『今すぐシャルルに来い。大事な話がある』
八神、東、杉浦の元に海藤から、とあるメッセージが届いた。的確でわかりやすいそれは急を要すると思われ、三人は急いでシャルルへと向かった。そして、到着した先で三人は海藤に告げられた話に驚愕することになる。
「なまえちゃんに今、『男』の相が出てるらしい」
「『男』の相?なにそれ、八神さん分かる?」
「あ、もしかしてあまねさんの占いか」
「あまね……?おい八神、誰だそりゃあ」
あまねとは神室町にいる占い師だ。知る人ぞ知る実力の持ち主で、八神も過去にその予言が的中するところを何度も目の当たりにしてきた。だからこそ、八神はあまねの名を聞いた時、海藤の話の信憑性が深まったとさえ思ったほどだ。その場にいる三人に八神はあまねとの過去にあった出来事を話した。彼女は必ず予言を言い当てるのだと、それがどんな結末になろうとも。
「八神さんの言うことが本当なら、なまえさんもそうなるってこと?」
「でも、それが良い方に転ぶのを見た試しがないんだよな。大体が悪い方に転んでさ」
「じゃあ、もしかしたらロクでもないやつがなまえさんに近付いてくるかもしれないね」
「そこで俺らの出番だ、杉浦」
ター坊の言うことが合ってるなら、なまえちゃんは今後なにか良くない目に遭う。しかも、好意っつったら知らねえ男が関係してくるだろうな。ああ、ナンパとかだね。てなると、兄貴はみょうじのボディガードになってやろうってことですか。冴えてるな、東。でも、海藤さん明日、依頼人と打ち合わせがあるんだけど。だから、俺らの出番なんだろ?ター坊。
「まあ、僕と東さんもいるし、明後日くらいは大丈夫だよ」
「ったく、世話のかかる奴だぜ」
「とか言っておきながら、本当は心配なんでしょ?」
「うるせぇ。そんで杉浦は明日と明後日、どっちにつくんだよ」
こうして、なまえを降りかかるであろう災いを回避すべく、四人の男は日替わりで彼女と共に行動することになった。なまえも初めは困惑していたが、自分の為に皆が体を張ってくれるのだと分かると、彼女は申し訳なさそうに了承してくれた。まずは東、杉浦、海藤、八神の順で四日間、それぞれが彼女と共に行動することになり、四人は作戦を練っていた。
「変なやつが来ないといいよね。この街、何かと変わってるのが多いし」
「まあ、俺らが傍につくんだ。そう簡単にはなまえちゃんに近付かせねぇよ」
「もし、近付いてこようもんなら……。兄貴、『ここ』で良いですよね?」
「おう、まずはひん剥いて説教だな」
「え、またやんの?それ」
「当たり前だ。理由によっちゃあ、キツいお灸をすえてやらねぇとだしな」
つい最近は変態三銃士という変質者が出没し、世間を賑わせたばかりだ。もしかしたら、彼らのような異質な相手が現れるかもしれない。用心するに越したことはないのだ。何かあってからでは遅い、何かあってからでは。
***
「それって本当ですか……?」
「ええ。私にはあなたの周りに渦巻く好意のようなものが見えます」
「好意って、そんな」
「心当たりはない?」
「あったら、今もひとりじゃないですよ……。あまねさん」
「そうかしら?」
「そう言うのは見えないんですね」
「災いじゃありませんから」
某日某所。なまえとあまねはとある喫茶店で食事をしていた。予め食事の約束を取り付けていた二人は仕事終わりということもあり、早めの夕食にありついていた。どうやら、あまねが言うには男性から好意を寄せられているが、それがあまりにも強大過ぎるが故に『災い』であると確信したそうだ。確かに好意を寄せられているだけならまだしも、強すぎる好意と言うのは時に人を傷付けてしまうものだ。なまえはため息を一つ、そしてまだ暖かいカフェラテを一口飲んだ。
「ちなみにどう言ったことが起きるとか、分かりますか?」
「ごめんなさい。そこまでははっきりと見えないの。ただ気を付けた方がいいと言うことだけ」
「なんだかこわいなあ……。この間、八神さんが変態?三銃士ってのをとっ捕まえてきたって言ってはいたけど、」
「用心はしておいた方がいいです」
「……そうですね。あ、このサラダのドレッシングおいしい」
なまえとあまねは二人で食べるように注文しておいたサラダに手をつけ、互いに美味しいと話しながら、近況報告や最近気になっているものなどのおしゃべりに興じていた。なまえもこの時まではあまり深く捉えていなかったのだ。あまねに告げられた災いのことを。
しかし、翌日になって途端に怖気付いてしまった。あの時はあまねも傍に居たから大丈夫な気持ちでいたが、いざ実際に一人きりになってみるとぼんやりとした不安に襲われ、心細くなる。なんとか事務所には出勤してきたものの、昨日の話が何度も頭の中をぐるぐると回っており、気付けばため息ばかりついていたのだ。そして、後から顔を出した海藤が心配だと声をかけてくれ、打ち明けるような形でなまえも事情を話し、四人のシャルル集合に至る。
だが、一人だけこの状況を冷静に判断している人物がいた。周りが盛り上がっている中でたった一人。過去にあまねの予言通りの結末を見た、八神という男だけが。