光彩の嵐の中で不意に時間が止まる。ステージの上は今夜もディスコクイーンとディスコキングばかり。そのステージの周りで皆が思い思いに音に身を委ね、情熱を燃やすように踊り続けていた。ミラーボールは相変わらず沈むのことない太陽であり続ける。錦山と、一緒にやって来た桐生はまだ一度もステージに立てず、錦山は頻りにステージの方を見ては少しだけ不機嫌そうな顔をする。
「ったく、どいつもこいつもステージにばっかり長居しすぎなんだよ」
「仕方ねぇさ。誰だって、ここに来たらステージに立って踊りたくなっちまうもんなんだろう」
「それは俺らも例外じゃねぇだろうが。あ〜あ、俺の華麗なステップ見せてやりてぇってのによ」
「なんだ、まだ通ってんのか。本当に飽きねぇよなぁ、俺には到底出来そうにねぇ」
「いい女連れて踊る時に困りたくねぇからな。鈍臭い踊りしてるようじゃあ、自分が恥かくだけだ」
フッ、錦のその努力には負けるよ。ったりめぇだろうが、積み重ねなんだよ、積み重ね。と錦は得意そうな顔をしてみせたが、やはり意識は人で溢れるステージへ。桐生はそんな錦山に脇目も振らず、バーカウンターの方へと人混みをすり抜けていく。そして丁度カウンターに肘を置こうとした時だった。
後方から、おい、桐生!ステージ空いてんぞ!と錦山に腕を引かれ、強引にステージ上へと連れ戻された。
「おい、錦。俺は休もうと思ってたんだ。踊るなら一人で踊ってくれ」
「まあ、いいじゃねぇか。それともなんだ?俺に下手くそな踊り見られんのが恥ずかしいのか?」
「……なんだと?」
さあ、どうするよ?と勝ち気な笑みを浮かべる錦山、降り注ぐ光の雨は未だ止みそうにない。そして二人の間に漂う空気を読んだかのように、フロアに二人の十八番である曲が流れ始める。心の切れ端に小さく火がつく、それは桐生も錦山も同時のことだった。瞳の奥に熱を読み取った二人は既に戦闘態勢だ。
「売られた喧嘩は買うぜ。それが例え、ダンスバトルでもな」
「本当にお前は挑発に乗りやすいよな。ま、俺にとっては好都合な訳だけどよ」
「おしゃべりは終わりだ。さぁ、とっとと始めようぜ」
「ああ、俺も早く踊りたくてしょうがねぇんだ」
二人の放つ威圧感に、一触即発の雰囲気に周りのクイーンやキング達は自らステージを降りていく。桐生と錦山を残し、ステージは今夜限りのバトルステージへと変化する。好奇心をかき立てられるバトルの匂いに、DJは再び曲をかけ直し、ステージを降りた者は皆オーディエンスとしてステージを取り囲む。
「行くぜ!桐生!」
「かかって来い!錦!」
吼えるスピーカーはリズムもメロディーも胸を熱くさせ、二人の踊りは自分を鼓舞させるだけでなく、オーディエンスを巻き込んで強烈な盛り上がりを見せる。時折すれ違う視線に火花は散り、互いに宿った火は次第に炎のように大きくなっていく。錦山が得意のステップを踏めば、桐生の大胆な腕や足の振りで迎え撃つ。更にそれに食らいつくかのように錦山は攻めのターンを決め、余裕さを気取る。そして涼し気な流し目、桐生の内なる炎が勢いを増していけばいく程、その力強さも増していく。
負けてられねぇ、と互いが互いの炎を高くさせ、オーディエンスの歓声は二人の体を突き動かす。衝動、魂が叫ぶままにリズムを味方につけ、自身のダンスを唯一無二の武器として二人はド派手な喧嘩を繰り広げていた。夜を踊り明かせ、リズムを手に暴れ続けろ、己のダンスで相手をねじ伏せてやれ。狂乱の渦の中、二人の勝敗は今夜決まる。
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