明日の仕事がすこぶる嫌だ、と彼女が言った。割合いつも楽しそうとは言い難い顔で出勤する彼女だが、こうもはっきりと拒絶の言葉を吐くのは初めてだった。これは何かあったかと判断して、銃兎は「そうですか」と相槌を打った。
「それは困りましたね」
「困ってます。うわぁ嫌だ、すごい嫌だめちゃくちゃ嫌だ、あははは、笑っちゃうくらい嫌だ」
「重症じゃねぇか」
事態は思ったより深刻らしい。とは言え、明確に嫌な理由も休む理由もないようで、うだうだ言いながらも一応明日の支度に勤しんでいた。
「……では、帰ってきたら何かご褒美を差し上げます、というのはいかがですか?」
「それ絶っっ対、頻度めちゃくちゃ高くなっちゃいますよ。銃兎さんの負担になります」
「別段負担にはなりませんよ。それに、可愛い恋人が頑張る燃料になるのなら安いものでしょう」
「か、かわ……いい……?」
「何で疑問形なんですか」
「いや、可愛いか?と思って……」
「……ほう?」
なぜか苦笑いを浮かべた彼女に、自然と表情が消える。なるほど、自覚がないと来たか。
凍りつくような気配に気づいたのか、彼女が「な、なんて……」と逃げようとしているのを捕まえると、わざと耳元へ唇を寄せた。
「貴女は可愛いです。……判らねぇなら、俺が教えてやろうか」