―――まただ。郵便受けの中から白い封筒が転がり落ちる。宛名も住所も記載されていない真っ白な封筒は分厚くて、かろうじて封がされてあるけど、今にもはち切れんばかりに膨らんでいた。手紙にしては重量感あるそれを、同じく重くなった気持ちで恐る恐る開封すれば、どさりと床一面に紙が散らばった。現像された数多の写真。そこに映るのは偲ぶようにして撮られた私自身。こっちはご飯を食べている自分。こっちは受講している自分。こっちは大学帰りに買い物している自分。映る場面こそ違うものの、共通して隠し撮りとしか思えない角度と気づいていない自分が居る。また、来た。講じた対策の数々で疲労しすぎて具体的な日付は覚えていないが、いつからかストーカーに付きまとわれるようになった。吐き出した溜息は図らずも震えて、視線を掠めた一枚の便箋に掠れた息が漏れた。おっかなびっくり手を伸ばし、広げる。吐き気が脳天を貫くほどにおびただしい文字が羅列してあった。曰く。

―――きみは頑張り屋だ。同じように溜め込みやすい性格でもある。俺が支えてあげたい、俺だけは理解しているから。

―――一人暮らしは何かと物入りだよね。それを自身で賄おうとするなんて、きみはやっぱり立派だな。でも、だからこそ自分をもっと大切にしてほしい。ああ、俺がそこに居ればきみのためにご飯を作ってあげられたのに。

―――彼氏がほしいだなんて、危なすぎるよ。世の男たちはきみが思うほど優しい奴らじゃないんだ。だけどそういう俺もきみから見れば危ない男には変わりない。でもこれだけは信じてほしい。俺は決してあいつらみたいにきみに危害を与えたりはしない。約束する。きみを守りたいだけなんだ。

―――きみは優しいな。今日も困ってる人を見捨てず助けた。きみはよく自分のことを優しくないなんて評するけど、俺はきみほど優しい女性を見たことないよ。自分に厳しいのだって裏を返せば他人の期待に応えられるように、だろう?俺はきみのそういうところを尊敬しているし、同時に自分に何かできることがあれば支えたいと思っているんだ。

―――きみは。

我慢の限界だった。最後まで読むことなく紙をくしゃくしゃに丸めて捨てる。腹の底を揺さぶるは強い怒りだった。正体不明の男はこうして隠し撮りを数多送り付け、下卑た欲を吐き出している。理解者だの何だの当たりの良い言葉を並べていることが、尚更不快感を煽った。ストーカーごときに理解された挙句心配されるなんて冗談じゃない。こんな奴の支えなんか、もっと要らない。ぐるぐるととぐろを巻く不快感に怒りが混ざり、全身は燃えるように熱くなる。深いため息をついて一言。

「……気味が悪い」





きみがわるい