MIDDLE
11
声帯を焼かれた小夜啼鳥
セロトニンが上げた悲鳴
終末のトランキライザー
箱舟に乗り損ねた四本足
痛いの痛いのおいでませ
健気な執着と傲慢な無垢
琴線を逆撫でする無花果
しゃばだばどぅびどぅば
針金の踊り子は劣化した
飛込み台から流星を見た
コロイド粒子と千切れ雲
羽ばたきはグレイノイズ
置き去りアドレッセンス
蝿の女王は首を吊られた
玲瓏な歌声は錆び付いた
もっともっと愉しんでよ
脳裏の氷層を引き剥がす
かつて私だったモノ達へ
無邪気さで蹴散らしたら
子猫のような目の殺人鬼
朽ちた王城で眠る騎士姫
硝子の迷宮から帰れない
ローゼン橋で待ち合わせ
カタコームに埋めた純潔
不機嫌なオフターゲット
オペロンと笛吹き男と朝
因果にまみれた幼虫の夢
あんたの鯨は赤いのか?
詭弁は死んでも治らない
三日後の夕方に目覚める
鞠躬如アンプロンプチュ
最前線インテルメッツォ
玉兎は雲下に期待しない
芳しい欲望を吸い上げる
全ては月だけが見ていた
引力さえも私達には無効
蜜蜂の祝福、胡蝶の祈念
二人の旅路と一人の回顧
穢なき白菫を埋めた昨日
侵食してよ、センチネル
十万光年先で待ちぼうけ
ディラックの海で溺れる
愛を語るなよ、化物め。
血みどろカーニヴァル!
ロスト・ソルフェージュ
乙女は毒婦の鏡像異性体
義足で踊るサンドリヨン
薔薇星雲はもう見えない
心臓を守る騎士はいない
お前が私を救えるものか
愛の単位は誰も知らない
錆び付いた体に口付けを
12
ランドルト環からの手招き
逃げ水を追い越して川流れ
夜な夜な人魚は鱗を剥いだ
「お前の嘘は甘すぎるよ」
活性酸素に沈んでバイバイ
無性生殖で増えるかぐや姫
ブラック・シープと白灯蛾
口が裂けるほどに言いたい
希望は門の前に捨ててきた
鐘楼の四隅には悪魔が住む
触れるたびに虚しいあなた
黄泉比良坂で逢いましょう
死人に口なし生人に耳なし
変幻自在のホワイトホール
深淵から差し伸べられた手
サテライトウイルスの愉悦
束の間の快楽で愛を誓って
飾り立てた恋心が熱を持つ
不確定性クインテッセンス
ブラディオンを追い掛けて
切り落とされた後肢が痛い
ノーブル・ローレルの枯死
凍てついた羽をあたためて
お嬢さん、奈落へようこそ
内臓を掻き混ぜる恋ゴコロ
無慈悲なセントラルドグマ
複製された永遠に嫌われる
羽化する前に終わっていた
死神はサイコロを振らない
憶えているのは悲哀と秘愛
ヘリオトロープの満ち欠け
堕ちた星座に永久をあげる
空っぽの棺を薔薇で満たす
逃げ出した主菜を追う遊戯
レッド・ローズ・ドリーム
カルヴァドスと輪紋と花婿
ホワイト・ムーン・ロマン
待雪草には死装束が映える
姦しい金魚草の首を絞めて
寝取られ男に苧環が生える
剥き出しの神経を撫で回す
黒鶫と白鳩の終わらない旅
リトル・レッド・ビースト
ピンク・シュガー・ハート
あなたに何も捧げられない
13
蠍の心臓は火星を呑み込んだ
その場しのぎのジュリエット
爪先立ちのプラトニックラブ
軋み始めたダンスパーティー
棄てて、踏み躙って、ハニー
翼を奪ってほしい天使の慟哭
失われた夜と逃げ出した新月
その目に映すのは黒山羊だけ
ショットガン・クローニング
トランスポゾンは逃げ出した
惨めなバタフライエフェクト
不調法ディヴェルティメント
拝啓、深海に沈んだ真珠貝へ
悠遠の乙女は撃ち落とされた
今宵はあなたとタンゴを踊る
百年前の約束を覚えている?
鉄線で縛り付けられた仙人草
終末に咲く睡蓮は美しかった
初心を改竄された雄兎の哀哭
識別不能ブラウニアンノイズ
銀河の果てには黄色の煉瓦道
世界の秘密はいつだって隣に
トライアングル・レセプター
昇華した蝋人形の行先知らず
14
中性子星に幽閉された黎明の子
撥条仕掛けの磁器人形は生焼け
足掻いて、愚図って、ダーリン
惑星Xから転がり落ちた御使い
トランスジェニック・ゴースト
エピジェネティック・ラヴァー
撹拌された空気は南極に届いた
灰になった貴方を小瓶に詰めて
星を数え終えた者だけが眠れる
貴方の心臓を貫く矢をつがえる
美の女神すらお前には敵わない
雨になった彗星が貴方へ落ちる
いくつ夜を越えたか忘れた烏瓜
ブラッディ・スノー・ホワイト
アリス・イン・エラーワールド
偶然からは何も生まれなかった
15
逆様の天蓋から零れ落ちた六連星
純情ぶっても生絹では物足りない
ライラックの陰にはあの子がいた
女神の髪を解いて素足を絡ませる
魔法の鏡が映すのは白雪姫の自傷
ビター・チョコレート・コスモス
虹のたもとの棺桶では聖女が眠る
息苦しいのはいつだって僕のせい
グラスから溢れた欲望に口付ける
ひとりで羽ばたいたところで無駄
水先案内人は屋上から身を投げた
偽りの暁を追うお前など知らない
苦難も希望もなければただの空虚
吹き荒ぶ風のように貴方は泣いた
底なしの穴の泥濘で番犬と戯れる
玩具扱いで潰された気分はどう?
血色の沼で責め合う大馬鹿者たち
果ての墓坑で永劫の炎に焼かれる
枇杷へ成り果てた身に火雨が降る
外面だけの偽善で取り繕った悪意
裏切者の涙が凍るまで付き合おう
遅すぎた贖罪と悔悟は報われない
三段飛ばして大人の階段をのぼる
愛という重石を背負って溺死した
赤い糸で瞼を縫い止められた恋人
朝の祈りは煙のように消え失せる
周回遅れで追い越される私の人生
地に伏した針鼠は傷付け合うだけ
口に入らぬ果実など欲しくはない
抱擁を交わしても体は震えたまま
常春の楽園には永遠の淑女がいた
神よ、頭を垂れて願いを捧げ給え
徳を積み重ねたところで屑石以下
情熱が冷めたら飲み込んで欲しい
智恵の泉が溢れたら卵殻で掬って
守護天使に捨てられて悪魔と契約
正義の味方はいつでも踵が低い靴
清廉過ぎる街に熱帯魚は住めない
聖人たちは暇つぶしで遊星を食む
根源に至る病に罹患した食わせ者
天上の薔薇にお前では物足りない
血のように赤く骨のように白い夜
タイム・デザイア・トレードオフ
すべて狂気の沙汰だと言ってくれ