とても短い話
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笑わないと出られない部屋
相手:曹丕
何も考えずお読みください
「若は怪力乱神を語らずな方ですから信じないでしょうけど、この前森の中散策してたら蛮蛮と出くわしたんです。噂よりおっかなかったです。どれくらいおっかないかって言うと、大事にしてた壷を割ってしまった時の若くらいおっかなかったです」
「灸を据えてほしいと自ら言うとは殊勝な心がけだな」
「こ……攻撃した後に、い、言わないでくだ……さいよ……。痛い…………。ていうか蛮蛮の方は何も言わないんですね。意外」
「耳を貸す者を選んでいるだけだ。証左ばかり求めていては、いずれ彼の名族の一途を辿るであろう」
「さいですか。それで聞きますが、これ、どうします?」
「私に聞くな」
「えぇ……。自分でも対処無理なんですけど……。なんです?笑わないと出られない部屋って。何処の暇人が作ったんですか、こんな部屋」
「私の知り合いに暗愚は居ない。貴様のだろう」
「え、遠回しに自分悪口言われてます?にしてもなあ……。笑えってかなり無茶ぶりですよね。何を笑えばいいんだろ。あ、若の詩とか?姫に贈るのを見る度に結構辛いんですよね。堪えるのが。今思い出しても笑えそう」
「貴様、余程命が要らないようだな」
「違います違います!そういう意味じゃなくて!微笑ましいなーとか、なんかそういう感じの意味です!ほら、この曇りなき眼が人様の愛を嘲るように見えますか?」
「近づくな。邪魔だ」
「……若ってここ出る気あります?女捨てての渾身の笑いをなんでそんなばっさり切るんです?あれですか、若には却ってわかりづらかったとか、そういうのですか。うーんそれじゃ困ったな。田舎暮らしだった自分には若に通じるお笑いとかちょっと難易度高すぎて無理というか勘弁したいというか。てか、笑えばいいのなら若のいつものやつ見せてくださいよ」
「いつものとは何だ」
「ほら、あれですよ、あれ。勝利を確信した時とか、嫌いな政敵の弱点掴んだ時とか、敵が泣きながら助けを乞う時とか、司馬懿殿と何やら腹の探り合いしてる時とかに見せるとてつもなく底意地の悪い冷たい笑みですよ。ふっ、みたいな。って、なんで武器を構えるんですか―――ぎゃああああ!」
「無駄口を延々と回している暇があるなら手を打ってみせろ。使えん駄馬にくれてやる餌はない」
「餌ってもしかして給金のことですか!?ちょ、めちゃくちゃ困るんですけど!友人に立て替えてもらった賭博代まだ返せてないのに。え、えーっと、待ってください。今ものすんごく面白い話考えますから。あっ!布団が吹っ飛んだ!―――は、面白くないですよね知ってます知ってます。睨まないで怖い。でも聞いてくださいよ若。自分そんな面白い話なんか持ってないですよ。いつも誰かしらに顎で使われてることしか―――って、それで思い出した!この前、司馬懿殿の奥方に遣いを頼まれて邸宅の方お邪魔したんです。顔を見ればやれ凡愚そうな面だの言いながら自分の手足のように雑務を押し付けてくる司馬懿殿とは違って、奥方は優しくしてくれるんです。お手製の肉まん美味しいですし。っと、本題を戻して。それで顔を出した時に奥から嫡男の司馬師がやってきたんですね。礼儀正しい子だって聞いてたんで挨拶しに来たのかなーとか思ってたんですよ。こんにちはって言ったら、彼なんて言ったと思います?凡愚ですよ凡愚!!あろうことか父上の言ってた凡愚な馬とはっきり!酷いと思いませんか!奥方なんかあまりの衝撃に何も言えないでいましたし。そりゃ頭の方が弱い自覚はありますよ?ありますけども、そもそも司馬懿殿がおかしいくらいに頭良すぎるだけで、凡愚だの駄馬だの馬鹿にされるほどじゃないと思います!普通くらいの知能はありますよ!謝ることなく肉まんも欲しいとか言われちゃって。ええ、寛容な自分も流石にぷっつんきたんでね、ちゃんと言ってやりましたよ。それはもうがつんと。私は人間で馬じゃない、って!そしたら反省したのか黙っちゃって。子供相手に大人気ないかなとはほんのちょっぴり思わなかったこともなかったんですけど、でも大きくなるにつれて誰彼構わず凡愚だの駄馬だの言うような大人になってはいけないと心を鬼にしたんです。お詫びに昼ご飯振る舞われたんですけどこれがほんっっとうに美味しくて!―――って、あれ?なんでそっぽ向くんですか若?あっちになんかあるんで?」
「………………貴様にはつくづく呆れる」
「なんか自分やっちゃいました?あっ!扉、開いてますよ若!……あれ?でもなんで?笑わないと出られない部屋なんじゃなかったの?どう思います若」
「知らん。さっさと出ろ」
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