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「もう部下もいない。器が知れたな。分を弁えない馬鹿はあんたって事だ」
「ぐっ……ははは。な、なるほど、どうやらその様だ」
「では、おとなしく縛に……」
「こ、これ以上、無様を晒すつもりはない。ユーリ、とか言ったな?おまえは若い頃のドン・ホワイトホースに似ている……そっくりだ」
「オレがあんなじいさんになるってか。ぞっとしない話だな」
「あぁ。貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように。そして世界に食い潰される。悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」
その言葉を最後に、バルボスは素早く動く。その背中にアイナは毅然とした態度で言う。
「そうなったとしても、私はユーリと共に在り続ける。味方で居続ける。孤独にはしないし、ひとりでそれを背負わせるつもりは毛頭ないの。お生憎さま、地獄に落ちても一緒だよ」
覚悟を聞き届けたとでも言わんばかりのバルボスは、そのまま塔から身を投げてしまった。決着は着いた。けれどなんだか、後味が悪い。捕らえて償わせたかったと、ハルカは心底思う。
「ったく、魔核(コア)が無事でよかったぜ」
丁度塔を出たタイミングでユーリが呟く。隣にはアイナとラピードがいつもの並び位置で居て、見ていてなんだか安心した。その掌にある水道魔導器(アクエブラスティア)の魔核は存外小さい。
「さて、魔核も取り戻したし、これで一件落着だね」
「でも、バルボスを捕まえる事が出来ませんでした……」
「えぇ……それだけが悔やまれます」
「何言ってんの。あんな悪人、死んで……ふぎゃ!」
ユーリが軽く腕を振り、リタの言葉を止める。確かに死んで当然と言う人も多く居るだろう。バルボスの取った行動で苦しんだ人が大勢いる。けれどハルカは――きっとアイナも、死んで当然とは思えないのだ。悪行には相応の罰を。しかしそれは、決して「死」では、ない。
「それにまだ一件落着には早いな」
「あぁ、こいつがちゃんと動くかどうか確認しないと」
フレンの言葉にユーリがそう返して、彼は黙り込む。わかっていて話を逸らした風なユーリだが、フレンはフレンでこの事件を本当の意味で一件落着だと言える状況にするために、考えなければならない事が多くあった。何せ相手は帝国の評議員だ。ハルカには、更に他にも黒幕が居そうな気がしてそれ以上考えるのが少し恐ろしかった。
「魔導器(ブラスティア)の魔核はそんなに簡単に壊れないわよ」
「ふ〜ん、そうなんだ。知ってた?レイヴン」
ユーリの持つ魔核を覗き込みながらリタとカロルが言う。しかし、どんなに辺りを見回してもレイヴンの姿は見えなかった。
「また、あのおっさんは……ほんと自分勝手ね」
「それをリタが言うんだ」
「人それぞれでいいんじゃないかしら?」
「ダングレストに帰ったんだろ。会いたきゃ会えるさ」
「僕も一足先に戻る。部下に仕事を押し付けたままだから。エステリーゼ様もどうか私とご一緒に」
「えぇと……私、もう少しみんなと一緒に居てはいけませんか……?」
悲しそうにエステルが俯く。彼女の立場を考えれば当然と言ってしまえば当然だ。別れが近いのもなんとなくわかっている。が、ここまで一緒に旅をして来た身としては、寂しい。
ハルカは意を決してエステルの手を握り、フレンに向き直った。
「エステルはあたし達が責任持ってダングレストに送り届けるよ。だからもう少しだけ、一緒に居させて」
「……わかった。その代わり、絶対に間違いのないように頼む。寄り道も駄目だ、いいね?」
「わかった。フレン、ありがとう」
「ではエステリーゼ様、ダングレストで」
先に立ち去るフレンを見送るでもなく、ユーリは黙ったまま何か考え込んでいる。心配そうにアイナが呼びかけると、彼は苦く笑いながら彼女の頭を撫でた。
「まだデデッキの野郎を、ぶん殴ってねぇと思ってさ」
「魔導器の魔核は戻ったんだからいいんじゃないの?そんなコソ泥なんて」
「ま、それもそうだな。どっかで会ったら絶対にぶん殴るけど……地獄で待ってる、か。嫌な事言うぜ」
「その後でアイナに熱烈な事言われてたんだからいいじゃないか、イケメンロン毛この野郎」
そうだな、とユーリが開き直る。ドヤ顔でこちらを見てくるのは腹が立ったが、頬を赤らめて抗議するアイナが可愛らしかったので、よしとした。アイナが幸せそうだから、それでいい。
けれど、どうしてだろう。ハルカの胸に宿る嫌な予感は、ここに来る前より増していた。
to be continued...
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