CASE4 ロウ


オレのせいだ。オレがやらかしたせいで、親父の命が目の前で消えていく。そいつ――いや、その人が現れたのは、そんな時だった。

「シオン、そのまま諦めないで治癒を続けて」

そう言って突然、気付いたらオレの隣に立っていた。誰なのかも、いつ入って来たかも、何もわからないで全員が動揺してんのに、その人だけは冷静に動いてて。自分の顔に巻いてある包帯を取って、キレイな目がまっすぐ今にも消えそうな親父を見詰める。右と左で色が違う目だった。

さっきからずっと親父の治癒をしてくれてるレナ人みたいに両手をかざしたら、目が光った。でも光ったのは片目だけだ。周りがざわついたのがわかった。

「今はジルファの治療が先決!君!ジルファの息子さんなら、お父さんの手をしっかり握って、声をかけ続けて!早く!!」

言われたまま慌てて目の前にある親父の手を、両手でしっかり握った。親父、親父、しっかりしてくれ。話したい事が山ほどあるんだ。まだ死なないでくれ。オレを置いて逝かないでくれ。思い付くより先に口から言葉が次々出てくる。

そうか、これはオレの本心か。オレの後悔か。それに気付いたら余計、涙が止まらなかった。

両手から誰よりも神々しい光を出しながらその人は静かに語り出して、オレは思わず親父の手を強く握り締めて泣きながら見上げる。

「私の両親は、生まれは全然違うけど境遇が同じだったの。幼い両親は生き延びるためにあらゆるものから隠れて逃げていた。そんな中で偶然出会って、助け合うようになって、結ばれたって聞いているよ。そして、両親はよく理論的に治癒術も星霊術の一種であって、属性は光だと言っていたの。だから闇しか持たないレナ人が治癒術を使えるのは矛盾している、おかしい……その矛盾に何か重大な嘘があるんじゃないかって考察していた」

そしてその矛盾と嘘を解き明かすための旅をしていた、なんて言った。弱いオレの頭がこんがらがる。

両手から溢れる光がどんどん強くなって、部屋中を包み込んだ。眩しくて目を開けられない。恐る恐る目を開ければ、親父は目を閉じていた。けど、さっきまでみたいに土気色じゃなくて、まだ青白いけど顔色はいい。呼吸も安定してるみたいだ。握り締めたままの手にも体温が戻ってきてる。

生きてる。親父が、生きてくれてる。実感したら馬鹿みたいに泣いた。さっきまでより情けなく泣き喚いた。

そんなオレを放っておいてシオンがその人を睨む。いい加減教えたらどうなの、何者なのよ、とか言って詰め寄ってる。

「ダナとレナの間に生まれた娘」

部屋中に居る全員が息を飲んだのがわかった。ダナ人とレナ人のハーフ……そんなのが存在するっていうのが信じられなくて、滅茶苦茶驚いた。

でも、それでもオレにとって生まれがどうであれ、女神だ。そうじゃねぇなら救世主か聖女。感謝してもしきれない、大恩人だ。親父を失わずに済んだ。

この恩にどう報いたらいいのか、頭の悪いオレにはまだわからない。

- 4 -

*前次#


ページ:




ほたるび