いつも通りに鍵を開ければ、ぱたぱたと足音が近づいてくる。今日も今日とて道後の方が先に帰ってきていたようだ。
「七緒先輩っ、お帰りなさい!」
 この声もいつも通りだ。ただいま帰りました、そう言いながら揃えていた靴から目を上げる。
 途端に、ふわりとした白いフリルが揺れた。
「……ん?」
「……あーっ!?」
 ばっ!と両手をクロスさせて見せまいとするが、もう遅い。だって和倉はもう見てしまったのだから――真っ白なフリルつきのエプロン姿の道後を。
「……へぇ」
「ち、ちち違うんです! これはその、押し付けられて! でもでもでももらった以上一回も使わないで捨てるのってどうかなって思ったから、そのえっと、今一瞬使って捨てる気だったんです!」
 恐らく、外すより先にこちらへ駆けてきてしまったのだろう。間抜けだなぁとは思うけれど、その間抜けさのおかげでいいものが見られた。
「ふふっ、何だか新妻みたいですね」
「ににに新妻!?」
「ええ、……あなた、って呼んでみてください」
「ふぇっ!? そ、んなの……」
「難しいことではないでしょう? 何も呼び捨てしろと言っているわけではありませんし」
 ね?と首を傾げると、すっと手をなぞる。ぴくり、と肩が震えた。
「………………あ」
「はい」
「………………あ……な、た……」
「君でお願いします」
「へっ!?」
 流れるようにお姫様抱っこすると、そのまま寝室へ連れ込む。ベッドの上に放り出すと、エプロンの白さもフリルの可愛らしさも、何もかもが煽る為にあるようで、和倉は無意識のうちに喉を鳴らしていた。
「えっ、ちょ、ま、待ってください、」
「待ちません」
「ご、ごはん! 作ったんですけど!」
「あとでいただきます」
「えっと、えっと、えっと……」
「一六くんは、」
 ふっと目を伏せてから、ゆっくりと開く。瞳にわざとらしいほどの潤みを湛えて、眉を下げてみせれば、道後が言葉を失った。
「僕と今するのは嫌ですか……?」
「い……や……って言うか……まあ、………………嫌ではない、です……」
「ありがとうございます」
「っ!?」
 すす、と肩から背中を撫でると、腰元のリボンに手をかける。脱がせようとしているのか、と体を固くしたが、それに微笑んだ。
「そんな野蛮なことしませんよ」
「……なぁんだ……」
「このままで、いいですから」
「えっ」
 エプロンの前部分をほんの少しだけめくると、滑り込ませた手が内ももをゆっくりと這った。