01.プロローグ


場所は帝国学園。帝国学園サッカー部は、影山総帥の元に集められ明日に迫る練習試合について話を聞かされていた。

「対戦相手が決まった。明日は雷門中と練習試合を行う。」

突如決まった練習試合の対戦相手だが、聞いたことのない学校名に鬼道を含むサッカー部員は疑問符を浮かべた。…たった1人、その学校に覚えがあり、目的もおおよそ察してしまった少女だけは目を伏せていたが。しかしその謎は影山の一言ですぐに明かされた。

「先日、豪炎寺修也が雷門中に転校した」

「木戸川のエースストライカー、豪炎寺修也か…!」

「…つまり、豪炎寺のデータを集めるのが目的ですね」

驚きに声を上げた佐久間についで、鬼道が冷静に目的を述べた。影山は頷き、ヤツの実力を見極めよとだけ言ってその場は解散となり、グラウンドに出て練習が始まった。


人数分のスクイズとタオルを用意して、ベンチの脇に置く。取り出したのは愛用している藍色のノートパソコンで、膝に置きながら選手の様子を見つつデータやメモを打ち込んでいく。時折選手に声をかけてトラップやマークについて指示を出していく…。
帝国学園サッカー部の女子マネージャーである狐原焔はどこか浮かない表情…(といっても殆どの者からは変化が無いように見えているのだが)でマネージャーとしての業務をこなしていた。
そこに帝国サッカー部キャプテンである鬼道有人は、いつもとの小さな違和感を感じたのか彼女に声をかけた。

「どうかしたのか、焔。いつもより元気がない気がするぞ」

てっきり明日の練習試合について話したいことがあって来たのだろうと考えていた焔は、少々驚きながら鬼道に答えた。

「…大したことじゃないのよ。ただ明日の相手の雷門サッカー部、部員は足りてない上にしゅ…豪炎寺修也はサッカー部員ですらないみたいでね。データをとるのが難しいんじゃないかって。」

それを聞いた鬼道は一瞬目を丸くして驚くも、元気がなかった本当の原因とは違うだろう思い少し眉間に皺を寄せた。

「だったら奴をその気にさせるまでだ。
…それで、本当にそれがお前の元気がない理由か?」

「…本当に何でもないわ。知り合いが雷門にいた気がしたからどうしてるかなって思ってただけよ。」

そう目を伏せながら鬼道に答えた焔はどこか悲しげで、だがこれ以上何も答えてくれはしないだろうと判断した鬼道は無理はするなよとだけ声をかけて練習に戻った。
その背中を見送った焔は、口論して以来口をきいていない幼馴染である少年に思いを馳せる。

___彼がサッカーを辞めてから約1年…。サッカーをする彼がまた見られるかも、でも帝国の皆にあんなサッカーして欲しくない…

2つのチームを思う気持ちがせめぎあう焔。
翌日の対雷門戦から、彼女とそれを取り巻くサッカー少年達の運命が大きく変わろうとしている事など、帝国の"天才ゲームメイカー"と"鬼道有人のもう1つの頭脳"などと呼ばれている彼女等でさえ、誰も知らなかった