※なぜか川遊びに来ています



「うわうわうわ〜! 川すっげー! 透明!」
 嬉しそうに騒ぎながら、道後は即座に靴と靴下を放り出して川へ入って行った。続けざまに飛び込んだカルルスと水遊びに興じている様子を眺め、万座は深くため息をついた。
「太子は行かないの?」
「行きませんよ。一六じゃあるまいし」
 問いかけるとそう返され、宇奈月は「そう……」と呟いた。
 それなら、一緒にここでのんびりしない?
 考えるのは簡単なのに、なぜか上手く聞けない。別段変な問いでもない、なのに、なぜ。
「太子、」
「――っ!?」
 突然、横から大量の水が飛んできて、万座をぐっしょりと濡らした。犯人は、どう考えても一人しかいない。
「あー……っと、ご、ごめん、太子」
「…………一六てめぇ!!」
 ギンっと眉を吊り上げ、万座はすぐさま腕を捲った。さっきの「一六じゃあるまいし」発言はどこへやら、物凄い早さで靴と靴下を放り投げ、ズボンの裾も捲る。あまり晒されることのない、真っ白な脛によく判らない混乱を覚えた。ちょっと、そんな大胆な。
 ――気づけば、反射的に万座の腕を掴んでいた。
「……は?」
 困惑した表情を浮かべる万座からすっと視線を逸らすと、傍にいた和倉の腕を掴んで引き寄せ、そのまま川の方へ投げた。
「……ほら、七緒で我慢してよ」
「は?」
 突如代理戦争に駆り出された和倉は、困惑と怒りが同居した声を出したが、宇奈月の顔を見てふうんと笑った。
「貸し一つな」
 宇奈月の返事を待たず、和倉は靴と靴下をきちんと脱いでから川へ入って行った。驚いたのは道後だ。思わぬ相手にあわあわしている。その隙に、和倉は思い切り沢山の水を両手で掬って道後へ浴びせた。
「ぶっ!」
「ほら、一六くんの番ですよ」
「そ、そんな! 七緒先輩に水かけるとか……」
「そうですか。太子くんとは水遊びするのに、僕とはしたくないんですか……」
「そ、そうじゃないです!」
 慌てふためく道後と、それを楽しんでいる和倉にほっと息をついていると、「……あの」と控えめな声がした。そう言えば腕を掴んだままだったと思い出し、不自然でない程度にゆっくりと離す。
「……あはは、ごめんね?」
「いえ、まあ……制服がこれ以上濡れなくて助かりましたけど」
「そう言ってもらえると助かるな」
「はあ……」
 一体何だったんだと言いたげな万座に曖昧に微笑んで、宇奈月はぽつりと零した。
「……なんだか、見せたくないなぁって思っちゃったんだよね」