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「ジニー?」
「っ…あ、あ…いやっ…!」

ジニーは誰もいない談話室の隅で丸くなっていた。そして、1人で泣いていた。ジニーが拒絶して押し退けるのも構わず、私は彼女を強く抱き締めた。ジニーは悪くない。絶対に私が証明してみせる。

「もう大丈夫、大丈夫だから」
「本当に、あたしっ」
「私はジニーが犯人だと思ってないよ。だから、何か心当たりを教えて」

するとジニーの過呼吸が一瞬止まった。そしてローブの間から何か固い物を私のお腹に押し付けた。少し厚くて、革っぽい。

「これは?」
「あたしの本の中に紛れてて、でも、彼は、彼は悪い人じゃないの…!」
「彼?」

よく見てみると誰かの日記だった。ページを捲ってみると何も書かれていない。唯一、最初のページに名前が記されていた。――T・M・リドル。ジニーの言う彼がこのリドルなら、全ての元凶はこの日記にあるという事になる。

「というわけで」

黒い日記。開いても閉じても特に変化はなく、「彼」が現れる様子もない。ジニーはどうやって「彼」と出会ったのだろう。燃やす?それじゃ元も子もない。水浸しにするのも……何だか良い気がしない。

「ごめん、ジニー」

羽根ペンにインクを浸し、ページを開く。勢い良くペン先を羊皮紙に立てるも、何を書くか考えていなかった。とりあえずAと書いてみた。すると、文字が消えた。正確には吸い込まれていった。擦ってもただの羊皮紙。マジックを見せられたような不思議な気分。恐る恐る「こんばんは」と記すとその文字は消え、やがて10秒後には私とはまるで違う達筆な文字が浮かんできた。

『こんばんは、あなたは誰ですか?』

多分この人が、リドル。ジニーを操った張本人。警戒しながら私は文字を綴った。

『私はナマエ・ミョウジです。あなたは?』
『僕はトム・リドルです。君はこの日記をどこで手に入れたのですか』

言えない、ジニーから受け取っただなんて。きっと彼はジニーを知っているから。私は一つ一つ言葉を選んで紙に走り書きした。

『廊下で拾いました。誰かが落としたんだと思います』

気がつけば彼からの返事を待ち遠しく感じていた。ぐいぐい彼の中へ引き込まれていく。夢中でペンを走らせた。今は何時だろう。そんな事も気にしていられない。

『へえ、目が赤いんだねナマエは』
『コンプレックスなんです。みんなに蛇みたいだと言われて』
『君は話していても魅力的な女の子だ。自分を低く見る必要はないよ』
『でも――』

そこまで書いて手を止めた。私、どうして日記につらつらと告白しているのだろう。リドルの素性を知るという目的だったのに。

『ごめんなさい、何でもないです』
『君は素敵な女の子だ。もっと自信を持って、僕が傍にいるから』

彼は私を知るはずもないのに、彼の言葉は麻薬のように私の心に浸透して全て正しいような錯覚を起こさせる。彼が言うから正しい。この短時間でリドルとの距離が急接近したような気がする。少し自分が怖くなった。

20171106
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