拝啓 父上様
お父さんが亡くなって、もう半年になります。
こうして筆を執るのはお父さんの生前にしたかったのですが、いつでも出来るというのと少し気恥ずかしい思いがあった事もあり、現在に至っています。
―――弟、妹は最近特にやんちゃになってきていて、お父さんがいないと家庭内のルールを守らない事が増えてきました。お母さんは相変わらず一人で頑張っています。以前と違うのは、お酒を飲むようになった事くらいでしょうか。
―――私は早く自立してこの家を出て行こうとは思っていますが、なかなか上手くいかないものです。なので今は家事や勉強、部活なんかを頑張って、二、三年後にはきっと就職してみせます。すごく大変かもしれないけれど、今の状況よりはきっと大丈夫でしょう。……多分。
―――何故なら我が家に異国の方というか、時代錯誤した方というか、不思議なお客さんがいらしているからです。お母さんは疲れて寝ているし、じーちゃんばーちゃん、弟妹は普通に受け入れちゃってるし、あの方達に対して戸惑って臆病になっているのは私だけだから。
―――……本当にどうしたらいいのか分からないけれど、今の家族の中であの方達と接せられる残念な知識を持っているのは私しかいません。なので怖いけど頑張らねばならぬのです。出来ればあちらで私達家族を見守ってて下さい。では、お身体に気を付けて。
敬具 貴方の娘