パリピ講座


「いやぁ、あの時は本当に『この人がサイト作るの……?』って正直不安でしたけど。でもすごいですね、一成さん!」
「あはは、どーもどーも! JKの千夜ちゃんに褒められるとかマジテンアゲだわ!」

軽快な口調で笑うこの男性。彼は三好一成といって、先日綴さんが『連絡してくる』と言ってやってきたデザイナーさんだ。正確には美大生なのだけど。

初めて会ったときは余りのパリピ感に圧倒されてしまったのだが、今日こうして私に見せてくれたサイトとフライヤー、そのどちらもがセンスの良い良質な仕上がりだった。

人は見かけによらない、って言葉を改めて実感したというか何というか。

「てか千夜ちゃんの送ってきてくれた新しい画像ファイル、あれマジ助かった〜! もうサイズ小さすぎて、どう誤魔化そうかってマジ焦ったもん!」
「今はスマホ基準だから、あの250B以下の画像じゃまずいかなって思ったんですよ。お節介じゃなくてよかった」
「お節介どころか、マジ天の助け! てか女神の助け? 千夜ちゃんほんとデキる女だよね〜!」
「あはは……一成さんたら、大げさ」

少し照れ笑いをしてしまった。やはり二軍女子としては、この一軍オーラに圧倒されてしまう。

でも一成さんは、そんな私の様子にちゃんと気づいたのか、優しい顔でニッコリと笑ってくれた。

「なに、緊張してるん?」
「うぐ」
「あはは、図星かぁ。でもほんと、オレ全然年上年下とか気にしないし! なんならカズくんって呼んでくれてもいーよ!」
「か、カズくん!?」

思わぬ提案に、びっくりして名前を復唱してしまった。

「そーそー! いーじゃんいーじゃん、その調子で! オレたち友達だし! あ、まだLIMEは交換してなかったっけ?」
「あ、はい。電話番号だけ……」
「はい、ストップ!」
「!?」

一成さんはちっち、と指を振っていたずらっ子のような表情を浮かべた。

「敬語じゃなく、タメ!」
「え、えええ!? でも一成さ」
「じゃなくてー?」

な、なんだこのコンパのノリ! やけくそになって、

「カズくん!」

と大声で叫ぶ。一成さんはパチパチと拍手を送ってくれた。

「進展進展〜! で、オレが何〜?」
「え、えと。カズくんは、私より年上で……」
「だーかーら、オレ気にしてないって! はい、タメで頑張れー!」
「……ほんとにいいんですね?」
「いーよ!」

ぐっ……。一成さんがこうまで言ってくれたのだ、ノらないと逆に失礼だろう。そう判断して、勇気を出して「わかったよ」と頷いた。彼はとっても嬉しそうに笑って、「ヨロピコ!」と改めてご挨拶をしてくれた。

「やれやれ……あ、そうだ。カズくん、これさっそく印刷してくるね」
「りょ!」
「あとさ……もし良かったらなんだけど。これ、何枚か美大で配ってもらえないかな……? カズくん知り合いいっぱい居そうだし」
「あ、全然オッケー。百枚くらい余裕っしょ」
「頼もしいなぁ」

割と本気で。

でも大学生の綴さんは勿論、私たち花咲学園組も配ろうと思えば学校で沢山配れるだろう。たぶん真澄くん効果で、女子がドバドバやってきそうな予感すらするし。こうして、さっさと根回しはした方がいいよね。

「じゃあカズくん、一緒に印刷室に行こっか」
「オッケー! 何枚くらい刷る?」
「とりあえず、まずは試しに1000部?」
「1000とかマジやばたん! はやく行こ行こ〜!」
「わわ、そっちじゃない!」


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