3. とある本丸の日常


初期刀の清光が来てから三ヶ月がたった。

あれから短剣、打刀、太刀と刀剣男士がやって来て本丸内も随分賑やかになった。

ナマエは今日も政府から渡された仕事を坦々とこなしていた。と、言っても基本的な仕事は智之のサインがないとできないのだが、それまでの作業、本丸内の管理などがの仕事になっていた。

『ぁー.....ずっと書類の作業をしていると流石につかれるっちゃ.....』

伸びをすると背中がパキッとなった。老化が始まっているのではないか....などと考えながら時計をみる。

『あっ....いけない。そろそろ内番がおわる時間だっちゃ。お茶の用意をしなきゃ....』

そう言ってナマエは仕事部屋を出て厨房へと向かった。

『あ、光忠!』

厨房に入ると燭台切りが夕餉の支度をしていた。

「あぁ、姫さん。内番にお茶だしかい?」

清光が姫さんと呼び始めた時にはじまり、今では本丸内全員がナマエのことを姫さんという愛称で呼ぶようになった。...智之ただ、一人を除いては。彼曰く、お前は姫とか呼ばれる歳じゃないだろ、とのこと。

『うん、皆いつも頑張ってくれてるからね、感謝の意味も込めてお茶だししなきゃね。』

「わざわざありがとうね、あ、はい。これね。」


そう言ってお茶とお菓子をのせたお盆をに差し出した。


『お茶ぐらい自分で入れれるのに...』


「まぁまぁ」

燭台切りが苦笑した、彼は知らない。何故ナマエが料理禁止令を出されたのか。
就任一日目の悲劇を智之と清光はきっと忘れないだろう。
さすがインベーダー、ナマエは二人に気づかれないように地面スレスレを飛んであたかも走っているかのようにカモフラージュしていたのだ。当然、飛行の早さに叶うはずもなく二人はに捕まったわけで.....

その後日、ナマエには一生料理禁止令が出された。もちろん、お茶を出すことも、調理器具に触ることさえ許されなかった。



in 畑

『なきぎつねー! やばんばぎりー!!』

ナマエが二振の名前を呼びながら畑へとやって来た。見てみると、ちょうど畑仕事が一段落したところらしい。

「おぉ、これはこれは姫様、お茶を持ってきてくださったのですか!!!これはありがたい。」

鳴狐の肩に乗っているお供の狐が嬉しそうに返事をする。

「写しの俺なんかに茶など不要だと.....」

山姥切は何かぶつぶつ呟いているようだ。

『はい、二人ともお疲れさま、これ、お茶とお菓子ね。...あ、お供ちゃんには、油揚げね!』

そう言って二人にお茶、お菓子を手渡す。

「なんと、私めの分まで!!!..有り難く頂かせてもらいましょう!鳴狐!」

「........そうだね。ありがとう。」


『どういたしまして!はい、山姥切も!!』

「あぁ......」

山姥切はおずおずとから茶菓子を受け取った。

『さてと、次は馬当番だね。』

「確かおおくりから殿と長谷部殿でしたか。」

『うん、じゃあ、行ってくるね』

そう言うとたたたっと馬小屋へと駆けていった。

「姫様はいつも元気がよいですなぁ。」

「あぁ、初めて会ったときは驚いた。」

「私めと鳴狐が鍛刀されたときは真っ先に飛び付いて来ましたなぁ」

お供は鍛刀されたときのことを思い出したのか、少し懐かしそうにしていた。鳴狐も心なしか口元が緩んでいるようだ。

「俺は首が折れるかと思ったぞ。」

対して山姥切は顔をしかめた。


「おや、山姥切殿は姫様が苦手でございますか?」

「あぁ、苦手だ。」

そう言って鍛刀された頃を思い出していた。

「俺は山姥切『きたぁあああああああ!!!』うぐぅ!!!!!」

は智之が鍛刀するたび刀に抱きついていた。

「おい....俺は、ここで鍛刀し初めて刀剣男士が最後まで台詞を話したとこを聞いたことないぞ。」


智之が呆れたように言った。
しかしは山姥切が布を被っている理由が気になっているようで食い入るように山姥切を見つめている。

そして山姥切は自分が写しであることに不満を感じているように見えたらしい。

「......なんだ。そんなに俺が写しであることが気になるのか。」


『写し.......???』

は訳がわからないと言いたげに首をかしげた。

「あぁ.....」

山姥切は不自然にめを反らした。余りにもまっすぐ見つめてくるの視線に堪えれなくなったのだろう。


『.....よくわかんないけど、うちは山姥切がこの本丸に来てくれてすごく嬉いっちゃ。』


彼女は心のそこから笑った。そこに嘘はないと山姥切本人も感じ取ったのだろう。

「...........お、お前は」



『ん?』


「へんなやつだな。」


『へ????』


写しの俺に向かってそんな言葉をかけてくれるやつがいるなんて思いもしなかった。



「........本当、苦手だ。」


そう言って無意識に頬を緩ませている山姥切を見て鳴狐も笑った。

彼女はどんな刀がきても分け隔てなく平等に接していた。

智之から聞いたことがある。時々、他の本丸ではが刀剣男士を平等に扱わない、または、ただの道具としてしか見ていない、など。

それを聞いたあと、改めて思った。当たり前で、平和なうちの本丸がとてもいとおしく感じるのだ。


「さて、そろそろ本丸に戻るといたしましょう!」

お供がタイミングを見計らったように声をかける。

少し赤みが架かった空。もうそろそろ夕げの時間だろう。


「........そうだな。」

山姥切はいそいそと道具を小屋に仕舞いに言った。いい加減戻らないとが呼びにくるからな。

さぁ、帰ろう。皆の待つ家(本丸)へ



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