とても短い話
1000文字に満たない話、ネタなどを置いています。
名前変換はありません。

一緒に終わってくれる程普
タイトルのまんまです。終わってくれそうだよねっていう私利私欲の権化です。
会話文のみ。
「おぬし、また男を袖にしたそうだな」
「うっ。程普殿の耳にまで……」
「腰を据える気はないのか」
「自分にはどうもその手は不向きでして……。得物振るうのがよっぽど合ってます」
「そう生き急ぐこともあるまい。何がおぬしを縛り付けているのだ?」
「……そう見えますか」
「気づく者は気づいておる」
「細心の注意を払ってたんですけどねえ」
「却って不自然だったわ」
「今後の参考にします」
「いくら親類が居らぬと言って、おぬしの死を悼む者が居ないわけではないぞ。ゆめゆめ忘れてくれるな」
「わかってはいるんですけどね……。姫様にはほんとによくしてもらってますし。……でも多分、私には無理なんだと思います。家に入ったりするのは」
「何故そう思う」
「…………私、子が成せないんです」
「―――」
「前の戦で腹を斬られた折、今後の生活に支障をきたさない程度には治してもらったんですが、子は諦めろと大医に言われまして。だから恋愛とか結婚とかそっちは諦めてます」
「……そうか」
「あ、くれぐれも内緒でお願いしますよ?姫様なんかは聞いたら自分以上に傷つくでしょうし」
「言わぬと約そう。しかしそれでおぬしはよいのか」
「殿に拾われるまでは一人で生きてましたし、慣れてます。それに自分が子供産めなくても友人の子可愛がれてますから!」
「そうか」
「生き急ぐって程普殿は言いましたけど、自分にそんなつもりはないですよ。これでも拾われる以前よりかは伸び伸びしてる自覚ありますから。……ただ、だからと言うんでしょうか。殿や姫様、みんなに大切にされてる今が失いたくないので、その中で静かに終われたらこの上なく幸せかなーとは思うんです」
「おぬしにしては後ろ向きな発言だな」
「そう、なんですかね。自分でもよくわかりません。―――怒りました?」
「何故我輩が怒るのだ」
「いやなんか、若輩風情が何言ってるんだ!って怒るのかなと思いまして……」
「自身の命を軽んじ、他者の気持ちを踏み躙るような者であれば一喝していただろうが、おぬしは自分の命を粗末に扱うことも他者の気持ちを顧みぬこともせんだろう」
「前に無茶して姫様に大目玉食らいましたからね。流石に反省してます……」
「我輩より先に姫様が飛んでくるであろうな」
「それは勘弁願いたい……」
「しかし、―――そうか。おぬしがそのように考えていたとは思わなんだ」
「そんなに意外ですか?」
「余人と距離を置いているとはわかっていたが、それは単に人付き合いを厭う気性であるものと思っていた」
「逆ですよ逆。人と関わるのは好きですよ、中心に居ようとはならないだけで。みんなを遠目から見ながらひっそり逝けたらいいなーとは思いますが」
「―――ならば我輩も同道してやろう」
「え?」
「今の孫呉は若輩者らの手に委ねられた。我輩ら年長者はいずれ退かねばならん時が来よう」
「またまた……。程普殿に限ってそんなことないでしょう」
「人の命は永遠ではあるまい。一線を退いた後、おぬしと半生を過ごすというのも悪くないだろうな」
「……私、子を成せない女なんですよ」
「己が好いた女と居るのに、それ以外の理由など要らん」
「程普殿なら引く手数多なのになんで私なんかを……」
「おぬしだからこそ共にありたいと思うのだ」
「本気で言ってるんですか」
「この手の嘘は好かん」
「………………………………殿に三国を治めてもらったそのずっと後、一緒に終わってくれますか?」
「ああ」
(あなたとだから考えられた未来)
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