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「よっ」

驚くのも無理はない。庭でラズベリーを摘んで、家に上がれば大人数がどかどかとリビングに詰めかけていた。そろりそろりとリビングへ潜り、両親の談笑を聞き流しながらキッチンへ。何処かで見覚えのある赤毛だ。ソファーに腰掛けているのは婦人と紳士だけかと思いきや、子供らしき4人も寛ぎ、会話に交じっていた。
そして冒頭に至る。にやける双子、目を見開く男の子、首を傾げる女の子。女の子を除いた3人を私は知っている。双子なんかそりゃもう嫌というくらいに。

「何でいるの」
「こらナマエ、お客様に失礼だろう」
「私は日頃から被害者なのに…」
「まあまあナマエ、こっちへ来てママを手伝って?」

どうやらここに私の味方はいないらしい。摘み立てラズベリーの籠を乱暴にテーブルに置くとママが宥めるように私の頭を撫でた。別に怒っているわけではない。さあそこで調子に乗った双子が私を担いでリビングから庭へ連行してしまったから大変。前にもこんな事があったような気がする。 
 
「なーあ、機嫌直せってナマエ」
「せっかく僕らが遊びに来たんだから」
「別に頼んでないけど、どうして私の家に?」
「いやあ、まさかナマエのパパが魔法使い評議会委員長だったなんて」

全く話が噛み合わない。いや、元々彼らは話の通じる人間ではなかった。今更リアクションをしても仕方ない。そして双子はパパについて詳しく聞いてきた。随分関心を示しているようで、逆に私が驚かされた。

「その『魔法使い評議会委員長』ってそんなに偉いの?」
「ああ、お偉いさんだよなジョージ?」
「魔法省のてっぺんさ」

てっぺん。頂点。魔法省のNo.1が私の、パパ。それはとても名誉な事で、とても誇れる事なのだろうけど、私にはいまいち実感が湧かなかった。でも、私のパパは最近巷で噂の著作家よりも有名で、凄い人なんだと思う。ううん、絶対そうだ。

「フレッド!ジョージ!ナマエを連れ回すなよ!」
「おや、ロニー坊やのお出ましだ」
「ナマエ、君のパパとママが戻っておいでって」
「ありがとう、ロン」 
 
ロンに促されるまま、私は室内へ戻った。リビングへ近付くにつれ、ラズベリーの甘い香りとバターの香ばしい香りが漂ってきた。ママがラズベリーパイを作っているに違いない。

「ただいま」
「ナマエ!グッドタイミングね、ちょうどパイが出来上がったところよ!」
「食べたい!」

ウィーズリー夫妻は相変わらずパパと会話を弾ませている。金のフォークとお皿がテーブルに並び、私は一番大きなパイを乗せてもらった。苦労してラズベリーを摘んだ甲斐があった。努力の賜物ってこういうのも言わないのかな。

「確か、君はナマエだったかな?」
「は、はい」
「息子達が世話になっているね。ああ、私は遠慮しておくよ」

ウィーズリー家の大黒柱、アーサーさんはパイをやんわり断って私の手を握って強く上下に振った。骨が抜けてしまいそうだ。ウィーズリー夫人ことモリーさんは私達を見兼ねて私を掴んでいた手を離すとアーサーさんをがみがみと叱っていた。

「まだこんな幼い子に何をするんですか!少しは弁えなさい!」
「し、しかし」
「しかしも何もありません!ごめんなさいねぇ、痛くなかった?全く、うちのアーサーが失礼な真似を」
「あの……私、お2人にいくつか聞きたい事があるんですけど」
「聞きたい事?」
「ふむ、何だね?私で良ければお答えしよう」
「パパやママと、いつ頃からお知り合いなんですか?」

突発的過ぎただろうか。私もここぞとばかりに口を開いたため、タイミングが合っているのか定かではない。アーサーさんが腕を組み、小さく唸る。もしかするとタブーな話だったりするのだろうか。私はデリカシーもなく聞いてしまった。もっとタイミングを図って質問すれば良かった。

「フィリップとは学生時代からの友人だ。ああ、そう暗い顔をしてはいけないよ。レディーの可愛らしい顔が台無しになってしまう」
「あ、お友達ですか」
「そうだとも」

普通のお友達で良かった。安堵感で今なら溝にも飛び込める気がする。君もフィリップとどことなく似ているね、と笑うアーサーさんの横でソファーの背から恥ずかしそうに姿を覗かせる女の子がいた。私より年下に見えるから、きっとロンの妹だろう。今までロンに妹がいるだなんて聞いた事もなかった。

「ジニー、隠れていないで出ていらっしゃい」 
 
モリーさんの声に女の子は肩をびくっと震わせ、おずおずと出てきた。ロンにも、双子にも、モリーさんにも、アーサーさんにも似ている。赤毛に、ターコイズの瞳、そばかす。どれもこの家族に共通してあるもの。ジニーと呼ばれたその子は私の目の前まで来ると顔を俯かせてしまった。

「私、ナマエ。よろしくね」
「ジニー…あたしは、ジニー。よろしく、ナマエ」

顔を上げた彼女の頬はこれ以上になく真っ赤だった。可愛いなあなんて見蕩れているとジニーは心配そうに私を窺ってくる。何だ、天使か。

20171106
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