ愛撫の一つに入ってるという事なんて知っていないんでしょう。自然と鼻にかかった息が抜けて、合わさる唇の間から絶え絶えに空気を吸う。混じり合う体液はもう血の味は薄れていた。お願い、両耳固定はやめてくれとばかりに目の前の黒い生地に手を伸ばす。女の性感の在りどころなど知ってもいない筈の口に翻弄されてしまっていた。必死に、ん、の一言と荒い息だけで反抗しているのにゾロは気付いてもくれないらしい。
 これでも私には経験値がそれでもある、何しろ人間であるし、欲求の一つでもあるって事を子どもでもないから知っている。ただし、普通の男に対してだ。キスなんてそう挨拶程度でさ、そう男女の気分を高めるようなそんなもんじゃん。むしろ一晩の相手やらに深く口付けしまくる男なんて本気で無理、ヤるより無理だと思うくらい。そして手を出した男なんて、胸やら尻やらにすぐ手を伸ばしてさ、ある種欲求通りの求め方で何も不都合はなかった。
 それなのにこの男は訳が分からない、もう良いのにと思うくらいに確実に私の息の根を止めにかかってきている。絶対この男の性的な知識なんてアリ程度のもんじゃん、と嘆きつつ私には服を握る以外に手立てがなかった。気持ちの雪崩れ込みのような口付けなど記憶を辿りたくても遡り不可能、もしや今なのではと勘違いをしまいそうでならない。覚えのある疼きを身体に宿していて、今にも引き摺り出されてクタクタに痛めつけて欲しい願望。
 でも、とりあえずゾロは息をするって事をもう少し考えてほしいの、ずっとずっと忍ばしていた気持ちを持っていた私にそんな事したらダメだって。ゾロからの長ったらしいキスや耳弄りを何度もされたら、ぐずぐずな顔になってしまっているのが分かってしまう。だから時折目が合うだけでも目の横から溢れそうになるものだってある。

「ンな顔しようが、止められねェ」
「ど、」

 どんな顔をしてるって聞こうとしたのに、話すらさせてくれないのはズルい。耳朶を親指で撫で、形を確かめる様な指の動き、いつもがっしりと刀を握っている逞ましい手は手加減を知りつつあるのが分かる。
 心臓に悪いから離れてほしい、離れてほしくない相反する気持ちが自分自身の中から全身に溢れ出してしまいそうで必死に縋り付くだけ。掴む指先、その先の興奮を伴っている熱い体温がやけに生々しい。他の男なら躊躇なく手を伸ばして胸板を余裕に触るのに、ゾロを相手にしているだけで手に宿すのは迷いであった。熱の上がった耳も顔までも紅潮しているのが自身でも分かってしまうほどに、指先一つで息を乱して口内へと息を漏らした。

「わ…、ぞろ」
「さっきからなんだこの手は」
「し、知らないって…その、手の置き場が」
「置いときゃ良いだろ」
「ぅ、ん…」

 何言ってんだてめェと見上げた顔に書いてある。だから私の気持ちがね、あ、分かってない、分かってないでしょと問いかけばかりだ。置いておけば、で置かされた場所が胸元で、無条件に触れてはいけないような気がしてしまうのは私の中に積み重ねてきたものがあるからだろうか。私がしがみつく様に乱してしまった胸元に捨て身の様に預けるにはまだ怖い。肩の方から一刀両断とばかりに胸元に一筋に入った大きな傷跡が指の皮膚を通して伝わってきて、引こうとする手は上から大きな手で押さえつけられた。

「逃げんな」
「っ、もうわけが、…やだ、ごめ…」
「嫌か?」
「そういう事じゃない、もう…なんか、お、おかしくなりそうで…怖い…っ」
「怖かねェだろうが、何年過ごしたと思ってんだ」
「っ、ん…」

 部屋に入ってだけのその空間、外からは日中の賑わいのような喧騒が聞こえるのにあまりにもいつもと違う雰囲気にのまれていた。散々昨日ゾロにあれだけの痴態、醜態を見せたというのに、まだ今までの行為なんて序盤も序盤すぎるのは理解しているのにもう溶かされきっていた。
 触れられる場所、片っ端から神経を尖っているせいで全てにおいて昨日の声に近い息を漏らしてしまうのだ。これ緩やかに締め殺しにきている、実はゾロ分かってるんじゃないかと思う、じゃないと納得出来ない。勝手に永遠に感じてるのかもしれない、けれど私にとってはもうそう感じるほどにゾロの不器用な手つき一つ、視線一つに踊らされてしまう。
 大きな傷は当然ずっと残る訳で、胸板に置いた手のひらから伝わる成熟瘢痕、僅かに薄くなったその部分の皮膚からはすぐに筋板の気配を感じ取ってしまう。この男に対して傷の過去を聞く様なヤボな事はした事はない、けれどどう考えても致命傷であった事は想像がついてしまうのだ。嫌だ、居なくならないで、こんな稼業なくせにあまりにも怯えが過ぎてしまって、無性にこの胸板は恐れがある。くっきりと隆起した大胸筋、そこから続く腹筋やらはやたら自己主張が強い。ゾロが己の野望の為に鍛えているのは知っている、そのストイックさに今触れてしまっていた。
 耳に触れる手つきが甘く柔らかくなるたびに、ゾロが私の反応を吸収していくかのようでならない。思わず睨めば耳朶を引っ張られてしまって、胸板に手を当てつつの私はビクッとしてしまった。そしてどこかその反応が面白かったのだろう、あろう事か後頭部に回った手のひらがまた私を狂わせ始める。

「ちょ、…っ!まっ…て…」
「うるせェな」
「ひど…っ、ちょ…」

 息がかかったと同時に視界を遮ったのは筋の通った喉元とそして時折上下する喉仏で、指先で耳朶を跳ねたと思いきやそこに舌を這わせてくる男がいた。弱いって言った、お願いだともさっき懇願した。意地悪だ、これはどう考えても意地悪でしょと置いた胸板を手で押してもビクともしなかった。湿っぽい感覚が広がり、敏感になっていたらしい耳は口先で弄ばれていた。真っ白になりつつある頭、やだって何度も言っているのにやめてくれず、耳からは街の喧騒なんて消え去って舌先と時折こもったような水音しか聞こえなくなってしまった。水遊びにしては悪戯が過ぎる、舌先の遊びに耐えられずに声を上がり、胸元から手を離して口を塞げばその手はあっという間に背後の扉に張り付けられてしまった。
 泥酔状態だってこんなにおかしくなってない、さらにさらにと引きずり出させようとしてるんじゃないかというほどに感覚に必死に次を求める様に厚い胸板の上に空いている手を這わす。ゾロのこのやたら耳を弄る手つきも、なんだこいつおもしれェ反応だなくらいの興味本位、探究心の一つくらいからくるしつこさだろう事なのは予想つく。けれどゾロに触れられているだけでも許容範囲は軽く突破してしまう私にはあまりにも甘く痛い毒でしかない。

「…昨日の終わりみてェな顔してたな」
「っうるさぃ…っ」

 耳元で囁かれた一言、昨日の終わりと言うならばゾロの手を借りて欲に達した時の顔になってしまう。雑な押し付けのようなキスから始まっただけの今、もう朽ちてる勢いになっている。耳の鼓膜を揺らす、悪くねェという低く響く声に腰が抜けそうになる事も知られたくない、もう早くトドメを刺してくれと願うのにやめてくれない舌先。服の一つ乱れがない私、ただそれなのにもう私の身体には変化が訪れていた。



 ぐっと持ち上げられたTシャツ、色気を今更に出そうとするのは恥ずかしくて、ヤる宣言されてるくせに上陸の際はいつものTシャツだった。草臥れてないだけマシ程度の服だ。まって、本気でここでやるのかという私の台詞、ゾロの身体越しに見えるあと数メートル先のベットにせめて行かせて欲しいという要望ですら却下されてしまった。はい、ほんの瞬間前まで、愛撫らしくなってきてどうしようと思っていたのにだ。

「…邪魔なもんだな」
「っ、言われなくても知ってる…っぁ…」
「その割には昨日触ってもらいてェ言ってたろ」
「…い、言わないでよ…っ」

 胸を抑える下着までもずり上げられて、昨日よりも乱雑に揉まれ形が変わるのが分かってしまう。主張激しい場所までも併せて弾かれる。触る事への躊躇のなさ、それは昨日覚えさせてしまったのだと思うと恥ずかしさを掻き立てられるもの以外はない。もっともっとと熱に浮かされ強請った、今も熱に浮かされてはいて、同じ様に何度も息を吐いた。胸の上に何重の皺を作ったTシャツ、丸見えになっているような脂肪部分が晒される。

「ぞろ…、」

 ゾロの顔なんて見れなくて顎を引いた。必然的に自身の身体の一部がゾロの手の中で形が変わる所を見てしまった。Tシャツが胸の上で丸まっての窮屈さ、そしてやたらその女の部分が強調されてしまって気になり始めてしまう。そういう行為をしようとしているのにゾロの欲を煽るのはどこか不本意で、こうして女な部分が分かる場所を触れられるのは手つきとかでなくて私のその考えが強くてどうしても申し訳なくなってしまう。女でありながら、ゾロに対しては女のように振る舞うことを私が嫌うのだ。

「ぬ、ぐ…この状態くるし…」
「だろうな」

 そうか、いつもするとなるともっと緩やかな服で色気を出そうとしていたからこんなキツい事はなかったんだという事を今更気付きながら、Tシャツを脱いだ。けれど脱いだは脱いだでいきなり防御力が下がり過ぎた面積が少ない下着、いつもなら一緒に取ってしまってるのに好意を寄せる男に対しては全てを見せることに躊躇があった。ただゾロもゾロで、そんな下着の一つつけていようがいまいがどうでも良いのかもしれなかった。
 本気で?って私は何度も言った。そして何度もうるせェとも言われた。扉に身体を預けつつ、外した腹部のボタン。外そうとしたら指先はもう私のものでないみたいに緊張していたらしく手間取ってしまい、その一瞬の間ももどかしいとばかりにゾロの手がそのボタンに手がかかった。最低限にズリ下げられたパンツが太腿で止まって、臍をなぞった手先が下腹部を通り昨日の同じ場所はと到達してしまって、反射的に太腿に力を入れた。

「で、昨日よりすげェ状態じゃねェか、どういう事だ」
「…っ、しょ、うがないでしょ…っあ…っ、あ、まって…」
「ここだろ」
「あ、…ッン、やだ…ぁ…っ」
「覚えた」

 ぐちゅ、と卑猥な音と共に手のひらが押し当てられる。恥骨の上からの手のひらでの圧迫、そして容赦なく差し込まれた指は最初っから二本分。腰が重力に従って落ちそうになるのを軽く抱えられてしまった。情感なんてあってないようなもんなのに、こうして私の身体の変化を捉えられるだけで全てを良しにしてしまいそうになってしまう。腰に回された腕は逞し過ぎてブレすらない。

「口あけろ」
「え、…っんん…っ!」

 惚けていた、ゾロの指示に素直に空けてしまった隙間から舌の侵入を許してしまった。触れ合う粘膜面からは体液がしとどに溢れて、合わさる唇の端から垂れていくのが分かってしまう。けれどお互いそんな事を気にしていない、いや私は特にだ。ゾロの右手の指を二本も飲み込んでいるからで、その状態なんて一人先にセックスさせられているくらいになってしまう。だから指太いんだって、ゾロ気付いてと願うのにそんな事はお構いなしに音がたつ。

「ん…ぐ…っ!」
「ハ、こりゃイイな」
「何が、…っん…」
「てめェがうるさくねェ…っ」
「ひど…っン、ぁ…」

 そりゃ口を塞がればそうでしょうよ、と言ってやりたかった。ただご満悦とばかりのどこか悪どい顔が僅かに空気を吸い込む時に見えてしまって言えなかっただけ、そうその表情に私が弱いだけ。時折じゅぽっと音を立てて抜き差しされる指に腰を揺らしそうになってしまうのを必死に抑えて、せめてとばかりに口の中に声を放つ。策略なしの性交渉なのにどこかもうゾロの無意識の手の内にいる事に今更気付いていた。くいっと曲げられた指関節に舌を噛みそうになってしまったし、ゾロの首に回す手にも力が入ってしまった。ビクビクと震えるように反応したくなくても偽装不可能、身体中で訴えてしまった。グチュグチュと馬鹿みたいに潤滑液を垂れ流している音をたてている私の身体の反応はゾロにとってはイイものであったらしい。暴れ始める指の腹が何度もサーモンピンク色の場所を刺激していけば、下腹部からの欲が全身に回りに回ってもう何も考えられなくなってしまう。目の前には三連の金色のピアスが誘惑するかのように揺れ動く、そして手の先に触れるチクチクした緑色の髪も全てがこちらの防御線を突破してくる。
 あ、ショーツどうしようなんて事が頭によぎった。実は少しだけ想像していた、今日するって言ったゾロだからするんだって逃げもしたけど分かっていた。ただそんな曖昧な想像では、場所はベットの上で散らばる服はあるけれどきっとまた着れるほどだって思っていた。蓋を開ければ部屋入った瞬間から求められるその早急さに煽られてしまった。そんなに欲しがられていたと思うだけでもう抜け出し不可能だ。だから下着をどうするかも後で考えれば良いと思ってしまっている。恥ずかしながらも情欲の混ざった体液がゾロの手のひらまで濡らして、その指の動きで弾け飛んだ液が床に少し飛び散ってしまっていた。

「あ、…ん…、」
「もう無理だ」
「………、無理だよ」

 ここで食い違い。衣擦れの音と共に隠れていた部分、ゾロの部分、一段と雄な部分が露わになる。いくらようにも表し可能なその部位を目の前にして頭を抱えたくなった。知ってた、昨日お尻に腰に当たっていた硬い部分の事は理解していた。粗末なモンじゃないって分かっていた筈だけれど目の前に露わになる発情した凶暴なものに思わず唾を飲み込んだ。

「言ったろ、入れる」
「っ、なら、せめて……っ!」

 欲に塗れたゾロの視線、そんな目で見ないでくれという懇願。ベットに行きたいって散々言ったのに良しとしてくれない男の手が私の腰に触れる。

「…っ、ゾロ!その場所…っていうかそういう知識ないでしょ…!?だからせめて私のペースで…」
「虫や動物が交尾してんのは見た事ある」
「あっ、やめ…、そのうっすい知識で試みようとすんな…っ」

 淡々と震え上がるような事を言い放つガタイの良過ぎる男、ねぇゾロ今とんでもない発言かましてるの分かっていないでしょうと焦りが入る。そう、だって私なんて軽くパニックになっている。緩んだ服、ぬっと出されたのは割れた腹部にビッタリ張り付く部分。熟したそり返るような隆起物、そこから視線を上げれば、もう今にも喰らい尽くすかという強い表情であった。無駄なほどの名刀を持つゾロの放った返答は衝撃的だった。そんなフワッフワな雲を掴むかのような知識のまま、受け入れないとならない私の身になってくれと泣きたくなる。初めてでも何でもない、なのに恐怖だとかどういう状況なのだと自身でも分からない。ただ触れさせられた雄部分はあまりに硬くてこんな所まで鍛えられましたっけ?と質問したくなるくらいに凹凸の激しい雄な部分は人間の部位とは思えなかった。

「あっちむけ」
「まって!ほんと…っん…、あ、ダメだったら…」
「無理だ、入れてェ」
「っぁ…、違うって言ったら…やめてって…」
「あぁ」

 ここにきてバカな会話だと思った。けれど死ぬよりマシ、手違いで違う穴とか絶対に死ぬ、空気ぶっ壊れの会話もゾロは気にする事はない。ただぬるぬると濡れそぼっている場所を先っぽで撫でられて、塞がられていない唇からは息が漏れた。これ、ゾロへの性教育しなきゃダメなやつだと思いつつ、湿り気帯びた指を有する大きな手が腰にかかったと同時であった。

「っ!…っあぁ…ッ、んぐ!…ばか…ッ!あ…っ」

 貫かれた瞬間に脳天まで届きそうな刺激が身体に走った。身体の中の一番真ん中まで一直線、知らない体積が一気に入り込んで身体が文字通りに跳ねた。ぬるぬると狙いでも定めていたかというような尖端での撫で方からの一突きあった。予告なしのその大きな刺激は全ての経験を真っさらに塗り替えられてしまった。私の馬鹿、なんでゆっくりで、とか注文言ってないんだろうって言い忘れを後悔。奥に入れられたまま、扉に縋り付くように必死に身体を保とうとしていた。入れられているだけなのにどこか逃げ出そうとして全身で悲鳴をあげる。じんわり滲んでいた汗が、今の一突きが呼び水となってブワッと吹き出していくのが分かった。

「あ、…っぞろ…っやだ…ぁっ!こんな、…っ知らない…初めてに、なっちゃう…っ」
「ッ、ならそうしてやる」
「あぁぁ…っ!まっ…て、ン…ぁ…」

 グチュっと僅かな動きだけで響く音、みちみちと締め付けてしまっているのが分かってしまった。きっと私は自身で思う以上に理解していなかった。ゾロの手が触れてくる身体全てが私のツボに入る。
 辿々しかったのは、一、二回の抜き出しの動きだけ、ただそれも馴染み合うように動いただけと言われればそれだけだった。貫かれた身体、ギリギリまで抜かれてゆっくりとの注文通りに入りこむ雄、先程よりも浮き上がっていた血管までを感じ取ろうとしてしまう。

「あぁ……っ!まっ、…」
「てめェの待ては信用なんねェ…っ」
「ン…っ、も、…ぁ…あ、」

 突き出した臀部、腰からの広がる部分に手がかかる。確かにそうだった、動物的な繁殖活動はこうだった。ちっぽけなゾロの知識の中はこれが正常位なんだろうかと思った。愛欲が溢れるだけ溢れた場所を押し拡げて何度も腰を打ち付けてくるその刺激に必死に身体を保とうとする。水音混じりの身体の打ち付け音が連続的にこだまする。しちゃってる、もう元になんて戻らないとわかっている、どうする気なの?という気持ちも全てが飛んでいく。女窟を限界まで抉られて、もう後戻り不可能だ。

「んぐ…っ!!んん…っ!」
「…分かってきた」
「ぁ…!っぐ…ぁ…っん、」

 何が分かったというのか、私の状況?それとも行為について?もうこんな刺激与えられ続けたら必然的に好きにして欲しいという意識にしかならない。執拗に覚え込ませるかのように進む快楽への道筋は後戻り出来ない。身体を蝕む欲望、今更ひと月の周期を考えつつ、もう止まれない。ゾロ三刀流から四刀流に変更してくれて構わないからと思うくらいに、もうこれでは平気だと思っている日ですらバランス崩してきそうな繁殖行為にしか思えない。

「い、い……っぅ、も、…出して…っ」
「もったいねェ」
「ッ、あぁ…っ!…は、…っぞ、ろぉ…!」

 太い杭でも打ち付けられているかのような感覚、ゾロによって細胞全てが上書きされてしまった身体。身を捩っても何をしても、追い詰められて奥を嬲られる様に当てられる。

「あぁ…!おく…っ、や、…」
「お前、いつもこんな事してたのか」
「…ッ、して、な……」

 押し潰されそうな性欲、なんで昨日までの私はゾロの事を無欲の人間だと思っていたんだろうか。そりゃこの身体で無意識のいやらしさは出していたけれど、それは私の持つ勝手な認識。でもゾロなんて性とは無縁の印象しかない。こんなにも女の中に欲を与えてくるくせに、どうやら私が見識違っていたらしい。今までを思い返しても、この行為はもっとラフなやつだった、掻き乱してくるような感情なんて持ち合わせないお楽しみのものだった。キャッキャはしゃいで、誘い誘われくらいの適当なもので、こんな身を削るような行為なんてしていないと言い切れてしまう。

「ぁ、あぁ…ッ!!」
「てめェに触れた野郎が何したかは知らねェ」
「ん…っ、あ、」
「…気分が悪ィ、まだ付き合え」
「ッ…あ…!ぁ…、ぞ、ろ…っ、もう…っ!」

 こちらの身体の状況お構いなしのその突き上げ行為。ごりごりと中を擦り上げるソレは、どこが良い所なんて知ってもいないくせに凶悪に出っ張った部分で根こそぎ全てを刺激をしてくるのだ。もしかして妬いていたりするの?と浮かんだけれど、そんなゾロに限ってと目を閉じた。そして達するつもりもなかったのにも関わらず身体が敏感になってしまっていて、無条件で頂上が見えてしまっていた。

「あぁ…っ!!んっ、ン…ぅぐ…ぁあ…イ…っ」
「ッ、」
「ぞ…、」

 達した、ねぇ分かって、身体の中心の震えが止まらない。なのに背後の男はまだ甘い仕打ちを止めることはしなかった。寧ろ気を良くしたかのようでもあった。

「ぁぁあ…!もう、もうイッてる…!からぁ…、ぞろ、もうやだ…ぁ…っ!」
「よく分からねェが、締め付けはイイな」
「ッ、ば、か……っあ、とまんな、…」
「まだだ」
「ん!む、り…っぁ、きゅーけぃ…っん!!ぁ、おかしく、なるん…だってぇ!!あ…ッ」
「構わねェよ」

 終わらない小刻みな収縮、敏感になっている内壁に絶え間なくまだだと言われて強く刺激を与えられてしまえば、頭の中だっておかしくなってきてしまう。足がガクガクと崩れ落ちそうになる身体も腹側にまで回った手でがっしりと支えられた。何これ、おかしいんだって、怖い、いつもはこんな事になんてならない。
 髪を乱し、扉に手をついたまま達し続ける身体、痙攣する場所を絶えずじゅぷじゅぷと犯され続けられる事実があって、言葉にならない声で訴えていく。どうやら私は名刀の鞘になってしまって、僅かの隙間さえ与えずに包みこんでいた。そうして肉体の反応は止まる事を知らずに更に烈しさを増していく、無我夢中ってこうなんだろうと初めて知った。脳まで蕩けるようなその快感に、浮き出た汗を拭う事も忘れてしまう。そんな飾る事もない喘ぎ声はきっとこの扉の外まで聞こえてしまっているだろう、けれどそんな事なんてもう気遣いなんて出来なかった。

「ぞろ…っ!また…、する、…するからぁ…っ」
「あぁ、」
「だ、から……っ、なかで、い、…っ!もう…ん、なか、ほし…ぃ…!」
「ッ、てめェな…っ」

 あぁ、ゾロも何をしたらいけないくらいは知識あるんだって薄靄の頭の中で思った。そんなゾロの一瞬の躊躇いの息遣いですら今の私の欲を煽る。
 無理だよ、こんなの終わって欲しいのに終わってほしくないとか、自分の中にあったあまりにも我儘な気持ちを口にしたらそう言ってしまっただけ。破れかぶれの心持ち、溢れた好意の終着点なんてどこに行き着くかなんて分からないくせに今はただ求めるだけのただの野生的行為に乱れるのみ。今にも浮遊しそうな身体、ばらばらに散らばりそうな身体を必死に原型留めているだけ、その代わりに痛切な叫び声はとめどなく溢れていく。

「あ、あ…っい……っ!ん!」
「…ッ」

 ズンッと奥に突かれたままに広がる感覚、骨盤を押さえたようなまま背後からの動きは突き上げた所で止まった。お腹の中で波打つものと、少し乱れたゾロの呼吸音が鼓膜を震わせてくる。肉路で必然的にしゃぶりあげてしまい、どこかまだまだ悶え苦しむように身体を捩れば結合したまま背中側から腹部を抱き直された。

「気分直った」
「…っん…、ぁ…そう、だろうね…ぁ、」
「あぁ、コレはなかなか悪くねェな。おい、こっち向け」
「ん…」

 グチュっと下腹部の結合部からは水音が響く、繋がったまま背後を向けば丁度あった唇に触れられて、その唇を唇で挟んだ。悔しいけど負けで充分だと思ってしまっている。お腹に回された広い手のひら、ゾロ知ってる?まだそこにゾロの入ってるんですけどと思いつつも絡む視線に黙らされたままでいたかった。くちゅくちゅと音を立てる口先、啄むような扱いをされる部分、そしてゾロの汗を背中に感じた。

「好き勝手に、…もう」
「ヤるっつったろ、諦めろ」
「っ、諦めてるって…、でも、そのゾロ…ベット連れていって…、横になりたい、」
「まだ抜きたくねェ」
「我儘…っ!……ぅ…、ね、…お願い、その、ベットの上で、もっとちゅぅしたい…し、あの…ぞろ?」
「……ベット上なら文句ねェんだな」
「…ぅん。…うん…?」

 必死に別の恥を偲んで私が出した精一杯のおねだりがゾロに効くかは不明だった。散々愛欲に塗れていたって、ソレとコレとは別で言っている瞬間から我に返りそうな意識があった。結局は色気うんぬんより可愛くなろう方が性に合わないのだ。けれどとりあえず受け入れてはもらえたらしくズルンと抜かれたやや鎮まった雄。一気に空白感が襲う身体の一部、そして抜かれた場所から溢れそうになる混ざり合った体液の気配に太腿に力を入れて閉じてしまった。

「ひゃ…、」
「…煽りやがって」
「はい…?」
「分からねェなら良い」

 ベット行きゃ良いんだな?という軽快さで体が宙に浮いた。私を抱きかかえる、もとい運ぶ最中に鬱陶しいとばかりに引き摺りそうな引っかかったままの衣類を室内に脱ぎ捨てながら、そして着地点はベットの上だった。

「ゾロくーん…?」
「なら言う通りに、ご教示願おうじゃねェか」
「へ、」

 嘘でしょう、嘘でいい、思いの外フワリと落とされたベットの上で目のやり場に困り左右に視線をやった。そしてまだ残っていた黒い着流しのように着ている服を脱ぎ捨てているゾロ、ようやく始めるかとばかりに私の腹の上に陣取っている。
 だからどこのどいつがコイツに欲がないと…と何度目の思いを抱えてる。ゾロから溢れ出す迸るような熱気が伝わるだけでお腹の中が疼き出す。

「とりあえずコレの外し方教えろ、引きちぎっても良いなら別だ」
「ッ…教える!教えるから」

 はい、もう口滑った。胸に残る下着に人差し指をかけられてゾクリと鳥肌がたつ。あ、これ本気なヤツだと気付いた、もう無理じゃん諦め肝心?どうしたら良い?と思うけれど、頭の中の選択肢は流れるままという選択取ってしまった。柔らかくなったかなぁくらいのものがまた張り詰めたように腹にくっついていた。そんな赤黒い先端に目を丸くしてから目の前の顔を睨んだ。その堂々たる姿に、この童貞野郎がと口悪く言いたいのに、どう考えてもブーメランとして私に刺さりそうで言えずに口を閉ざしたのだ。
 散々この宿屋に入る前に素敵だと言った外の景色はこの宿屋のベットの上からも眺望可能であった。そして夕日に照らされる景色は数時間後に見られたものだった。褐色の太陽の陽に照らされる街並みを見て綺麗だと思った、そして長居して良かったろ?とベットに横になりつつ不敵に笑うゾロ。もう身体起こせなくて、近くにあるゾロの耳を引っ張るくらいの反抗しかもう出来なくなっていた。