2. 初期刀
その後、桜の着物を身にまとったナマエがやってきた。勿論頭にある角を隠すために長い髪を頭の上に束ねている。
『これでいい…?』
着物など着慣れないため足元がおぼつくナマエ。
「あぁ、それなら問題ないな。これからはその恰好でいろよ。」
『えぇー!?』
「よくお似合いでございます!補佐官殿!」
『ありがとう、こんちゃん』
「では、さっそく刀を…」
『智之!うちこれがいいっちゃ!』
こんのすけが言い終わらないうちにナマエの手が伸びて真ん中にある刀を掴んだ。
「おい、勝手に決めんな!!俺が審神者なんだから俺が決める!!」
智之は慌ててナマエの刀をもつ手を掴む。
『いやだっちゃーー!!うちが決める!!!』
「いや俺だ!!!」
二人の争いはいつのまにかヒートアップ。ついには、トランプ、オセロ、花札などと取り出し勝者が初期刀を選ぶ権利を得るということに話になった。
一時間後…
「ぜぇ…ぜぇ…」
『はぁ…はぁ…』
二人は力尽きた。
「あの、審神者殿、補佐官殿…」
今まで黙っていたこんのすけがおずおずと声をかける。(智之とナマエが争っている間、二人の殺気が恐ろしかったため何も言えずにいた。)
「31戦中16勝利で俺の勝ちだな…!」
智之はガッツポーズをする。
『…!!!』
ナマエは悔しさのあまり床に手をついて項垂れた。
『勝負は勝負だし…わかった。智之が決めていいよ…』
「じゃあ、この刀だな、えっと、名はーー」
”加州清光”
ぶわあぁぁぁぁ…
智之とナマエが名を呼んだ瞬間、刀が光輝く。そしてーーーー
「あー。川の下の子です。加州清『きたぁぁああああああああああ!!!!』ぐぇっ!!」
清光が言い終わらないうちにナマエが勢いよく飛びついた。
「おい、最後まで言わせてやれよ…」
『やったーー!!初期刀がきたっちゃ!!うれしいっちゃ!!これからよろしくねーー!!』
感激のあまり清光をぎゅうぎゅうだきしめるナマエ。
「ちゃ…?」
聞いたことのないナマエの口調に首をかしげる清光。
「あぁ、それはそいつの口癖だから気にすんな。…おい、お前もそろそろ離れろ。」
そういうとナマエがしぶしぶ離れた。
「俺はこの本丸の審神者、んでこいつが俺の補佐をしてくれてるんだ。こいつはー、まぁ、2番目の主ってことで。」
「へー、主が二人かぁ、ややこしいなぁ。」
清光がうーんと考え込んだ。すると何か思いついたようにあっ!と声を上げた。
「ねぇねぇ、じゃあこれから主のこと姫さんって呼んでいい?」
『えっ、私?』
「うん、お姫様みたいだよね。ね、いいでしょ?」
清光が上目づかいでナマエを見上げる。
『お姫様…う、うれしい』
「ぶっ…」
隣で智之が噴き出しているが、この際気にしないでおこう。と、ナマエは心の中で思った。
『じゃあ、折角だし私が本丸の案内をするね。』
「わーい」
そういって、清光を連れていく。
『清光って確か…沖田総悟の刀だったんだよね。』
「そうそう。よく知ってるねー、姫さん。」
『えへへ、私、この星が好きだから、色んな国の歴史について勉強したんだぁ』
「星…?」
『あぁ、ええと…に、日本の歴史!ね!何か役に立てるかなーって。あはは』
「へー、そうなんだ。」
『そうなの、で、ここが台所…』
「ねぇ」
『なんだっちゃ?』
「その…だっちゃとかいうの口癖なの?」
『あっ…!ふ、普段は言葉遣いに気を付けてるんだけど、気を抜くとでちゃうんだよね…この口癖』
「そうなんだ、嫌なの?」
『い、嫌ってわけじゃないんだけど、その、できるだけ外では直したいっていうか…地球人でこの話方してる人って見かけないし…』
「?」
『な、なんでもない』
「なんか…姫さんって違うよね。」
『えっ…』
「ずーっと、気になってたんだ。姫さんは、主とも、前の主とも何か違う。違う何かを感じる。どうしてだろう?」
『い、嫌……かな?……』
「いや、別に?まぁ、いっか、それよりおなかすいたー。姫さん」
そういってナマエに甘える抱き付いた。
『じゃあ、何か作るね。』
「じゃあ、俺も…」
『ううん、清光は待ってて。今日は私が作るから!ね!清光歓迎パーティーってことで!ね!』
「……ありがとう、姫さん」
そういって照れくさそうに笑った
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ナマエと清光が出て行った後。
「…なぁ、こんのすけ。」
「はい?」
「ナマエはここでやっていけると思うか?」
インベーダーであるナマエの存在は知られたらどう思われるのだろうか。
智之はナマエと一緒に審神者になると決意したときから心配していたことだ。
「そうですね…補佐官殿は…」
そういってこんのすけは智之の膝の上に乗った。
「大丈夫です。補佐官殿ならきっと…」
刀剣男士達と良い関係を築いていけるでしょう。
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「主ー。夕餉の支度が整ったよー」
あれから一時間が経過したごろ、清光が智之と呼びに来た。
「ん?あぁ、悪いな。作ってくれたのか?」
「いや、俺じゃないよ。俺も手伝うって言ったんだけど折角きてくれたから私が作るーって姫さんが…」
「え……」
聞いた途端智之の顔がサァっと青くなった。
「どうかしたの?主」
「あ、あいつは…あいつの手料理は…」
今の一度だって忘れたことはない。ナマエの手料理は破滅的にまずいのだ。いや、彼女の星の住民からすればおいしいと好評らしいが地球の住民にはかなり不評だ。
智之は今まで三度ナマエの手料理で病院に運ばれ一度は生死の境目をさまよった。
だからナマエには料理禁止令を出したはずだが今日はかなり浮かれているせいかそのことを忘れていたのだろう。
「おい、清光…」
「?」
突然智之がガシィと清光の腕を掴んだ。しかも物凄い剣幕で。
「いいか…死にたくなかったら俺の言うとおりにしろ」
「あ、主。いきなり何言って…」
ガラッ
運悪く扉が開きナマエが入ってきた。
「あー!二人ともここにいたの?ご飯ができたから温かいうちに召し上がれ!」
ナマエの手元にある謎の料理はお世辞にもおいしそうといえる色も形もしていない。
「…清光、逃げるぞ」
「あぁ、主…」
言うや否や二人は一目散に部屋を飛び出した。
『えぇっ!!??ふ、二人ともっ!!どこ行くっちゃ!!??』
「お前のいないところだーーーー!!!!」
智之が大声で叫ぶ。
「主ーーー!!ごめん!!!それは、それだけは食べられない!!!!!」
清光も智之に続いて叫んだ。
『ふっ、ふたりともー…待てーーーー!!!!待つっちゃ!!!!!』
ナマエも全速力で二人を追いかける。
屋根の上から見ていたこんのすけはその様子を見て微笑んでいた。
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