1. 審神者&補佐官就任一日目
ナマエと智之が政府に手紙を出してから一週間後、二人がこれから住むことになるであろう本丸の準備が整ったと政府から通知が届いた。
そして今日、二人の審神者の就任日である。
「準備が整いました。お二方、こちらへどうぞ。」
政府の方が扉の前へ立つように示す。
その扉はこれから二人が長いこと過ごす場所になるだろう、”本丸”だ。
『い、い、いいいいよいよだね!智之!』
ナマエはガチガチになりながら扉の前に立つ。
「緊張しすぎだろ…」
智之はため息をつくと目の前の扉へと手をかけた。
「いくぞ」
『…うん!』
「「いってらっしゃいませ」」
振り返ると政府の偉い人たちが手を振って送り出してくれた。
二人は色んなことが待ち受けているだろう期待や不安を胸に二人は本丸へと一歩を踏み出した。
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『ともゆきー!』
ナマエの声が本丸内に響く。
「..........なんだよ。」
段ボールを抱えて廊下を歩いてる智之が空を見上げた。
『これからここで過ごすと思うとわくわくするねー!』
「あぁ、そうだな。」
さっきまであれほど緊張していたのは嘘だったかのようにピンピンしている。
元気な奴だな、と内心思いながらナマエの様子を見ていた。
ナマエは嬉しそうに笑いながらくるくると回転しながら飛んでいた。喜びを体全体で表現しているのだろう。
『審神者の通知が来た時は一人でやっていけるか正直不安だったけど、智之がいるなら安心だわ、これからよろしくね!』
「あぁ」
智之は適当に返事をして段ボールを自室に運びこむ。
「おい、ナマエ。 お前もさっさと荷物を運ぶの手伝え。日が暮れるぞ。」
『はーい』
ナマエは短い返事をすると現世から持ってきた荷物を運び出した。
数時間後…。
『やっと終わったー!長かったよ!』
ナマエは仕事部屋にごろんと寝転がった。
「何が疲れただ。お前ほとんどサボってたじゃねぇか。」
『ぎくぅ!!!』
ナマエはうれしさのあまり、片づけそっちのけで本丸内の散策をしていたのだ。
『…本丸内がどうなってるか気になって…』
「…で、どうだった?」
『すっごく広かったよ!迷子になりそうなくらい!』
「審神者殿ー!補佐官殿ー!」
二人が他愛もない話をしていると、こんのすけがするんと入口の隙間から入ってきた。
「ん、こんのすけか、なんだ。」
「片づけの調子はいかがですか?」
「あぁ、もう大丈夫だ。」
「そうですか!では早速…」
こんのすけはどこからかいそいそと五振の刀をもってきた。
『これ…』
「お二方にはこれから初期刀となってもらう刀剣男士を選んでいただきます。…その前に」
と、こんのすけは言葉を不自然に切った。そしてナマエを見上げる。そしておずおずと口を開いた。
「あ、あの…補佐官殿…」
『ん?なぁに?』
「お召し物を…変えていただけないでしょうか…?」
『へっ…?』
間抜けな声がでた。
そう、現在のナマエの服装といえば虎柄のパンツとビキニというとんでもない恰好であった。
彼女の住んでいる星では現在の彼女の恰好は特に問題ないのだが地球の、いや、審神者の補佐官という立場となれば不自然極まりまい恰好である。
『い、嫌よ!!これは私の星の正装なのよ?!いわば一張羅!!折角初めて会う刀剣男士に変な恰好でまえにでられないわ!!!!!!』
ナマエは必至の抵抗を試みる。
「…そうだな。そういえばお前のその恰好は不自然だな。」
「審神者殿!?今お気づきで!!!??」
こんのすけがつっこみをいれる。
「い、いや、いつもあの恰好だから今朝もこれで良しと思ってしまった。…しかし、慣れとは、恐ろしいものだな。…てことで、ナマエ。さっさと着替えろ。」
『!!?? と、と、と、智之まで!!』
「何が何でも着替えろ。いいな? そもそも、昔の日本人はそんなに肌を出すことはないからな。お前を見たら失神するやつが出てくるかもしれないだろ。」
智之が少し強い口調で言う。すると、ナマエが観念したかのようにしぶしぶ頷いた。
仲が良い家族のような存在の智之だが、これからは審神者と補佐官という立場になる。言い換えればナマエの上司になる存在の命令ともなれば頷くほかなかった。
「あ、それとだな。」
『?』
「これから刀剣男士を迎え入れるとき、お前がインベーダーであるのを隠しておくこと。つまり飛行も電撃も禁止だからな。」
『え、ど、どうして!!??政府から何も言われてないじゃない!!』
「万が一のためだ。もしかしたら、お前の存在を受け入れられない刀剣男士がいるかもしれないだろ。」
『っ…! そ、それはっ…』
「ないって言えるか?」
言えない。だって実際、ほとんどの人間からインベーダーという地球外生物を受け入れてもらえなかったから。
『…でも、私…』
「俺は、お前にはもう傷ついてほしくないんだ。」
『…』
ナマエは智之が自分のことを心配してくれていると痛いほど感じた。自分が初めて地球に来た頃。殆どの人間から恐れられていた。今回も、そのようなことがあるのではないかと、思っているのではないか。
『…わかった。』
ナマエは頷いた。
『…ねぇ、智之』
「なんだ」
『ありがとう』
彼は、彼なりに私を守ろうとしてくれているのかもしれない。その気持ちが嬉しくて涙が出そうになった。
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