4

疲れてきたみたいやから、とケージに戻し自分達のおやつタイムがはじまる。

「白石」
「おん」
「今日、ありがとうな」
「どうしたん」
「欲しかった靴買えたし、ご飯は美味しかったし、イグアナと仲良くなってくれて嬉しかった」

へへ、と笑う姿にたまらなくなった。

「ありがとう、って言うんは俺の方や」
「白石?」
「俺の冗談なんかに付き合ってくれてデートまでしてくれて」

まあ、手繋がれへんくて残念やったけどな!

そう笑っていうと謙也は真顔になった。どなしたんやと聞こうとしたら謙也から聞かれる。

「冗談、やったんか?」
「え?」
「今日は初デートやなかったんか?」
「いや、俺はそのつもりやったけど…」

でも謙也は違うんやないのか、付き合うか言うたんも流れやなかったんか。
聞きたいのに怖くて聞けない。自分ってこんなに恋愛に臆病なのか。

「手は、繋ぐん恥ずかしいからずっと隠してたけど…他はほんまに嬉しかったんやで!靴かて一緒に選ぶん楽しかったし、白石が考えてくれたデートや思うと嬉しかったし、上手く言われへんけどでも!今日のデート、楽しみにしてたんや」

顔を真っ赤にさせて一気に話終えた謙也は気まずそうに目線をずらす。

「そんな言い方されたら、俺のこと好きみたいやん」

なるべく、付き合う時と同じように冗談に思ってもらえるように言う。



「みたい、やなくて好きやねん!」



さっき見つけた写真を思い出す。なんで何度も見返したってわかった?だってそれは自分が持っている謙也の写真と同じ状態だからだ。それが意味することはわかっているはずだ。なのに、もし違ったら、なんて逃げて。彼はこんなにも真っ直ぐなのに。

「…俺かて好きや」

「なんや、良かった」
俺の一方通行かと思ってた。そう小さく言うと机に両腕に突っ伏した。

「大事にするから」

頭をそっと撫でると、腕からひょこっと顔をだして笑った。

「俺も!大事にする!」



思っていたような初デートはできなかったけど、それでも一番欲しかった言葉を手にいれた。