キャベツと玉ねぎのトマトスープA−Zoro−




振り返って鍋の中身を確認する。もうちょっと水分が出てからトマトを投入しよう。
そう考えている間にも背中にゾロの視線を感じる。

さっき、なにかのタイミングで一瞬ゾロが体を固くしたのがわかった。
そしてそれを、何食わぬ顔でやり過ごしてくれたのも。
それがなんだかすごく、嬉しかった。

つい一日前、大した前触れもなく、いろんなステップを一気に飛び越えて来られて、
びっくりした時の余韻が残っているからかも知れない。
でも、部屋に招き入れたのは私だから、責任というか、きっかけの半分は私が作っている。
相手が誰であれ、そういう行動を起こさせたとしても、被害者意識は持たないようにしないと。

「でもなあ…」
正直、びっくりしたし、信頼していたのに、という気持ちにもなった。

「なんだ?」
「あ、ごめん、ちょっと仕事のこと」

ゾロは勘が鋭い。
たぶん私が今なにかを誤魔化したことは伝わってしまうはずだ。
それでもやっぱり何も言わないでいてくれることが、今はすごくありがたい。


手を動かしながら、昨日の夕方のことを考える。

ローに図書館で抱きしめられて、オンコールが鳴るまでの短い時間、なんだかひどく安心した自分がいた。
それが、サボと比べてローをより好意的に感じていることの表れなのか、
単純にキスとハグの心理的効果の差なのか、いまの私には判断がつかない。

でも。
「支える相手」として見ていたローに、あの瞬間たぶん守られていた。
自分の中の感情の波から、確かに、守られていた。

もしかしたら誰とでも、守られることも、支えることも、対等に立つこともできるのかもしれない。

−もう、何を基準に選べばいいかわかんないな。
 そもそも選ばなきゃいけないのかな。
 まだ、選択を迫られている訳じゃないもんな。


いいか、なにかが決定的に動くまで、決めなくても。

急にすっきりした気持ちになって、また手元の現実に向き直る。



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